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83:どこかが変。
しおりを挟むテオ様に、夫婦の寝室に閉じ込められてしまいました。
特に話すこともなく、私は本を読んだり、刺繍をしたり。
テオ様は書類を持ち込まれ、執務をされているようでした。
食事は毎食部屋で取りました。
廊下にワゴンで用意され、テオ様が部屋に運び込まれます。
飲み物もテオ様が入れてくれます。
そして、二人向き合って黙々と食べるだけ。
「ごちそうさまでした」
「ん」
「……」
とても息苦しいです。
身支度やお風呂はザラの手伝いが許されたものの、テオ様がお風呂場の中にまで入ってきて、終始監視されました。
「落ち着いて入れません」
「……嫌いでいい」
返事になっていないと思うのですが、これ以上何かを言っても、同じ返事しか返ってこないのは、一日で学びました。
夜は同じベッドで、私を後ろ抱きにして寝られます。
時々、私のお腹を擦っては、肩に近い首筋にキスを落として、スヤスヤと眠られます。
少しでも触れられると背中がゾワリとし、息が詰まったように苦しくなります。
心臓が破裂しそうなほどの鼓動を始めますが、テオ様がこれ以上は何もしないと分かってはいるので、次第に落ち着き、私も眠りに付きます。
三日目の朝、目覚めるとテオ様がいませんでした。
申し訳無さそうな顔のザラが運んでくれた朝食を取り、ソファで本を読んでいましたら、テオ様が戻って来られました。
久しぶりに、ニッコリと笑われています。
「ミラベル、アイツが死んだよ」
「っ⁉」
「嬉しく、ないの?」
アイツ……エゾノイ王国の将軍の事でしょう。
本当にあの日の密約が実行されたのだと知り、背中がゾワリとしました。
王侯貴族は、治世において、清濁併せ呑む覚悟が必要なのは解っています。
治世……国を治め、護る為の。
でも、これは違う気がするのです。
「人の死を、笑顔で喜べはしません」
「そう? 私は嬉しいよ? ミラベルを苦しめるものが、この世からひとつ無くなったからね」
「……そう、ですか」
テオ様が嬉しそうに微笑みながら、私の方に左手を伸ばして来られました。
「ミラベル」
「っ……」
先程感じた寒気のようなものが再発し、ビクリと肩を震わせてしまいました。
「――あぁ。そうだったね。私は嫌われているのだったね。浮かれて、忘れていたよ」
私の様子を見たテオ様が、スッと真顔になりました。
伸ばしていた手を引いて、ジッと左手の掌を見つめながら、ボソボソと呟かれました。
「左手にも聖鎧を着けようかなぁ。そうしたら、触れても嫌がられないかなぁ」
「テオ、さま?」
「ん? なあに?」
呼びかけたものの、何を言えばいいのか分かりませんでした。
あの事件の日から、テオ様が変です。
どこかが可笑しいのですが、『ここが変』とハッキリとは言えません。
ただ、妙な違和感があるのです。
それは、私自身も同じ状態でした。
間違いなく、あの日の事が尾を引いているのですが、何をどうしたら解決するのか、何をもって解決とするのか、まったく分かりません。
光芒さえも見えないまま、漫然とした日を過ごしました。
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