102 / 196
101:えぐ味のある鈍感。
しおりを挟む「あ、ねぇ、二人はいつからなの?」
「……」
胡乱な目で見られました。
普通はそっちを先に聞くものではないでしょうか、とかお小言は聞こえません。
毎日、の方が気になってしまったんだもの。
ザラが気不味そうに話してくれた内容によると、あの事件の後の強制の休みの日でした。
「あら? じゃあテオ様がキューピッドなのかしら?」
「まぁ……そうなります」
「テオ様も存外役に立つのね」
私の中のテオ様の株が低すぎるとか、テオ様のお仕事がなんちゃらかんちゃらとか、ザラが言っていましたが、『ちくわ耳』でスルリと流しておきました。
「で、いつから好きだったの⁉ あ、何でロブに教えなかったのよ⁉」
「っ、好きになりましたのは……領地に戻って三年か四年経った頃です」
初めは、ちょっとやんちゃな少年だと思っていたけれど、成人を迎えてから、どんどんと大人びて行く姿に目が離せなくなりました。と聞いて、それはもうキャーキャー言ってキュンキュンしました。
だけど、ロブに教えなかったのは、ロブが別の女を好きだと知っていたからです。と言われてトキメキがプシュンと消えてしまいました。
「え? でも、さっき…………もしかして、体だけの関係、だったの?」
「いえ、まだ信じられないのですが……私を、愛して、くれていたようです」
ザラが瞳を潤ませながら、とても幸せそうに微笑むので、私も嬉しくなって、ギュッと彼女を抱きしめました。
ザラが幸せそうで本当に良かったです。
でも、ちょっとだけ、モヤッとしています。ロブに。
取り敢えず、今日は部屋で休みなさいとザラに言って、部屋の外で護衛していたロブには、彼女を侍女棟まで送り届けるようにと言いました。
「あ、送り届けたら、一旦こっちに戻って来てちょうだい」
「はい、承知しました」
暫くしてロブが戻ったので、今度はロブをソファに座らせ、私は向かい側の一人掛け用のソファに座りました。
「ロブにも少し聞こうと思ったの。呼び戻してごめんね」
「いえ、大丈夫です。この度は多大なるお気遣いに感謝しております」
リジーの入れてくれた甘い香りのするお茶を飲んで、気持ちを少しだけ落ち着けました。
「他の女性が好きなのに、ザラに手を出したのはなんで?」
「っ⁉ なぜ、それを……」
「無理矢理聞き出したのよ。ザラを責めたら許さないわよ?」
あまりにも驚いた顔をするので、念の為に釘を刺してみましたら、力なく頭をプルプルと振り、絶対にしない、と約束してくれました。
「俺が、不誠実だったのはわかっています。ただ…………それでも、ザラを愛しているのは、事実なんです。信じてもらえてなかったですけど」
「ふーん」
どうやら本当に、相思相愛のようです。
ただ、どうしても気になることがもう一つあります。
「好きな女性は、もう好きじゃなくなったの?」
「っ…………多分、一生、淡い心は残るんだと、思います。憧れや、尊敬として」
――――あ、なるほど。
そういう好きに変わったのね、憧れのアイドル的な感じかしら?
「その女性に気持ちは伝えなかったの?」
「…………相手がいらっしゃる方なので。万に一つも可能性がありませんし、どうこうなりたい、とかでもないので」
「それなら、ズバッと過去形で伝えて、潔く振られて来なさいよ!」
そうしたら、ザラも『もしかしたら、まだ』なんて、心配も疑うこともしなくていいじゃない。万に一つも可能性がないのなら、気持ちの整理に付き合ってもらいなさいよ。
というか、誰よ、その女性って! 地味に気になるのよね、好奇心として!
ちょっと興奮しすぎて、一人でペラペラと話してしまっていました。
ふとロブを見ると、何故か両手で顔を覆って、俯いていました。
どういう感情なのよ?
「……お嬢様、鈍感な上に、エグすぎます」
「ええ?」
壁の花に徹していたリジーがスススッと近寄ってきて、新しいお茶を入れるとともに、何故かカップに砂糖を五個もぶち込んで、また壁に戻って行きました。
「うっ、甘っ。で、誰なのよ?」
「…………勘弁、してください」
「じゃあ、聞かないであげるから、ちゃんと振られて来なさい!」
「ほんと、勘弁してください…………お願いします」
――――えぇぇ?
言って振られたほうが、スッキリすると思うんだけどなぁ……。
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる
しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは
ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、
王弟殿下と出会いました。
なんでわたしがこんな目に……
R18 性的描写あり。※マークつけてます。
38話完結
2/25日で終わる予定になっております。
たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。
この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。
バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
読んでいただきありがとうございます!
番外編5話 掲載開始 2/28
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる