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64:『え゛』とか言わないで。
しおりを挟むドフリとベッドに押し倒されました。
テオ様は、相変わらず私が嫌いな種類の笑顔のままです。
スカートの中に手を入れ太股を撫でながら、テオ様が覆い被さって来ました。
「テオ様」
「黙って?」
テオ様の顔が徐々に近付き――――。
「セオドリックさまぁぁ」
「「……」」
微かに、シェンオー・ノイモート・マゴームスゥメェ様の声が聞こえました。
「セオドリックさまぁぁ⁉」
何だかシェンオー……言い辛いですわねっ!
先王の妹の孫娘様の声が、段々と近付いて来てます。
「何よ⁉ 私の邪魔をするというの⁉」
「――――、――」
「煩いわよ!」
何か、誰かと、モメているようです。
そして、声がテオ様の部屋から聞こえるような……?
「セオドリックさ……あら? あ! こちらのお部屋ね!」
「えっ⁉」
テオ様に鍵は閉まっているのかと聞こうとしましたら、無情にも扉が開かれてしまいました。
そもそも続き扉なのですから、開いてしまいますわよね。
「きやぁぁぁぁぁ!」
「「……」」
扉に視線を移していたテオ様が、先王の孫娘様が寝室に入って来た瞬間、大きな溜め息を吐いて、とても悲しそうな顔になっていました。
「きやぁぁぁ! セオドリック様が、セオドリック様が襲われているわ! 誰か、誰かー!」
どう頑張って見ても、私が襲われているのですが。
テオ様の手が、スカートをたくし上げ、中で蠢いていたのですが……。
「…………殺す」
「テ、テオさまっ! 騎士様、そ、そうです、騎士様に任せましょう! 私達は続きを……ね? ね! 騎士様、お願いしますね!」
「え゛、あ、は……い」
先王の妹の孫娘様の後ろに、テオ様付きの騎士様が見えましたので、丸投げをしました。
だって、テオ様がダークサイドに落ちそうなんですもの! 何か変なオーラが出ている気がするんですもの!
テオ様は、きっとあの御方とは関わらない方がいい気がします。
だから、騎士様も『え゛』とか言わないで!
「まぁぁぁ! なんて低劣で汚らわしい女なのっ」
「……おい」
テオ様がのそりと起き上がって、剣を掴んでしまいました。
あぁ、もう駄目な気がしてきました。
何故に先王の妹の孫娘様は焚火にゴンゴンと薪と燃料を焚べて下さるのでしょうか。
「あぁ、こんなとこにいた」
急に、落ち着いた男性の声が聞こえて来ました。
ちょこっとだけ、テオ様に似ている声。
続き扉から予想はしていたけれど、予想外の人物、王太子殿下が入って来られました。
「おや、邪魔してすまないねぇ。アンジェリカ、何をしているんだい? 私との約束は? 本国に追い返されないとでも思っているのかな?」
「あ――――」
「あぁ、本当は彼に迎えに来てほしいのかな? ならば呼び寄せてあげよう。きっと、何隻もの戦艦を引き連れて迎えに来てくれるだろうね」
「え――――」
「でも、そんな事になったら、我が軍は戦争と勘違いしてしまうかもしれないねぇ。ねぇ、アンジェリカ。君の国と、この国、どっちが強いだろうねぇ?」
「そ――――」
「私は彼と力比べしてみたいんだけどね。国を挙げて、となると、この国が圧倒的に優位なんだよね。あーあ、君のせいで一国が滅ぶのかぁ。愛って、なんて残酷で、残忍で、甘く、愚かなんだろうね? ねぇ、アンジェリカもそう思わないかい?」
「お、おにぃぃさまっ」
「おや? 私はいつから君の兄になったのかなぁ? まぁ、小さい頃は、そう呼ぶ事を許してあげていたけどね。私も君も……セオドリックも。もう大人だ、いつまでも癇癪を起こして我儘を通せると、思うなよ?」
「「……」」
王太子殿下の激流のような恫喝に、誰も何も言えなくなりました。
先王の妹の孫娘――アンジェリカ様は、なんとか口を挟もうとしていらっしゃいました。
ですが、王太子殿下の方が何枚も上手のようで、全く追随を許さず、笑顔でぶちのめしていらっしゃいました。
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