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101:えぐ味のある鈍感。
しおりを挟む「あ、ねぇ、二人はいつからなの?」
「……」
胡乱な目で見られました。
普通はそっちを先に聞くものではないでしょうか、とかお小言は聞こえません。
毎日、の方が気になってしまったんだもの。
ザラが気不味そうに話してくれた内容によると、あの事件の後の強制の休みの日でした。
「あら? じゃあテオ様がキューピッドなのかしら?」
「まぁ……そうなります」
「テオ様も存外役に立つのね」
私の中のテオ様の株が低すぎるとか、テオ様のお仕事がなんちゃらかんちゃらとか、ザラが言っていましたが、『ちくわ耳』でスルリと流しておきました。
「で、いつから好きだったの⁉ あ、何でロブに教えなかったのよ⁉」
「っ、好きになりましたのは……領地に戻って三年か四年経った頃です」
初めは、ちょっとやんちゃな少年だと思っていたけれど、成人を迎えてから、どんどんと大人びて行く姿に目が離せなくなりました。と聞いて、それはもうキャーキャー言ってキュンキュンしました。
だけど、ロブに教えなかったのは、ロブが別の女を好きだと知っていたからです。と言われてトキメキがプシュンと消えてしまいました。
「え? でも、さっき…………もしかして、体だけの関係、だったの?」
「いえ、まだ信じられないのですが……私を、愛して、くれていたようです」
ザラが瞳を潤ませながら、とても幸せそうに微笑むので、私も嬉しくなって、ギュッと彼女を抱きしめました。
ザラが幸せそうで本当に良かったです。
でも、ちょっとだけ、モヤッとしています。ロブに。
取り敢えず、今日は部屋で休みなさいとザラに言って、部屋の外で護衛していたロブには、彼女を侍女棟まで送り届けるようにと言いました。
「あ、送り届けたら、一旦こっちに戻って来てちょうだい」
「はい、承知しました」
暫くしてロブが戻ったので、今度はロブをソファに座らせ、私は向かい側の一人掛け用のソファに座りました。
「ロブにも少し聞こうと思ったの。呼び戻してごめんね」
「いえ、大丈夫です。この度は多大なるお気遣いに感謝しております」
リジーの入れてくれた甘い香りのするお茶を飲んで、気持ちを少しだけ落ち着けました。
「他の女性が好きなのに、ザラに手を出したのはなんで?」
「っ⁉ なぜ、それを……」
「無理矢理聞き出したのよ。ザラを責めたら許さないわよ?」
あまりにも驚いた顔をするので、念の為に釘を刺してみましたら、力なく頭をプルプルと振り、絶対にしない、と約束してくれました。
「俺が、不誠実だったのはわかっています。ただ…………それでも、ザラを愛しているのは、事実なんです。信じてもらえてなかったですけど」
「ふーん」
どうやら本当に、相思相愛のようです。
ただ、どうしても気になることがもう一つあります。
「好きな女性は、もう好きじゃなくなったの?」
「っ…………多分、一生、淡い心は残るんだと、思います。憧れや、尊敬として」
――――あ、なるほど。
そういう好きに変わったのね、憧れのアイドル的な感じかしら?
「その女性に気持ちは伝えなかったの?」
「…………相手がいらっしゃる方なので。万に一つも可能性がありませんし、どうこうなりたい、とかでもないので」
「それなら、ズバッと過去形で伝えて、潔く振られて来なさいよ!」
そうしたら、ザラも『もしかしたら、まだ』なんて、心配も疑うこともしなくていいじゃない。万に一つも可能性がないのなら、気持ちの整理に付き合ってもらいなさいよ。
というか、誰よ、その女性って! 地味に気になるのよね、好奇心として!
ちょっと興奮しすぎて、一人でペラペラと話してしまっていました。
ふとロブを見ると、何故か両手で顔を覆って、俯いていました。
どういう感情なのよ?
「……お嬢様、鈍感な上に、エグすぎます」
「ええ?」
壁の花に徹していたリジーがスススッと近寄ってきて、新しいお茶を入れるとともに、何故かカップに砂糖を五個もぶち込んで、また壁に戻って行きました。
「うっ、甘っ。で、誰なのよ?」
「…………勘弁、してください」
「じゃあ、聞かないであげるから、ちゃんと振られて来なさい!」
「ほんと、勘弁してください…………お願いします」
――――えぇぇ?
言って振られたほうが、スッキリすると思うんだけどなぁ……。
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