厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

文字の大きさ
上 下
28 / 196

28:いい運動をした。

しおりを挟む



 息も切れ切れに私室に到着しましたが、ずっと真後ろに一切息が乱れていないセオドリック殿下がいました。
 体力の違いをまざまざと見せ付けられてモヤッとします。

「ミラベル」
「わっ、たくし、部屋で……きゅ、休養を、とり……ますので」
「お、おぉ。冷たい飲み物を用意させる。ほら、気を付けて歩け」

 何故か標準語のセオドリック殿下に腰を支えられ、ソファに座らされました。悔しいですが、有り難かったです。

「ミラベル」
「……」
「なぁ、我が赤き果実よ、もしかして、赤き果実は我の事が好――――」
「嫌いです!」
「…………ん、そうか」

 私はセオドリック殿下の事が大嫌いなんです、と何度も言うのに、ニヤニヤとして全く意に介して下さいません。

「婚約の儀はいつにする?」
「嫌いだと申しました」
「そう頑なになるな。話を聞け」
「話を聞いていないのは殿下です」

 殿下がブツブツと何かを呟きながら懐から小さな手帳を取り出して、中の予定表らしきページを見られていました。

「あと三日で予定の所まで執務が終わる。それが終われば一ヶ月の休みを取っていいと、兄上が言って下さった」
「…………へぇ」
「今日中に終わらせてくる。夜、起きて待っていろよ」
「は⁉」

 目鼻立ちの整った美しいお顔を、これでもかというほどキラッキラに輝かせて、私の頬にキスをすると、走って消えて行かれました。

「…………はぁ⁉」



 昼食は王妃殿下と二人で取りました。

「いつもの一人で寂しかったのよ。ミラベルちゃんと食べられて嬉しいわぁ」
「王太子妃殿下とはご一緒されていないのですか?」
「あの子、今は悪阻が酷くてねぇ。あ、まだみんなには内緒よ?」

 そういえば昨日の晩餐でもあまり食べられていなかったような気が……?
 あまりの美味しさに料理にばかり熱中してしまっていた事を反省しました。
 おめでとうございます、と共に、口外しないと約束しました。

「匂いに敏感になったり、好きなもの、食べれるものが変わってとてもきついと聞いております」
「そうなのよー。セオドリックの時は特にきつかったわ。何食べても……あら、食事中にごめんなさいね」

 私は食事中でもわりと汚い話は平気なのでそう伝えると、どうやら王妃殿下も同じく平気なようでした。反対に陛下や王太子殿下の方が駄目なのだそうです。

「マリーちゃんはそこまで酷くは無いようだけど、匂いがどうしても駄目だそうよ」

 王妃殿下が、それにしても男は軟弱ね、とコロコロと笑われていて、確かに! とついつい釣られて私も笑ってしまいました。



 晩餐の時にマリー王太子妃殿下におめでとうございます、と伝えると、とても神々しい笑顔で嬉しそうにお礼を言われました。
 美しい方だなぁと見つめていると、何故か王太子殿下が私の頭を撫でて来られました。

「あの馬鹿が妙に張り切っている。夜はしっかり施錠してから寝なさい」
「……はい」

 そして、何故かお二方から頑張れと言われてしまいました。
 やはり晩餐の席にはセオドリック殿下が現れなかったので、本当に明日から休みを取るために何かしらやられているのでしょう。

「ミラベル様⁉ それは流石に……」
「だって鍵開けてくるのよ?」
「で、ですが……あっ、引きずられると……あぁっ、もう、手伝いますから」
「ありがとう!」
「ザラもこちらを手伝って下さい!」
「……はぁ」

 渋々なリジーと嫌々なザラを巻き添えにひと汗かいて、湯船に浸かりました。

「はぁー! 今日は久しぶりにいい運動したわぁ」
「怒られませんかねぇ?」
「怒られたらその時よ」
「私を巻き込まないでくださいね? まだ侍女仲間と信頼関係を築いている途中なんですから」
「はぁい」

 ザラに怒られつつ髪を乾かしてもらい、ナイトティーをしっかりと堪能して、ベッドに潜り込み、一瞬で安らかな眠りにつきました。


しおりを挟む
script?guid=on
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

異世界は獣人の国!?番に求められて逆ハー状態!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界に入ってしまった主人公『ルア』。本名は『弓波紫月(ゆみなみしづき)』。男は獣人、女は人間の世界に入り込んだ彼女は前の世界のしがらみから解き放たれ、自由に暮らすことを決めた。日々暮らしていけるだけのお金を稼ぎ、やりたいことをする生活を過ごすうちに、あるきっかけで国の揉め事に巻き込まれていく。そこで獣人たちが『番』を求める理由を知って・・・・ 「俺の番になって欲しい。」 そんな言葉をあちこちから言われて困るルア。ただ一人しか選ぶことができない番を、ルアは誰を選ぶのか。 ※お話は全て想像の世界です。現実とは何の関係もありません。(できれば異世界に行ってみたいです。) ※誤字脱字があると思います。なるだけ無いようにチェックはしてるつもりですが思い込みでスルーしてしまってる部分があると思います。(よければスルーしてください。) ※メンタルが薄い薄い氷でできてるため、ほんの少しの衝撃(暴言)で粉々になりますのでコメントはオフにしてあります。すみません。 ※コンテスト用に書き始めてるので貯文字が全くありません。完結までは持っていけると思いますが、いつものように毎日公開は難しいかもしれません。すみません。 いつも読んでくださってる方々、本当にありがとうございます。 それではレッツゴー。

責任を取らなくていいので溺愛しないでください

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。 だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。 ※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。 ※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

処理中です...