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81:『機密事項』
しおりを挟むもともと、修道院に入りたいとお父様に相談しようと思っていました。
それが自国でなくともかまいません。
むしろ、他国の方がテオ様からより離れられるので良い気がしてきました。
「いや……ええっと。もしや、彼女は何も知らないのか?」
「ん? あぁ。ミラベル嬢には教えるなと言っていたんだよ。ハハハ――――グホッ」
私の言葉を聞いたエフセイ王太子殿下が、何故かとても慌てた様子です。
国王陛下は、ハハハと軽やかに笑った直後、隣りに座っていたテオ様から横腹チョップを食らっていました。
国王陛下に普通に手を上げて大丈夫なのでしょうか?
「……笑い事じゃない」
「すまんすまん。それよりも、ミラベル嬢に説明をするのが先だろう?」
「そうですね――――」
ブラッドフォード王太子殿下曰く、今回の事件で我慢の限界が来た、との事でした。
「あの男は強いが、素行も頭も悪い。股間でしかモノを考えていないんだろうね。エフセイ殿下には申し訳ないですが、アンジェリカも同様にね。そして、あのクソババァ……んんっ。大叔母上は更にタチが悪い」
ブラッドフォード王太子殿下の言葉がかなり乱れましたが、持ち直した……と思います。
「なので、取り敢えず、潰そうと思ってね。あ、いや、セオドリックみたいに、国丸ごとなんて思っていないよ?」
にっこりと笑うブラッドフォード王太子殿下は、やっぱり怒らせてはいけないなと感じました。
「まぁ、なんやかんやの密約などでね。ちょっと小芝居を打ったんだけど。全面的にミラベル嬢を貶めるような策しか出せなかったのは…………殆どセオドリックのせいだけどね。まぁ、私も謝っておくよ」
「それのどこが謝っているのですか……」
テオ様が地を這うような声で、怒りを露わにしていますが、ブラッドフォード王太子殿下は笑顔のままでした。
「ん? 私が悪いのかい? 投降勧告前に怒りに任せて二隻も沈めたのは誰だい?」
「…………」
テオ様が悔しそうにグッと黙ったあと、ブラッドフォード王太子殿下が説明を再開してくださいました。
先程の小芝居は、先王陛下の妹君をこちらの国に呼び出すためのものと、アンジェリカ様とあの男を引っ掛けるためのもの、だそうです。
テオ様が、私を保護した直後、怒りに任せてエゾノイ王国の船団に一方的な総攻撃を仕掛けたそうです。
死者も少なからず出たそうで、エゾノイ王国側からの抗議などで、今回に到ったと説明されました。
――――総攻撃⁉
「まぁ、個人的には、こちらの非しかないように思うのだがね。アレでも国の英雄なのだよ…………まったく、恥だね」
エゾノイ王国の大臣たちが『将軍がいるのなら、戦争に勝てる』と言い出したそうで、それを抑えるべくエフセイ王太子殿下自らが、こちらと交渉すべく出向いて来られたとの事でした。
「まさか、義母上の処分にまで協力していただけるとは思わなかったよ」
「こちらとしても願ったり叶ったりだ。無駄に権力ばかり持ちおって……」
「全くですね」
黙ったままのテオ様は置いておいて、お三方の話を不思議に思いつつ聞いていましたら、国王陛下が肘掛けに頬杖をついて、溜め息を吐かれました。
「しかし、機密保持契約に含まれている事に気付かないものかねぇ?」
「陛下は隅々まで読む派でしょうが、あの御方はサラリと署名していたらしいので」
「我が国でも、機密保持契約に含まれていますが……まぁ、あの娘は知らないでしょうね」
たぶん、お話されているのは『王族専用の避難路』と『宝物庫』の事ですわね。
王城で学んでいた頃に、王族には『機密事項』があると教えられたのを覚えています。
「まぁ、そういう訳で、大叔母上は当国で国家反逆罪として幽閉。アンジェリカは何故か荷物から王妃専用の宝石類が出て来て、窃盗罪。エゾノイ王国で一番厳しい修道院に送られる事となるよ」
そんな事を笑顔で話す皆様の恐ろしさに、寒気を覚えました。そして、「それから」と付け加えられた言葉で、更に背中がゾワリとしました。
「あの男は、帰国が目前に迫っているというのに、何故か客室で病死しているのを発見されるみたいだよ。いやぁ、可哀想だねぇ。それにしても、恐ろしいねぇ。感染するような病じゃないといいんだけどね?」
「ぬるい……」
「まぁね。でも、ここが両国の落とし所だ」
「……はい」
ブラッドフォード王太子殿下の鋭い眼差しで、ポツリと文句を漏らしたテオ様が、悔しそうに目を瞑られました。
「さて、そういう事で、ミラベル嬢」
「は、はい」
「君はどうしたい?」
――――わたくし?
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