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しおりを挟む今日は婚約者と待ち合わせをしている。
女性と腕を組んで私に向かって歩いてくる婚約者の姿が目に入った。
今私の目の前に来た婚約者、伯爵令息のマシュー様。
向かいの席に座り女性とイチャイチャしている所を見せられてる私は子爵家のアイラ。
「マシュー様、隣の女性は誰ですか?」
「お前が知る必要はない」
「そうですか」
この人って確か男爵令嬢だったような…。それも有名なあの人よね?
もしかしてこのまま3人でお茶をするの?それは止めてほしい。周りを見たら直ぐに分かるのに。
目の前の2人は2人の世界に入っていて気付いていないけど…。
このいたたまれなさ、周りの同情の目に私はどうしたら良いの?帰っていいなら帰りたい…。
私とマシュー様の婚約はマシュー様のお父様から打診された婚約だ。お父様は例え爵位が上の伯爵家からの打診でも受けたくないなら受けなくて良いと言ってくれた。
それでも受けたのは初めて会った時に優しかったから。この人となら仲良い夫婦になれるだろうと…。
「俺はマシュー、君がアイラだね。俺はこんな可愛い子が婚約者で幸せ者だよ。これからよろしくね」
その時笑った顔が優しかったから私は婚約を了承した。
婚約者になり一緒に過ごすようになると見えてくるものがある。
婚約者がいる場合、もしくは出来た時から婚約している者達は一緒に学園へ通う。毎朝そして帰りと男性は女性を家まで送り迎えをする。婚約したら常識なの。
「わざわざ遠回りして送り迎えをする優しい婚約者でアイラも嬉しいだろ?」
「わざわざありがとうございます」
「お礼なんていらないよ。婚約者として当然の事をしているだけだ。まあ朝早く起きないといけないけどね」
初めは嬉しかった。それでも毎度言われるとね…。それに早く起きなくても家もそんなに離れている訳じゃないし、何だったら学園まで行く道中に私の家があるんだけど?
デートへ行っても、
「ここは俺が払うよ。俺は婚約者だしね」
これも初めは申し訳ないな、と思っていた。それでも毎度言われると…。
お礼を言うと、
「ありがとうございます」
「俺のお金で食べたケーキは美味しかっただろ?」
一言多いの。
払うと言ったのはマシュー様だし、婚約中は男性が払うのが暗黙のルール。
私がたまには払うと言ってからはなぜか私が毎度払う事になった。
「アイラ、食べ終わったしもう出ようか」
そう言うと外へ先に出て行く。私が払い外へ出て行けば、
「これからアイラはどうする?俺はこの後用事があるから一人で帰れるよな?まあ、馬車は俺の家の馬車を使えばいいよ」
「ありがとうございます」
「婚約者として当然だよ。アイラも優しい婚約者で良かったと思っているだろ?」
本当に優しい人なら家まで送り届けると思うけど…。
それに別にお礼を言われたい訳じゃないけど普通は「ごちそうさま」とか言わない?
それをさっさと先に外へ出て行く?
私は婚約者のマシュー様が大嫌い。
優しさを装っていたのなんてあっという間に剥がれたわ。
それでもマシュー様の家の方が爵位が上だからこちらから婚約解消なんて言えないし、マシュー様は婚約解消しようとは言わない。
早く誰かマシュー様を誘惑してくれないかな?
そう、私はマシュー様を誰かに誘惑してほしかった。だけどこの男爵令嬢じゃないのよね。
この男爵令嬢、婚約者がいる男性に色目を使って別れさせるのが好きなの。公爵家の子息は流石に手を出さないけど、侯爵家の子息は何組か婚約解消になっている。
婚約を解消したらポイ、興味が無くなるみたい。
今、目の前でイチャイチャしているけどここで婚約解消をもしマシュー様がすればマシュー様はお払い箱。その後また婚約しようなんて言われても困る。
だからこの男爵令嬢だけは嫌だったのに…。よりにもよって…。
でも、この男爵令嬢、確か公爵家の子息を狙っているって聞いたけど?なんでも男爵令嬢の一目惚れでそれは猛アタックしてるって噂になっている。
子息には婚約者がいて、婚約者は王女殿下。二人はとても仲が良くて相思相愛。誰も二人の仲を引き裂く事は出来ないほどお互いを愛してる。
クラスの子が「すごい所を狙ったわよね」って言っていた。だって二人に何かすれば王家と公爵家相手に男爵家が勝てるわけないもの。
ある子は「猛者ね」って言っていたわ。あの手この手で近づくけど相手にもされない。最近じゃあ公爵令息の側に護衛が付いたわ。
私は目の前の光景をただただじっと見ていた。
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