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98:日程
しおりを挟む王妃殿下お抱えのデザイナーにドレスの相談を何度か行い、デザインが決まったあと、針子達に採寸してもらったりしました。
一ヶ月と少し経った頃に、ほぼ仮縫いが終わったとの事で、私の部屋で試着してサイズの確認をしながら雑談をしている時でした。
「え? 来月なの⁉」
「ええ。王妃殿下にそうお伺いいたしました」
「えぇぇ⁉」
何故か、婚約の儀の日取りが変更されていました。
王太子殿下のお子様は冬にお生まれになる予定で、私たちの婚約の儀はその後のはずです。
ニヤニヤ顔で私のドレス姿を見ていたテオ様をジロリと睨むと、ブンブンと首を横に振られました。
チラリ、とザラを見ると、何故かフラフラとしていて、とてもきつそうでした。
「ザラ? 体調が悪いの?」
「いえ…………どうか、お気になさらずに……」
と言われても……。
チラリとリジーを見ると、何故かとても良い笑顔でサムズアップをされました。
――――またサムがいるわ。
サムになったリジーは役立たずなので、無視することに決めました。
とにかく! 早急に採寸を終わらせて王妃殿下に確認しなければなりません。
お伺いのお手紙を出すと、直ぐに良いとの事だったので、王妃殿下が指定された小さなサロンへと向かいました。
「んー? 婚約の儀? まぁた古い言い方をするわねぇ。婚約式でいいわよぅ。八月末に予定しているわよ?」
「王太子殿下のお子様が生まれてからだとお伺いしていたのですが」
王妃殿下がクスクスと笑いながら話して下さいました。
どうやら、年末年始は国の行事が忙しいので、そういったものがあまりない八月に急遽行うことにした、とのことでした。
「であれば、そのように急がれずとも、来年に伸ばせば……」
「そうしたら、今度はザラが動けなくなるから、貴女が大変よ?」
――――何故にそこでザラ?
「あら? 貴女、ミラベルちゃんに言ってないの?」
何の話をしているのかと、王妃殿下と私の後ろに控えていたザラの間で視線を彷徨わせていました。
ザラは真っ青な顔で、深々と謝罪をするような姿勢をとっていました。
「え?」
「この子、妊娠しているのよ? ミラベルちゃん、自分の侍女なのだから――――」
自分の周りに置く者の状況や家族・恋人・友人関係はきちんと把握しなさい、と王妃殿下に注意を受けてしまいました。
「それに……貴方達、避妊していないのでしょう?」
「っ⁉」
何故、そんなことまで知られているのでしょうか。
あと、避妊する方法があったのですか⁉
「閨教育で習いませんでしたが……」
「当たり前じゃない! 世継ぎを作る教育でそんなこと教えてくれないわよぉ。それ以外のことも教えてくれる教師なり本なりを探しなさいな」
「はい」
不甲斐なくて俯き加減になっていましたら、背筋を伸ばしなさい、とまたもや注意を受けてしまいました。
「とても酷な事を言うのだけれど――――」
今回の一連の事件で、私の立場はとても弱くなっている。
どんなに王族が私をかばい、テオ様が妃にと望んでいたとしても。
社交を疎かにするような者が王族に名を連ねるのか、という声が挙がっている。
そう、言われました。
「私の耳にでさえも届いてしまうのだから、ミラベルちゃんにはもっと酷い言葉もあったのでしょう?」
「はい……」
「辛いのも、怖いのも解るわ。でも、前を向き、胸を張りなさい。初めは虚勢でもいいの」
「はい」
「ミラベルちゃんに会いたがっている子がいるのよ。全権力を行使してでもミラベルちゃんを助ける! なんて、恐ろしい事を言う子がね。誰か、分かる?」
私を助けてくれる人……。
「……アシュリー様?」
「そうよ。先ずは、アシュリーと、彼女の友人たちとティーパーティーをしなさい」
「はい」
王妃殿下とアシュリー様で手はずを整えてくださるそうです。
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