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44:目の前に……。
しおりを挟む目が覚めて、目の前に広がるキラキラしいご尊顔。
眼球への暴力が半端ないです。
あと、目がえらく充血されてますが、もしかして寝られてないとか、馬鹿な事……ありませんよねぇ?
「眠っているミラベルの可愛さが一番かと思ったが、目覚めてぽんやりとしているミラベルがエロ可愛すぎるっっ!」
……うっわ、きもちわっるゲフンゲフン。おっと、危うく口から出てしまうところでしたわ。
「なぁ……」
「はい?」
「普通、目覚めて一番に見る、こっ……こ、恋人にっ……」
テオ様が自分で言って、自分で照れて、右手の甲で口元を押さえていました。
「ふぅ。こっ……恋人に向けるのは、蕩けるような笑顔じゃ無いのか?」
「……」
ちょいちょい現れるニワトリの鳴き声が気になって、テオ様の言葉が脳内に届くまで少し時間を要してしまいました。
目覚めの一発で、鼻息荒めで目を血走らせた美丈夫に微笑み掛けるのはちょっとハードルが高い気がしますが、普通どうなのでしょうね?
まぁ、私はちょぉっと無理かなぁ、と思いますが。
「侍女を呼んで朝の支度をしますので、テオ様は自室に戻られて下さい」
ぶすぅ、っと唇を尖らせてブチブチいいながら、テオ様が普通に部屋の扉から廊下に出て行きました。
――――えぇぇっ⁉
もしかして、昨日の夜そこから入って来られたのですか? 同衾していた事がモロバレではありませんかっ!
そして、扉の向こうにニヤニヤしたリジーと真顔のザラが見えました。最悪です。完全にモロバレです。
ザラにヘアセットをしてもらいつつ、今日の予定を話しました。というか、一方的に告げられました。
「ピクニック?」
「はい」
「……テオ様と、二人きりで、馬車で?」
嫌な予感しかしませんが、どうにかお断りできないのでしょうか?
「二人きりではございません。私共と護衛もいますから」
「同じ馬車の中に、ザラとリジーもいるのね?」
鏡越しにザラを見ましたら、サッと視線を逸らされてしまいました。どうやら、二人は別の馬車で移動のようです。
ピクニックで馬車二台も動かすとは。何たる無駄遣いでしょうか。
「我が赤き果実よ、決戦の準備は整ったか?」
――――決戦て。
「そこはピクニックでも良くないですか?」
「初デデデデートなのだぞ⁉」
「デートだったんですか」
「初だ!」
「……確かに、初デートですわね」
あら、何だか楽しみになってきましたわ。
そういえば、あの頃は王城から外には出た事がありませんでしたわね。
初デートでピクニック。
何でしょう、凄くウブな感じがして胸がくすぐったいです。
「早く行きましょう!」
「お、おお!」
テオ様の腕を取って、ルンルンと馬場に向かいました。
ルンルンしていたお馬鹿さんは何処の何方でしょうね。
何故、忘れていたのでしょうね。
ロブの存在を。
「おい、何故お前が同乗している」
「お嬢の護衛ですので」
「退任したと聞いたが?」
「お嬢の外出時の護衛がまだ決まっていませんでしたので」
「「……」」
テオ様と馬車に乗り込みましたら、ロブがするりと乗って来ました。
テオ様の横に私、その向かい側にロブが座りました。
「二人きりで乗ると伝えたはずだか?」
「お伺いしておりません」
「「……」」
物凄く、空気が重い! そんな気分です。
テオ様の厨二病語が剥がれ落ちてしまっていますが、大丈夫なのでしょうか。
「……我ら、二人の想いが重なり、絆を深め、完全体と成るべくしてこの決戦に挑んでいる。如何なる者も、我らを引き裂く事は許されぬ」
――――あ、持ち直しましたわ。
(超意訳:私達は付き合い始めた。折角の初デートを誰にも邪魔されたくない)
意訳をロブに伝えましたら、心配そうな顔をされてしまいました。
「お嬢もそう思っているんですか?」
「え……えっと」
「お嬢?」
「その…………うん」
「はぁぁぁぁ」
何故か物凄く重ぉぉぉくて、長ぁぁぁい溜め息を吐かれてしまいました。
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