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62:大海の向こうにある島国に嫁いだ先王の妹の孫娘。
しおりを挟む対岸の火事よろしく、テオ様とエロティックボディの女性の一向に交わらない会話を眺めていました。
「わたくしぃ、セオドリックさまの妃にと望まれたから、わざわざこの国に参りましたのよ?」
「へ? ……だあっつ!」
予想外の言葉に、手に持っていたカップを膝の上に落としてしまいました。
びっくりしすぎてちょっと野太い声が出てしまいました。
「ミラベル! 大丈夫か⁉」
「あ、はい。ちょっと熱かっただけです。私、お部屋で着替えますわね」
失礼します、とテオ様と謎の女性に挨拶し、その場を離れました。
部屋で着替えていましたら、お茶が思いのほか熱かったらしく、膝から太股にかけて赤くなっていました。
「直ぐに冷やすものをお持ちしますので座られてお待ち下さい」
ザラが足早に部屋から飛び出して行きました。
「ミラベル様、申し訳ございません」
リジーが頭を低くし泣きそうな声で謝ってきました。
スカートを握りしめた手を見ると、微かに震えています。
自分でした事よと言ったのに、リジーは自分の用意したお茶のせいだと言って聞きません。
「もう! お話が通じないのはあの二人だけにしてちょうだい! これは私の手が滑ったせいなの、いい?」
「っ、ふ……ふふっ、はい」
リジーもあの二人の話の通じなさに同感なのか、笑いのツボに入ったようで、くすくすと笑い声を上げてくれました。
ザラの持って来た氷水にタオルを浸し、軽く絞って足を冷やしていましたら、何の前触れも無くドアが開きました。
「テオ様、淑女の部屋へ来る時はノックをして下さいませ」
「…………火傷、したのか」
「ちょっと赤くなっているだけですわ。念の為、冷やしているだけです」
「あの女……本当に…………」
何だかテオ様の後ろに黒いオーラが見えた気がしました。
とりあえず、話をそらしたいのですが、特に何の話題も浮かびません。
気になっている事はあるので、聞いてみることにしました。
「テオ様、あの方はどこの国のどなたなのでしょうか?」
「ん? あいつは……大海の向こうにある島国に嫁いだ先王の妹の孫娘だ」
先王の妹の孫娘……再従妹、という事でしょうか?
「先王の妹の孫娘だ!」
あ、再従妹と認めたくないヤツですね。というか、再従妹と結婚は出来るのでしょうか……確か前世では出来ましたが。
再従妹さんは王族だと言われていましたわね。
「アレの母親が王太子妃だ」
「なるほど?」
それは紛うことなき『王族』で、牢屋にぶち込めはしない方で……あら? 国同士で何か動いているのでしょうか?
最近まで領地に引っ込んで妃教育もきちんと受けていませんでしたので、そこら辺の情報にとても疎くなっていますわね。
「あの方は、国賓ですわよね?」
「いや、違う。断じて違う。絶対に違う」
「因みに、お名前は?」
「先王の妹の孫娘!」
――――そんな無茶な!
「いやいや、えーっと……本名は⁉」
「先お――――」
「これ以上そのネタを言ったらシバき倒しますわよ!」
「っ……シェンオー・ノイモート・マゴームスゥメェ」
――――そこまでして⁉
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