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51 俺の色
しおりを挟む私達は毎日仲良くお茶をしている。
フランキーが誰も近づかないように自分の近衛隊の騎士達に伝えた日は膝の上に座るの。そしてお互いお菓子を食べさせあうの。
それから愛しいと語るフランキーの瞳に見つめられ、フランキーは私の額や頬に口付けするわ。
私もこの前初めてフランキーの頬に口付けしたの。そしたらフランキーはとても幸せそうに笑ったの。
フランキーの幸せな笑顔をまた見たい、幸せな笑顔だけにしたい、そう思うと好き、大好き、フランキーが愛しい、そう思うの。
私の中にも誰かをこんなに愛しいと思う感情があったなんて私自身が一番驚いているわ。
今日はルイが私を送った後に騎士団へ行くと言っていたから一緒に付いてきてフランキーの剣の稽古を騎士団で見ていたの。
フランキー格好良かったわ。騎士達の中で一番フランキーが格好良かったのよ?だからずっとフランキーを見つめていたわ。剣を振る姿も時々私の方を見て手を振る姿もなんでそんなに格好良いの?
今までだって何度も見てきた光景よ?
私はいったい何を見ていたのかしら。
確かに私の気持ちの変化もあるわ。家族ではない愛しい人。だからフランキーが違って見えた。
でもフランキーにも言われたわね、誰のことも見ているようで見ていないって。本当にその通り。
私は未来を変える事に必死で、前の時前の時って今を見ていなかったのかもしれない。
でも前の時の記憶を持つ以上切り離せない部分でもあるの。
でもいつか、前の時の私とは決別をする時がくる。決別をしないといけないの。
私は今を生きる私だから。
それに今の私の未来はこれからも続くから。
今は稽古が終わったフランキーとお茶をしている。
「グレース、これを受け取ってほしい」
メイドが持ってきた箱を受け取り箱を開けた。
「ドレス?」
「今度母上主催の茶会があるだろ?その時に着てほしい」
「ありがとうフランキー」
赤色のお茶会用ドレス。
「これは、首飾りと耳飾りと髪飾りね。ありがとう。
ねぇフランキー、これは私に似合うから?」
「違う、俺の色だからだ。俺の色を身に纏い茶会に行ってほしい。ようやくドレスや身に着ける物を俺の色だと贈れる」
「ふふっ、ありがとうフランキー。フランキーの色を身に纏えて私は幸せだわ」
婚約した次の日、高位貴族に報告する前に指輪を贈ってくれたの。同じモチーフの首飾りと耳飾りも一緒に。でもフランキーからというよりは王家から。
今までもフランキーはずっと自分の色を私に贈ってくれていた。でもこれは『俺の色だ』と初めて伝えてくれた私への贈り物。
今までフランキーが贈ってくれた贈り物も私の宝物よ。でもこれは初めて俺の色だと贈ってくれた私への贈り物。大切な宝物だわ。
そこへお父様がやって来た。
「二人共ここに居たのか」
「お父様どうしたの?」
「アルフレッドの王太子が正式に決定した。そして婚姻式もだ」
「ならお祝いを伝えないと」
「後、フレディの婚姻式の半年後にロニーの婚姻式も決定した」
「本当に?お兄様とお姉様の婚姻式が決まったの?」
「ああ。それでだ、フランシス、お前はロナルドと何を企んでいる」
お父様はフランキーを見ている。
それにフランキーやお兄様を愛称ではなく名前で言う時は叱る時。
二人共何をしたの?
「ロニー兄上と俺の意見の間を取った結果です」
「だからと言って」
「どういう事なの?」
「グレースと婚姻すればフランシスにも住居が必要だ。王宮で暮らす事も出来るが俺のように王宮の外で暮らすのが好ましいと思う。王位には興味もない、それを周りに知らしめる事に繋がるからな」
そうね、ただでさえ私の方がロザンヌ様より身分は上。王宮に住んでいれば王位を、そう考える人はいるわ。そんな気はない、それを伝えるには王宮から離れた方がいいのも分かる。王宮から離れても第二王子なのは変わらないから。
「だからと言ってどうして俺の邸の隣なんだ」
「ロニー兄上とそう約束したからです。グレースと婚約し婚姻した暁には隣に住むと」
もしかしてあの握手はこの事?
「俺ももう少し離れた所に建てたいに決まってます。でもロニー兄上は毎日グレースに会いたいと、そこは譲れないと言われました。なら王宮と大公邸の間に建てようと」
私が今住んでる家も王族の土地の一部。王族の土地の一部に王宮も建っている。フランキーが王宮を離れ邸を建てるとしても王族の土地の一部に建てる。普通なら大公邸の反対側ね。家から王宮までの間にも広い土地はあるにはある。だから別に建てては駄目ではないけど。
それに私とフランキーの婚姻式は決まっていないけど準備は始めないといけない。邸を建てるのにも期間がかかるもの。
「お前はそれで良いのか」
「はい。俺はグレースと暮らせれれば場所はどこでも構いません」
「分かった。話はそれだけだ」
お父様が去っていき、
「フランキー良かったの?私は家族と離れなくていいから嬉しいけど」
「ああ。あとルイの家も建てないとな」
「そうね」
お兄様とお姉様はお父様達と一緒に暮らす。ロイス夫妻もマークスとアリアと一緒に暮らすわ。そこにフランキーと私が暮らす家、ルイの家が建てば、それはそれで便利よね。会いたい時に直ぐに会える距離。お姉様ともレーナとも毎日会えるわ。それに王宮にもわざわざ遠回りして行かなくても直ぐに行ける門がある。ロザンヌお姉様にも会いたいと思えば直ぐに会えるわ。
「俺達の婚約に、兄上の王太子、それと婚姻。ロニー兄上の婚姻も、嬉しい事続きだな」
「それもそうよね」
「ロニー兄上とウルーラ姉上の子はこの国と両隣国を繋ぐ子になるのか…凄いな」
「この国はこれまで以上に平和な国になるわ」
そうそう、隣国の伯父様のこの国を攻める計画は頓挫したの。お父様は最後の悪あがきだったって苦笑してたわ。伯父様も国王になったの。最後の悪あがきだとしてもそんな人が国王なの?そう思うわよね。
でも攻めるつもりはなかったの。ただお母様に会いたかっただけ。お母様に会わせろとちょっと脅しただけなの。
だからお母様が手紙を書いて終わったわ。
『お兄様は立派な国王になるとジェシカは信じています。そしてその姿をいつまでも見せて下さいね、親愛なるお兄様。
隣国から家族と共にお兄様の国王即位をお祝いしています』
伯父様はお母様の手紙を額に入れて飾っているらしいわ。
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