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テストが終わり図書室へ行く用事は無いけど暇だけはあるし、本でも読もうかと図書室へ行った。

そしたらいつもの席に座る黄昏さんがいた。

名前も知らないし私が勝手に心の中で黄昏さんって呼んでいるだけだけど。黄昏さんは今日も外を見ている。


「あの、この前教えてもらった所、テストで出ました。ありがとうございました」

「ああ」

「図書室には毎日来ているんですか?」

「ああ、暇だしな」

「分かります、私も暇だけはあります」

「俺もだ」

「それでくよくよは終わりました?」

「くよくよ、そうだな、それは終わったんだが…」

「今度は違う悩みですか?」

「悩みというか…」

「どうせお互い暇ですしその悩みを言ってみてはどうです?私で分かる事なら答えられますし」

「なら、女性はどうして好きだの可愛いだの言われたがる」

「好きは相手が自分を好きか分からないからですかね。好きなのが分かれば気にならないと思いますがそれでもたまには聞きたいかもしれませんね。

あと可愛いは容姿じゃなくても服が可愛い、髪型が可愛いって言われると嬉しいじゃないですか。男性だって格好いいと言われて嫌な気分にはなりませんよね?」

「確かに」

「それと一緒です」

「そうか。だからいつも言っているんだな」

「元婚約者さんですか?」

「元婚約者の事を男が教室でいつも言っているんだ。好きだ、可愛いって」

「同じ教室ですか、それは何というか…お気の毒さまです」

「お前は?」

「私は違う教室なので」

「それは良いな。今日なんか髪型が可愛いと言っていた。毎日同じ髪型だと俺は思っていたんだが違ったらしい」

「髪留め、リボンの色、結い方、毎日変える令嬢は多いですよ?」

「そうなのか?」

「私は気分で変えますがだいたい同じ髪型です。それでも元婚約者さんは婚約中いつも可愛い姿を貴方に見せ気付いてほしかったのかもしれませんね。そして貴方が気付けば自分に興味があると思えるし、反対に気付かなければ興味がないと思っていたのかもしれませんね」

「女性は難しい」

「そうですか?」

「髪留めが違うとか分からないだろ」

「自分が贈った髪留めくらいは覚えていますよね?その時くらいは気付きましたよね?」

「何を贈ったか覚えていない。彼女が欲しいと言った物を贈っていたからな」

「好きとかも伝えていないんですよね?」

「ああ」

「そしたら貴方は自分に興味が無いと思って不安だったのかもしれないです。そんな時優しくて自分を好きだと言ってくれ、些細な変化も可愛いと褒めてくれる男性が現れたらその男性を好きになっても仕方がないかも」

「そんな恥ずかしい事よく言えるよな、と俺は見ていたんだが、彼女にとってはそれが大事だったって事か?」

「好き好き言って欲しい人もいれば、ベタベタしたい人もいます。毎日可愛いと言われたいし、どこか褒めてほしい、そう思う人もいます」

「彼女はまさしくそれだ」

「それに、私はこんなに可愛いの、見て?可愛いのにどうして可愛いと言わないの?私は皆から好かれるの、貴方も私を好きでしょ?ならどうして好きって言わないの?私に嫌われたら嫌でしょ?逃げられたら嫌でしょ?なら私の機嫌を取りなさいよ!

という女性もいますよ?

後は、私は婚約者に好き好き言われて可愛いって言われてこんなに大事にされてるの。私は愛されてるの、羨ましいでしょ?皆私を見て!

という女性もいます。

後は男性にもいますが、愛に酔ってる人もいますね」

「怖いな…」

「元婚約者さんの事、可愛いと思わなかったんですか?」

「可愛いとは思ってた。小柄だからか俺が護ってやりたいと」

「それを伝えれば良かったのに」

「言葉にしなくても分かるだろ」

「言葉にしないと分かりません。察しろって言っても貴方が考えている事は貴方にしか分かりません。長年連れ添った夫婦ならまだしも、婚約者のうちに分かるのは幼なじみでずっと一緒に育ってきた人達だけだと思いますよ?それだって正確には分かりません」

「お前は話しやすいな」

「それは他人だからです。婚約者でもなければ友達でもない。だからです」

「それもそうか」

「婚約者なら可愛い所を見せたいし、格好いい所を見せてほしい。貴方だって婚約者に格好いい所を見せたいと思いますよね?」

「まあ、そうだな」

「友達には何でも言えますが、それだって全ての友達に言える訳ではありません。この子ならと思える子にしか言えない事はあります」

「男は特に見えの張り合いだからな、弱みは見せたくない」

「私が貴方に厳しい事を言っても、貴方がそれを気に食わないと思えば話さなければいいし、会う事もありません」

「確かにな」

「これでも私だって元婚約者には可愛い女の子として写りたいと思っていたんです。だから服装や髪型も気にしていました。それに言いたい事も言ってこなかった。我慢する事で大嫌いになりましたが、それだってもし私が言いたい事を言っていたら変わっていたかもしれません。今も仲の良い婚約者でいたかもしれません。

私は仲良くするのを止め、早く婚約解消出来ないかな?と思うようになりました。婚約破棄になったのは元婚約者だけのせいではないんです。私にも悪い所があったので」

「それでも婚約破棄になって喜んだんだろ?」

「それはもう!」


黄昏さんと話していたら帰る時間が過ぎていて、


「明日も来るか?」

「暇ですから」

「俺もだ」


明日も暇つぶしはできそう!


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