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「アイラ、君には悪いが、俺は君より好きな人が出来た。彼女と結婚したいと思うほど愛している。ここまで言えばお前でも分かるだろ?あ!お前ははっきり言わないと分からなかったな、悪い悪い。

俺はアイラと婚約破棄をする」

「分かりました、婚約破棄をお受けします。では早速念書を書いて下さい」


私は鞄から紙とペンを取り出しマシュー様に渡した。


「慰謝料請求をされても払わないぞ」

「慰謝料?そんなの請求しませんよ」

「それならそれも念書に書いてくれ。後で慰謝料請求されても困る」

「分かりました。後、何があっても婚約者には戻らないと書いて下さい」

「そんな事書かなくても戻らないぞ?そんな事も分からないのか?」

「それで私がマシュー様を諦めきれますから」

「それもそうか」


マシュー様は婚約破棄する理由と婚約破棄すると、そして今後婚約者には戻らないと念書に書き、私は婚約破棄を受け入れ慰謝料請求はしないと念書に書いた。


「ではここに拇印をお願いします。私もしますね」

「ここだな。それよりも準備がいいんだな」

「今日はこのあと一人で買い物に出ようと思っていたので」

「そうか」


2枚同じ念書を作り拇印もした。

私が確認していると、


「アイラも俺みたいな優しい婚約者がいなくなって寂しいだろ?次の婚約者も俺みたいな優しい男が現れれば良いけどな。アイラもそこそこ可愛いんだ、俺の好みでは無かったが」

「そうですか」


何を言われても今日だけは怒る気もないわ。だって晴れて婚約破棄になったんだもの。念書も作成したし、これで「また婚約者になってやる」って言われてもなれないし。


「一枚は伯爵家へ送り届けますね。今からデートするのに邪魔になりますよね?」

「そうだな、悪いが頼む。アイラも気が利く所があるんだな」

「では私は先に失礼しますね。あ!それとお支払いは済ませておきますね」

「当たり前だろ、わざわざ来てやったんだ」


私は先に出て、


「やったーー!」


思わず万歳しちゃったけど、それくらい嬉しいの。


もうこれで何も言われないわ!


「その服はアイラには似合わない。そういう服が似合うのは可愛い女性だ」

どんな服を着ようと私の勝手じゃない!少しレースが付いてる服を着ただけよ!


「その服は何だ?そういう服は美人が似合うんだぞ?お前自分の容姿を見た事あるのか?」

毎日見てるわよ!それに少し清楚な服を着ただけじゃない!


「こんな胸の開いてる服は胸の大きい人が似合うんだ。アイラが着るとみすぼらしいぞ」

悪かったわね!胸が小さくて!


「この服はアイラに似合ってるぞ」

地味って言いたいの?


これまで我慢したわ。婚約者として贈り物一つ贈ってくれなかったけど文句も言わなかった。あ!初顔合わせの時に花束を貰ったわね。黄色のカーネーション。花言葉なんて知らなかったとはいえね…。


「どうしてこの花を?」

「え?」

「他にも色々な色があると思いますが」

「前の人がピンクの花を買っていたから、なら俺は隣に置いてあった黄色かな?と思っただけだよ?」

「そうですか」


花束を貰って嬉しかったわよ?花言葉なんて知らない人もいるわ。それでも隣に置いてあっただけで?それなら薔薇で良かったのに。

まあ、花言葉抜きにしたら黄色のカーネーションも綺麗だからいいんだけど。花に罪はないし!





そんな事もあったわね。今ではもう懐かしいわ。

それよりも早く手続きしなくちゃ!これからは時間との勝負よ!

あの男爵令嬢がポイするまでにお互いの家のサインがいるわね!

早速家に帰り、


「お父様、早急に手続きをお願いします」


私は念書を見せた。


「遂にか!よし!早急に手続きするぞ」

「はい、お願いします」


お父様がサインをしている。


「慰謝料請求はしないのか?あっちの不貞だろ」

「慰謝料を貰うまで縁が続くのが嫌だったので」

「そうだな。縁は早く切った方が良い。それに金はいらないしな」


お父様は一代で財を築いた。お祖父様の代までは小さい商会で細々と暮らしていたらしい。お父様は独学で語学を取得し他国へ行って買付けをし商会で売る。独自のルートを築き今に至る。商会で手に入らない物はないと言われているけど、手に入らない物は実際にはある。

悪徳商会じゃないから手に入らない物は入らないと断る。それが良かったみたいでお父様は信用された。

それでもまたいつ細々と暮らすようになるか分からないし、買付けも案外お金がかかるみたい。自分の目で確かめたいお父様は自ら出向くしね。

それでも何不自由ない生活はさせてもらえてるし感謝もしている。


「急いで伯爵家へ行ってくる」

「お願いします」


お父様を見送り、これで本当に縁が切れるわ!



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