24 / 196
24:ミラベルの私室。
しおりを挟む「ミラベル様、こちらのお部屋です」
残念な表情のままのリジーが殿下の部屋の二つ隣の扉を開けてくれました。
ここが私の私室になるそうです。
「まぁ! 思っていたより……」
とてもシンプルにまとめてある可愛らしい雰囲気のお部屋でした。
カーテンは白から黄緑へとグラデーションに染めてあるもので、とても爽やかな印象です。
家具は木の色を活かしたナチュラルカラーの猫脚家具で統一されており、私の好みど真ん中でした。
「ぜひ、殿下にそれを伝えて下さいませ」
「……考えとくわ」
「はい!」
リジーが満面の笑みで返事をしたのを眩しく思いつつ、とてつもなく気になっていたことを聞いてみました。
「で、そっちの扉はバスルームやトイレよね?」
「はい!」
「で……そっちは?」
殿下の隣の部屋だと聞いていたのに、二つ隣だったうえに、殿下の部屋がある側の壁に内扉がありました。
これは明らかに…………。
「夫婦の寝室ですわ」
――――ですわよね!
はぁ、嫌な予感とは当たるものですわね。まぁ、これは明らかに分かりやすかったですが。
取り敢えず、扉には鍵を掛けました。
「それから、『本日の晩餐は皆で一緒に』との伝言が王妃殿下より届いております」
「わかったわ。装いは? イブニングドレスは持ってきていなかったけれど……」
「ザラがアップルビー家のタウンハウスに取りに行っております」
――――なるほど?
まぁ、お母様あたりの何かしらね。ということで諦めましょう。イブニングドレスが届くのね。良かったわ、えぇえぇ、良かった良かった。ザラもこちらにいてくれるみたいだし? 良かった良かった。
だいぶイライラしつつ自分を慰めながら室内を確認したりして時間を潰しました。
晩餐の二時間ほど前にザラとリジーにドレスを着せてもらい、髪を整え、お化粧し、準備万端です。
殿下は少し遅れるとの事で先に王族専用のダイニングに向かいました。
「ミラベルちゃん! 昨日はごめんなさいねぇ」
入った瞬間に王妃殿下が駆け寄って来られて、謝られました。
「いえ、真犯人はセオドリック殿下だと解っています……が、あのような場では二度とやめていただきたいです」
「ええ、陛下にも怒られてしまいましたわ」
王妃殿下が思いのほかシュンとしていらっしゃったので、少しだけ溜飲が下がりました。
「アナスタシア、席に着きなさい。ミラベル、私からも謝ろう。すまなかったね」
「陛下……」
公式でなくとも陛下が謝ることは望ましくないとされているはずなのに……。有り難いと共に、怒りに任せて会場を逃げ出して申し訳無かったなと、反省しました。
……ですが、殿下への怒りはまだまだ収まりそうにありません。
「三人とも、給仕達が困ってるから。席について夕食にしよう」
「うふふ、ごきげんよう、ミラベル様。晩餐にいたしましょう?」
いつの間にか現れたブラッドフォード王太子殿下とマリー王太子妃殿下に席に着くように促されました。
セオドリック殿下はまだ執務をしているらしく、そのうち来るか、来なければ執務室で食べるだろうと言われました。
王族用の食事は全てが上品かつ繊細な作りで、私が開発していた『B級グルメ』はもちろん、普段食べているものとも全く違いました。
「んっ、こちらのポワレ、外はカリッと芳ばしいのに、中はふわふわでとても美味しいですね」
「まぁ! ミラベルちゃんが気に入ってくれて嬉しいわ」
皆様と歓談しつつ楽しく食事しました。
結局、セオドリック殿下は晩餐の席には現れませんでした。
――――セオドリック殿下は、ちゃんとご飯を食べているのでしょうか?
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました
indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。
逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。
一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。
しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!?
そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……?
元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に!
もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕!
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
異世界転移したら、推しのガチムチ騎士団長様の性癖が止まりません
冬見 六花
恋愛
旧題:ロングヘア=美人の世界にショートカットの私が転移したら推しのガチムチ騎士団長様の性癖が開花した件
異世界転移したアユミが行き着いた世界は、ロングヘアが美人とされている世界だった。
ショートカットのために醜女&珍獣扱いされたアユミを助けてくれたのはガチムチの騎士団長のウィルフレッド。
「…え、ちょっと待って。騎士団長めちゃくちゃドタイプなんですけど!」
でもこの世界ではとんでもないほどのブスの私を好きになってくれるわけない…。
それならイケメン騎士団長様の推し活に専念しますか!
―――――【筋肉フェチの推し活充女アユミ × アユミが現れて突如として自分の性癖が目覚めてしまったガチムチ騎士団長様】
そんな2人の山なし谷なしイチャイチャエッチラブコメ。
●ムーンライトノベルズで掲載していたものをより糖度高めに改稿してます。
●11/6本編完結しました。番外編はゆっくり投稿します。
●11/12番外編もすべて完結しました!
●ノーチェブックス様より書籍化します!
【R18】貧乏令嬢は金色の夢を見る (改:金の波 子ヤギの夢)
るりあん
恋愛
密かに執事に思いを寄せつつも、資金繰りのためにとある貴族と政略的な婚約をこぎつけた…までは良かったのに、挙式当日にいきなり婚約破棄になった貧乏伯爵家の令嬢カペラ(18)。領民の明るい未来のため、ほんとうは、資金を援助してくれる貴族と婚約→子作り→正式な結婚までこぎつけたいのだけど、いろんな障害のおかげでカペラの夢はなかなか叶えられそうもない。まったくその気のない相手と抑えられない執事への恋心の間で揺れ動く、彼女の結婚と恋の行方は?
小説家になろうにて発表していた「金の波 子ヤギの夢」に加筆・修正した改稿版。ライト文芸ぽく綴ります
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
【完結】R-18乙女ゲームの主人公に転生しましたが、のし上がるつもりはありません。
柊木ほしな
恋愛
『Maid・Rise・Love』
略して『MRL』
それは、ヒロインであるメイドが自身の体を武器にのし上がっていく、サクセスストーリー……ではなく、18禁乙女ゲームである。
かつて大好きだった『MRL』の世界へ転生してしまった愛梨。
薄々勘づいていたけれど、あのゲームの展開は真っ平ごめんなんですが!
普通のメイドとして働いてきたのに、何故かゲーム通りに王子の専属メイドに抜擢される始末。
このままじゃ、ゲーム通りのみだらな生活が始まってしまう……?
この先はまさか、成り上がる未来……?
「ちょっと待って!私は成り上がるつもりないから!」
ゲーム通り、専属メイド就任早々に王子に手を出されかけたルーナ。
処女喪失の危機を救ってくれたのは、前世で一番好きだった王子の侍従長、マクシミリアンだった。
「え、何この展開。まったくゲームと違ってきているんですけど!?」
果たして愛梨……もとい今はルーナの彼女に、平凡なメイド生活は訪れるのか……。
転生メイド×真面目な侍従長のラブコメディ。
※性行為がある話にはサブタイトルに*を付けております。未遂は予告無く入ります。
※基本は純愛です。
※この作品はムーンライトノベルズ様にも掲載しております。
※以前投稿していたものに、大幅加筆修正しております。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる