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54 私は幸せよ
しおりを挟む婚姻して1年
「グレース」
「お義姉様」
フランキーが王宮へ行くと必ずウルーラお義姉様がやって来る。
「お義姉様、ゆっくりとよ?私がそっちへ行くって何度も言ったのに」
「早くグレースの顔を見ないと胎教に悪いわ」
お義姉様のお腹にはお兄様の子が宿っているの。それなのに早歩きでいつも来るから私は毎日心配なの。
少し膨らんだお腹を私は毎日撫でるのが日課なの。『元気に育ってね』そう毎日伝えているわ。
「フランキーとも前に話してたんだけどこの子は平和を運ぶ子ね」
「ならグレースは幸せを運ぶ子ね。
私はグレースと会えて幸せだわ。それに今は義妹。それにロナルドとも会えたしこの子も授かった」
お義姉様は愛おしそうな笑みで優しくお腹を撫でている。
「でも始まりはあの馬鹿な弟の婚約者にしたい貴女をこの国へ見に来てからだわ。貴女に会って私の意思は固まったの。それまでは迷っていたし何が正解か分からなかったわ。でもグレースを初めて見た瞬間『この子は私の義妹になる』そう直感したの。
でもあの馬鹿に嫁がせるのだけは嫌だった。なら選択肢は一つしかないわ。私がロナルドの妻になるしかないって。幸いロナルドは好みだったしね。
だから私に幸せを運んでくれたのはグレースなのよ」
お姉様の笑顔は皆を元気にする。
「グレース」
「レーナここよ」
レーナはお腹が大きいロイスの奥様リリーと一緒にやって来た。
リリーはお兄様の子の乳母になるの。お義姉様の国は自分の乳を飲ませて育てるらしいわ。お義姉様のお母様、王妃様は乳を飲ませれなかった事を今でも悔やんでいるって。公の場には出なくても夫を支えるのは妻の役目。それに第二子を懐妊したから。
リリーはお義姉様を補佐する形みたい。でも何度かは乳を飲ませるって言っていたわ。絆を作る為に。
「リリー早く座って、身重なんだから無理はしないでよ?」
「身重でも動かないと体がなまってしまいます」
リリーも騎士家系だから体を動かす事が好きなの。
4人で話す時もあればお母様とアリアも来て皆で話す時もあるわ。
家族が近くにいるってやっぱり便利よね。もし反対側に建てていたら寂しかったわ。でもレーナがいるからそれはそれで楽しかったと思うけど。
でもお義姉様が毎日馬車で来るのも心配になるからここに建てて良かったわ。
ルイとレーナも婚姻したの。フランキーはルイが18歳になった時に伯爵を授爵したわ。今はフランキーに付いて王宮に行ってるの。私の護衛騎士なんだけどルイは伯爵を叙爵してくれたフランキーに恩返しがしたいってフランキーに付いているの。
フランキーに付いているといってもフランキーは騎士団に行くから一緒に剣の稽古をしに行ってるようなもんだけど。
ここにはアルロや騎士達がいるしそれにレーナもいるから。リリーも身重じゃなければ剣を扱えるしね。安全なの。私も前の時みたいに王太子妃じゃないから王宮にはいないし常に護衛が必要ではないもの。
だからいつかルイにはフランキーに忠誠を誓ってほしいと思っているわ。それに近い未来そう言われると思っているの。
それに女性ばかりのお茶の時間にルイが後ろに立っていたら話したい事も話せないわ。だからフランキーに付いて騎士団に行ってくれていいの。
「ロザンヌ様産気づいたんでしょ?」
「夜中にね」
「なら王宮は今バタバタね」
ロザンヌお義姉様はなかなか子が授からなくて悩んでいたけど子は授かりものだから。王太子妃として色々言われていたわ。色々言われても授かる時は授かるし授からない時は授からないのよ。だから黙って見守ってくれればいいのに、そういう訳にはいかないのよね…。
産まれたら産まれたで女児なら落胆されて次は男児をって。分かるけどそれではロザンヌ様の心労が絶えないわ。
男児が産まれたら国中でお祭り騒ぎだけどね。
でも直ぐに第二子を、そう言うのよ。
「グレース」
私を呼ぶ声に振り返る。
フランキーとルイ、お兄様とロイスが4人で歩いている。
「フランキー」
私はフランキーの元まで歩いて行った。
両手を広げるフランキー。私もフランキーに抱きつこうと思ったのよ?
「グレース、俺もここにいるんだぞ」
「お兄様おかえりなさい」
お兄様に挨拶したから改めてフランキーに抱きついたの。
「ただいまグレース」
「おかえりフランキー」
「お茶の時間だったのか?邪魔したか?」
「ううん大丈夫」
フランキーは私の腰を抱き寄せ私達は見つめ合った。
そしたらお兄様は私の左手を握ったわ。
「ロニー義兄上離して下さい」
「フランキーとの挨拶は終わっただろ?」
お兄様は両手を広げているわ。
「グレースを抱きしめるのは夫の俺だけです。夫の俺にはいつでも抱きしめれる権利があります」
「俺も兄として抱きしる権利がある」
「そうですか分かりました」
フランキーは私を離したら直ぐにお兄様は私を抱き寄せたわ。
そしたら今度はフランキーが私の右手を握って私をお兄様から離し私を抱きしめた。
「愛してるグレース」
ギュッと抱きしめるフランキーの背に私も手を回した。
「愛してるわフランキー」
フランキーの愛しいと見つめる瞳と私の愛しいと見つめる瞳が重なり合う。
「ン、ンッ!」
「お兄様、羨ましいならお義姉様としてきたら?夫婦の時間を邪魔しないで。
ほら、お義姉様とお腹の子に帰ってきた挨拶しないと」
お兄様はお義姉様の元へ歩いて行った。
ロイスもルイもリリーとレーナの元へ歩いて行った。
フランキーと手を繋ぎ皆の元へ歩き出す。
「今日は早いのね」
「兄上の仕事はロニー義兄上と手分けして処理したし、早馬の準備もしてきた。産まれたらまた王宮へ行くけどそれまでは家で待機することにしたんだ」
「まだロザンヌお義姉様はかかりそうなの?」
「多分な。父上もそわそわして手につかないみたいだから義父上が付きっきりだった」
「お父様も大変ね。でも誰だってそわそわするわよ。私だって待ち遠しいもの」
「俺もだ。すごく待ち遠しい」
熱のこもった瞳を向けるフランキー。
「もう!連絡がくるまで皆でお茶にしましょ」
私達が向かう先には幸せに笑い合う3組の夫婦。
ここには幸せが溢れてる。
愛しい夫に手を引かれ、今日も変わらず愛しいと見つめる瞳に、幸せだと笑う笑顔に、今日の私も幸せだと愛する夫に笑顔を返す。
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