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63:嫌いな笑顔。
しおりを挟む何が何でも『先王の妹の孫娘』様のお名前を言わないテオ様にイラッとしましたが、『シェンォー・ノイモート・マゴームスゥメェ』で毒気を抜かれました。
「そんなに言いたくないんですか?」
「ん、きらい」
――――あら、かわいい。
違う違う違う!
危うく絆され、流されるところでしたわ。
ちゃんと教えていただかないと。このまま有耶無耶は良くありません。
取り敢えず、ドレスに着替え……ええ、今まで下着姿でしたが、何か?
テオ様の残念そうな顔とか見えませんが、何か?
取り敢えず、ドレスに着替えます!
着替えた後はソファに座り、膝枕で寝転ぶテオ様の頭や頬を撫で撫でして、ご機嫌取りをしていました。
「そろそろ晩餐の時間ですわね」
膝からテオ様を落とそうとしましたら、腰に抱きつかれ、身動きが取れなくなってしまいました。
「ちょっと、テオ様⁉」
「晩餐はこの部屋で、二人だけで」
「今からこの部屋に準備など、迷惑です!」
「嫌だ。行きたくない。嫌な予感しかしない」
時間になっても、イヤイヤとぐずるテオ様を無視して、いつも晩餐をする食堂へと向かいました。
食堂にはいつものメンバー、国王陛下と王妃殿下、王太子殿下と王太子妃殿下だけでした。
エスコートしてくれていたテオ様を見ると、あからさまにホッとされていました。
何事もなく、普通に、晩餐が進んでいきます。
「そういえば、先王の妹の孫娘様はご一緒されないのですか?」
流石に『シェンオー・ノイモート・マゴームスゥメェ様』と言うわけにはいかないので先王の妹の…………あら? 何か妙に静かですわ……。
「「……」」
ふと、気になった事を聞いてしまったのが、運の尽き、とでも言うのでしょうか。
皆様が無言でこちらを見るもので、何となく嫌な予感がしました。
隣の席にいるテオ様のをチラリと見ると、またもやキラッキラの笑顔になってしまいました。
これは非常によろしくないです。
「我らがウィータのコンコルディアに重大な歪みが生じた。我が赤き果実にウォルプタース・アエテルナエを教え込む必要があるので、先に失礼する!」
「え? ええっと……私達の間で意見の相違があ……え?」
皆様に意訳をしている途中で、テオ様に腰を掴まれ、ほぼ強制的に立たされました。
そして、『ウォルプタース・アエテルナエを教え込む』が脳内に到達した瞬間、思考回路がショートしました。
――――か、快楽を、永遠の快楽を教え込む⁉
「まっ、まって、て、ておさま、まって!」
「どうした? 我が赤き果実、淑女は廊下で大声を出すものではないぞ?」
「そっ、れは、そうですが……テオ様、なぜ……」
なぜそんなに怒っていらっしゃいますの? と言いたかったのですが、私に向けられた極上の笑顔が、まるで『黙れ』と言っているかのようで、何も言えなくなってしまいました。
息切れするほどの速さで廊下を突き進みますが、テオ様のエスコートのおかげなのでしょうか、きっと優雅に見えてはいると思います。
曲がり角を急カーブで突き進んだ時など、腰をがっちりホールドされ、足が浮いていました。
「テオ様っ、も、もう少し、ゆっく――――」
「我が赤き果実よ、舌を噛むと痛いぞ?」
「っ……」
また……まだ、笑顔のままです。
段々とテオ様が怖くなって来ました。
何か話したくても、きっとまたあの笑顔をこちらに向けて来ます。
また黙らされてしまいます。
ほぼ強制的に、夫婦の寝室に連れ込まれました。
「テオ様」
「ん?」
「そのお顔…………嫌です」
「……ふうん」
嫌と言っても、テオ様はそのままの目が笑っていない、私の嫌いな笑顔のままでした。
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