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51:女は度胸。

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 ******
 


 目覚めの一発、眼球へのキラキラご尊顔攻撃。
 寝顔が眩しいほどに美しいとか、どんな特技でしょうか。

 昨夜は遅くまでおしゃべりしていたので、ちょっと遅めに起きてしまいました。
 テオ様は一昨日から徹夜されてありましたので、昨日はちゃんと寝たのでしょう。
 そして、どうやら今日はお寝坊さんのようです。

 そっとテオ様の胸に耳を寄せると、トクントクンと緩やかな鼓動が聞こえて来ました。
 規律正しいその音に段々と目蓋が重くなって来て、自然と眠りに落ちてしまったようです。



 ――――落差が激し過ぎますわ。

 再度目を覚ますと、テオ様が私の胸をまさぐっている最中でした。

「睡姦は犯罪ですわよ?」
「人聞きの悪い事を言うな!」
「では、この行為は何とお呼びすればよろしいのですか?」
「…………愛しき妖精の体が冷たかったのでな。温めていた。あれだ、手当て療法」

 ――――なるほど?

「ひーたひ! ひたひひたひぃ!」 

 テオ様の形の良い鼻が真っ赤になっていらっしゃいました。



 テオ様を部屋から追い出し、着替えと化粧を済ませて部屋から出ると、ロブが廊下にいました。

「ロォブッ、お、おはよう」

 昨日の事を思い出してちょっと恥ずかしくなり、声がひっくり返ってしまいました。

「おはようございます」
「? ……うん」

 何となく、ロブの様子が変です。が! 昨日のことを考えれば、余所余所しくもなるかと納得して、さささっと歩いて食堂へ向かいました。

「我が赤き果実よ、此処へ降り立ち、共に大地の恵みを糧とせん」

(意訳:ミラベル、ここに座って、朝ごはんを一緒に食べよう)

 テオ様が自分の隣の席に座れと言っています。普通は向かい側で食べるのですが?
 そして、何故か使用人全員がニコニコしています。微笑ましいモノを見るような、生ぬっるーい笑顔です。
 これ、断ったらテオ様のご機嫌がドン底になりますよね? 座るべきなのですよね? 嫌な予感しかしていなくとも。

「は……い、失礼いたします」

 ――――近い近い近い!

 十人は座れそうなほど大きなテーブルで肩を寄せ合うほど近くに座られました。
 わざわざイスを動かして。

「赤き果実よ、何が食べたい?」

 朝食はビュッフェ形式になっており、目の前に焼き立てのパンやスコーン、サラダ、スクランブルエッグ、ベーコン、フルーツなどが沢山並んでいます。
 どうやらテオ様が自ら取り分けて下さるようです。

 前世の記憶に引っ張られ、もったいないと思うのですが、余った分は使用人達の朝ごはんに追加されるとの事なので、気にするなと言われました。
 食べ残しを、と申し訳なくなるのですが、やはりそれもこの世界では普通の事なのですよね。
 何年経っても慣れません。

「えぇっと、取り敢えず全部少しずつお願いいたします。お替りは後で考えます。あ、パンは二つで」
「ふふっ、相変わらず良く食べるな」

 ぽそりと小さな声で食欲旺盛さを笑われてしまいました。
 朝ごはんはちゃんと食べないと、日中の行動が辛くなるのですよと言っても、テオ様はクスクスと笑うばかりでした。

「いじけるな。ほら、口を開けて」

 取り分けて下さった私のお皿を何故か自分の前に置いたテオ様が、サラダのミニトマトをフォークに刺して、私の口元に持って来られました。

 ――――こっ、これは!

 あーん、しろという事なのでしょう。
 人目の多いこの場所で、付き合いたてのバカップルのように……あ、一応付き合いたてでしたわ。
 取り敢えず、ミニトマトに罪は無いですし、食べましょう。テオ様の眉毛がへにょんとなってきて、何だか泣きそうですし。

 ――――女は度胸ですわ!


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