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28:いい運動をした。
しおりを挟む息も切れ切れに私室に到着しましたが、ずっと真後ろに一切息が乱れていないセオドリック殿下がいました。
体力の違いをまざまざと見せ付けられてモヤッとします。
「ミラベル」
「わっ、たくし、部屋で……きゅ、休養を、とり……ますので」
「お、おぉ。冷たい飲み物を用意させる。ほら、気を付けて歩け」
何故か標準語のセオドリック殿下に腰を支えられ、ソファに座らされました。悔しいですが、有り難かったです。
「ミラベル」
「……」
「なぁ、我が赤き果実よ、もしかして、赤き果実は我の事が好――――」
「嫌いです!」
「…………ん、そうか」
私はセオドリック殿下の事が大嫌いなんです、と何度も言うのに、ニヤニヤとして全く意に介して下さいません。
「婚約の儀はいつにする?」
「嫌いだと申しました」
「そう頑なになるな。話を聞け」
「話を聞いていないのは殿下です」
殿下がブツブツと何かを呟きながら懐から小さな手帳を取り出して、中の予定表らしきページを見られていました。
「あと三日で予定の所まで執務が終わる。それが終われば一ヶ月の休みを取っていいと、兄上が言って下さった」
「…………へぇ」
「今日中に終わらせてくる。夜、起きて待っていろよ」
「は⁉」
目鼻立ちの整った美しいお顔を、これでもかというほどキラッキラに輝かせて、私の頬にキスをすると、走って消えて行かれました。
「…………はぁ⁉」
昼食は王妃殿下と二人で取りました。
「いつもの一人で寂しかったのよ。ミラベルちゃんと食べられて嬉しいわぁ」
「王太子妃殿下とはご一緒されていないのですか?」
「あの子、今は悪阻が酷くてねぇ。あ、まだみんなには内緒よ?」
そういえば昨日の晩餐でもあまり食べられていなかったような気が……?
あまりの美味しさに料理にばかり熱中してしまっていた事を反省しました。
おめでとうございます、と共に、口外しないと約束しました。
「匂いに敏感になったり、好きなもの、食べれるものが変わってとてもきついと聞いております」
「そうなのよー。セオドリックの時は特にきつかったわ。何食べても……あら、食事中にごめんなさいね」
私は食事中でもわりと汚い話は平気なのでそう伝えると、どうやら王妃殿下も同じく平気なようでした。反対に陛下や王太子殿下の方が駄目なのだそうです。
「マリーちゃんはそこまで酷くは無いようだけど、匂いがどうしても駄目だそうよ」
王妃殿下が、それにしても男は軟弱ね、とコロコロと笑われていて、確かに! とついつい釣られて私も笑ってしまいました。
晩餐の時にマリー王太子妃殿下におめでとうございます、と伝えると、とても神々しい笑顔で嬉しそうにお礼を言われました。
美しい方だなぁと見つめていると、何故か王太子殿下が私の頭を撫でて来られました。
「あの馬鹿が妙に張り切っている。夜はしっかり施錠してから寝なさい」
「……はい」
そして、何故かお二方から頑張れと言われてしまいました。
やはり晩餐の席にはセオドリック殿下が現れなかったので、本当に明日から休みを取るために何かしらやられているのでしょう。
「ミラベル様⁉ それは流石に……」
「だって鍵開けてくるのよ?」
「で、ですが……あっ、引きずられると……あぁっ、もう、手伝いますから」
「ありがとう!」
「ザラもこちらを手伝って下さい!」
「……はぁ」
渋々なリジーと嫌々なザラを巻き添えにひと汗かいて、湯船に浸かりました。
「はぁー! 今日は久しぶりにいい運動したわぁ」
「怒られませんかねぇ?」
「怒られたらその時よ」
「私を巻き込まないでくださいね? まだ侍女仲間と信頼関係を築いている途中なんですから」
「はぁい」
ザラに怒られつつ髪を乾かしてもらい、ナイトティーをしっかりと堪能して、ベッドに潜り込み、一瞬で安らかな眠りにつきました。
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