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24:ミラベルの私室。

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「ミラベル様、こちらのお部屋です」

 残念な表情のままのリジーが殿下の部屋の二つ隣の扉を開けてくれました。
 ここが私の私室になるそうです。

「まぁ! 思っていたより……」

 とてもシンプルにまとめてある可愛らしい雰囲気のお部屋でした。
 カーテンは白から黄緑へとグラデーションに染めてあるもので、とても爽やかな印象です。
 家具は木の色を活かしたナチュラルカラーの猫脚家具で統一されており、私の好みど真ん中でした。

「ぜひ、殿下にそれを伝えて下さいませ」
「……考えとくわ」
「はい!」

 リジーが満面の笑みで返事をしたのを眩しく思いつつ、とてつもなく気になっていたことを聞いてみました。

「で、そっちの扉はバスルームやトイレよね?」
「はい!」
「で……そっちは?」

 殿下の隣の部屋だと聞いていたのに、二つ隣だったうえに、殿下の部屋がある側の壁に内扉がありました。
 これは明らかに…………。

「夫婦の寝室ですわ」

 ――――ですわよね!

 はぁ、嫌な予感とは当たるものですわね。まぁ、これは明らかに分かりやすかったですが。

 取り敢えず、扉には鍵を掛けました。

「それから、『本日の晩餐は皆で一緒に』との伝言が王妃殿下より届いております」
「わかったわ。装いは? イブニングドレスは持ってきていなかったけれど……」
「ザラがアップルビー家のタウンハウスに取りに行っております」

 ――――なるほど?
 
 まぁ、お母様あたりの何かしらね。ということで諦めましょう。イブニングドレスが届くのね。良かったわ、えぇえぇ、良かった良かった。ザラもこちらにいてくれるみたいだし? 良かった良かった。

 だいぶイライラしつつ自分を慰めながら室内を確認したりして時間を潰しました。



 晩餐の二時間ほど前にザラとリジーにドレスを着せてもらい、髪を整え、お化粧し、準備万端です。
 殿下は少し遅れるとの事で先に王族専用のダイニングに向かいました。

「ミラベルちゃん! 昨日はごめんなさいねぇ」

 入った瞬間に王妃殿下が駆け寄って来られて、謝られました。

「いえ、真犯人はセオドリック殿下だと解っています……が、あのような場では二度とやめていただきたいです」
「ええ、陛下にも怒られてしまいましたわ」

 王妃殿下が思いのほかシュンとしていらっしゃったので、少しだけ溜飲が下がりました。

「アナスタシア、席に着きなさい。ミラベル、私からも謝ろう。すまなかったね」
「陛下……」

 公式でなくとも陛下が謝ることは望ましくないとされているはずなのに……。有り難いと共に、怒りに任せて会場を逃げ出して申し訳無かったなと、反省しました。
 ……ですが、殿下への怒りはまだまだ収まりそうにありません。

「三人とも、給仕達が困ってるから。席について夕食にしよう」
「うふふ、ごきげんよう、ミラベル様。晩餐にいたしましょう?」

 いつの間にか現れたブラッドフォード王太子殿下とマリー王太子妃殿下に席に着くように促されました。
 セオドリック殿下はまだ執務をしているらしく、そのうち来るか、来なければ執務室で食べるだろうと言われました。
 王族用の食事は全てが上品かつ繊細な作りで、私が開発していた『B級グルメ』はもちろん、普段食べているものとも全く違いました。

「んっ、こちらのポワレ、外はカリッと芳ばしいのに、中はふわふわでとても美味しいですね」
「まぁ! ミラベルちゃんが気に入ってくれて嬉しいわ」

 皆様と歓談しつつ楽しく食事しました。
 結局、セオドリック殿下は晩餐の席には現れませんでした。

 ――――セオドリック殿下は、ちゃんとご飯を食べているのでしょうか?


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