厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

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閑話:ある男の末路。

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 ――――最悪だ!

 何が最悪かって?
 戦績の報酬で手に入れたアンジェリカに逃げられた事だ。
 一時はうまくいくかと思っていたが――――。



 船団を組んでアンジェリカを追いかけて、あっちの司令船に侵入したら、優男の寝室にいるじゃねぇか。

 ――――また他の男に股開きやがって!
 
 苦労して手に入れたのに、ワガママ糞メスガキは、全く思い通りにならねぇ。
 イライラして、襲って、殴って、解らせようとした。

「ほら、いつもみたいに喘げよ。無理矢理も好きだろう?」
「ひ……ぃゃ……」

 突っ込む直前に、ドアが蹴破られ、灯りが点いて、組み敷いている女がアンジェリカじゃねぇと気付いた。
 体型も髪も全然違うじゃねぇか。
 頭に血が登りすぎて、そんな判断も出来ねぇとはな……。
 


 後ろ手で縛られ、猿ぐつわを付けられ、甲板に連れて行かれた。
 
「ゔぐがぁぁぁ!」
「……みっともない。喚くな。煩い。汚い」

 クソが。
 優男――王子のくせに、ちまちまと爪を剥がしやがって! 

「やれ」
「「はっ!」」

 ヤツの一声で俺の船団への総攻撃が始まった。
 俺を人質にした、抵抗すれば俺を殺す。と宣言して、二隻を沈めやがった。
 司令船は特に粉々だった。
 こりゃあ、部下達は全滅だな。

 ――――これが王族のやることか?

 人のことは言えねぇが、陰湿で泥臭すぎるだろ。



 フォレストリア王国の地下牢に詰め込まれ、両腕を壁に繋がれ、両手を上げて跪く形にされた。
 猿ぐつわはそのままだ。
 そして、糞尿を垂れ流しの状態で数日放置された。

 何か騒がしい声が聞こえると思って目を開けたら、優男がアンジェリカの髪を鷲掴みにして引きずって来てるじゃねぇか。

「フッ、惨めだな?」
「ふぐぅぅぅ!」

 ――――その女を乱暴に扱っていいのは俺だけだぞ!

 優男が、俺の向かい側の牢に入れられていた奴等の中に、アンジェリカを入れてマワさせる、とか言い出した。
 クソが! そんなことをされたら、計画が台無しだ!
 俺がどれだけ苦労してアンジェリカを手に入れたと思ってやがるんだ。


「やめて、やめてよ! わたし、何もしていないじゃない!」
「うがぁぁぁぁ!」

 ――――クソクソクソ!

 もう駄目かと思ったら、優男の兄貴が割って入って来た。

「アンジェリカを部屋に」
「はっ!」

 何かわめき叫んでいたアンジェリカを、騎士が腕を掴んで連れて行った。
 もう少し丁寧に扱え! それは俺の女だぞ!

「やぁ、将軍。久しぶりだね。対応が遅れたせいで、待たせてしまったようだね」

 優男よりさらにのほほんとした王太子が、俺を牢から出した。
 どうやら国から連絡が入ったらしい。

「あぁ、痛そうだね。愚弟には注意をしておこう」
「今回の件については、国より抗議が行くでしょうな」
「あぁ。その為に、エフセイ殿がこちらに向かって来ているよ」

 なんだ、エフセイのやつが、出て来んのか。
 こりゃあ、こっちにいい風が吹いてるな。



「将軍、ちょっとは自制してくれると助かるんだがね?」
「ご息女を助けたい一心でしたのでね」
「ふぅん。その、割には随分と面倒な事になっているが?」

 エフセイは、あの優男兄弟を警戒しているらしい。
 弟は武芸に秀でていると噂は聞いていたが、全て部下にやらせているだけだったし、兄貴はにこにこして下手に出てきた。
 黙らせるのは簡単だろう。



 二国間協議はほぼこっちの思い通りだった。
 協議の準備中に妊娠が発覚したのはラッキーだったな。
 アンジェリカを手放す羽目にはなったが、優男のガキを孕んだ婚約者を手に入れられた。
 乳臭そうなガキだが、まぁ、次への足掛けにはなるだろう。



 協議が終わって客間に戻ると、豪華な料理と酒、俺好みの高級娼婦達がいた。
 腹拵えをし、高級酒を煽り、女達と楽しもうとしたが、何かがおかしい……。
 腹が焼けるように痛い……痒い、痛い、痒い。

「うぐ……ゴハッ」
「きゃあ! どうされましたの? 将軍様?」
「これは……!」
「吐いたものに触ると感染するかもしれないわ!」
「皆、近寄っては駄目! 早く外に出るのよ!」

 女達がキャァキャァと騒ぎながら部屋から出ていった。
 床に倒れ、全てを吐き出し、それに塗れているのに、誰も俺を心配しなかった。

 痛みでのたうち回っている間に、手足はパンパンに腫れ、痺れ、動かすことも出来なくなった。

 これは、病気じゃねぇ。
 毒だろ。
 早くしろ。
 ……医者を呼べ。



 床に倒れ何時間経っただろうか。
 上からも下からもたれ流し、ガタガタと痙攣していると、扉が開き誰かが入って来た。
 やっと、医者が来たかと、思った。

「惨めだな」
「ゴフッ……き……ざ、ま…………」
「何を言っているか、分からんな。あぁ、本当に、惨めで、無様だな。お前も、そう思うだろう?」
「ゴハッ…………を……べ」

 ――――医者を呼べ。

 優男だと思っていた第二王子の、何の感情も映さない目と顔を見て、自分の失態を悟った。
 コレは…………優男なんかじゃない。
 
「あぁ、そうだ。ひとつ、安心できる事を教えてやろう」

 動きの悪い肺に力を入れ、ゼーヒューと息をしていた。
 第二王子が俺の近くにイスを起き、そこに優雅に座った。

、お前だけがかかっているそうだ。良かったな? お前の大好きな女達は皆無事だ」

 ――――何が、やまいだ。

「ゴフッ……ガ……グッ……」
「ん? 何だ? もう話せなくなったのか? つまらないな。まぁ、安心するといい。私が最後まで付き合ってやる。そうそう、アンジェリカだがな、お前が死にそうだというのに、部屋に男をつ――――」

 第二おうじがたのしそうに、なにかを話してる……。
 目をみはるほど、うつくしいかお……かがやかせて、おれのかお、のぞきこんで、る……。
 
「――、――――?」

 なにも、みえない。
 なにも、きこえない。
 いたい、いたい、くるしい。
 いやだ、いやだ、くるしい、くるしい。
 だれか、たすけろ、だれか、たすけて、しにたく、ない――――。


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