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52 母と娘

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フレディ兄様も婚姻しお兄様も婚姻した。

フランキーは18歳になり私は17歳になった。


明日フランキーと婚姻式を挙げる。


私も爵位は知らなかったんだけど、ほら王位継承権のない私には王子教育の内容は知らないから。

お父様もだけどフランキーも第二王子だから成人した時に公爵と伯爵の爵位を授爵されて既に持ってるみたいなの。お兄様も侯爵を授爵されて持ってるらしいわ。

婚姻した時第二王子には公爵が新たに授爵されるみたい。お兄様のように一つは子供に継がせるみたいね。もし私が男児ならお兄様はお父様の爵位を継いで私がもう一つの公爵の爵位を譲り受けるらしいわ。

フランキーも自分が持ってる伯爵をルイに授爵するわ。ルイは私の護衛騎士だから。それにフランキーに付いて王宮へ出入りする時だってあるかもしれないから。

フランキーは私が16歳になったら婚姻したかったみたいだけど、フレディ兄様の婚姻、お兄様の婚姻と続いたから1年経ってようやくお許しが出たの。


「グレースも明日お嫁に行くのね」


お母様は少し寂しそうに笑った。


「でもすぐそこよ?それにいとこから夫婦になっただけで何も変わらないわ。元々親類だったもの。伯父様も伯母様も唯一の女児の私を娘のように可愛いがってくれてたし私もお父様やお母様のように思っていたわ」

「そうね、幼い頃はグレースの取り合いだったわ。国の為を思えば男児が3人続いて良い事よ?でも男児が3人なの。そこに女児の貴女が産まれたからそれはもう皆が可愛いがったわ。天使のような愛くるしい笑顔、皆が宝物のように思ってたわ。

グレース、今更こんな事を言っても言い訳のようだけど、私達は貴女に王女教育をさせるつもりはなかったの。お義兄様もお義姉様も勿論私もハリーも最後まで反対したわ。でも国は私達王族だけで護っている訳ではないわ。貴族の支えがあって、民の支えがあって初めて国を護れるの。だから貴族達の言い分を受け入れる事も必要なの」

「お母様、分かってるわ。どんな理由だったとしても王女教育をしていたからフランキーの優しさも、それに私がどれだけフランキーを必要としていたか、何度助けられ支えられ、それにずっと一緒にいたい側にいたい離れたくない、フランキーの隣は私の居場所、それがフランキーを好きになった原点なの。

私は幼い頃からフランキーが大好きだったの。だからフランキーの手に安心し勉強を頑張ろうと思えた。嬉しい時も悲しい時も辛い時もフランキーと手を繋げば忘れられた。隣にフランキーが居てくれるそれが嬉しかったの。

それに結果的に幼い頃からコツコツと無理のない範囲で王子妃教育をしていたのよ?だから私はフランキーの婚約者になっても教育は必要なかったわ、そうでしょ?」

「そうね」

「お母様、聞いていい?」

「なぁに?」

「お母様は国の為の婚姻は嫌だった?お父様と本当は婚姻したくなかった?お父様と婚約したの辛かったんでしょ?」

「私はハリーと婚姻できて嬉しかったわよ?あっ!もしかしてハリーから聞いたのね。私がお互い辛い立場ですねって言ったのは、ハリーは国の為の婚約だったからそのままの意味よ?大国相手に断る事もできない、それに大国と縁組を結ぶ事は国同士の関係をより強固にするから。大国は戦をすれば勝利し周辺諸国の中で一番力も発言力もあるわ。

だからハリーには選択肢はなかったの。

でも私の辛い立場はあれよ?国の為じゃなくてお兄様から逃れられない事を言ったの。お兄様の溺愛は嬉しい…、やっぱり嬉しくないわ。私はお兄様から逃れられないって本当に思っていたの。実際にそうだったから。

でも国と国の為の婚約といえばお兄様も連れ戻そうとは思わないでしょ?だからハリーには悪いけど私は婚約には乗り気だったのよ。でもほら乗り気なのを見せる訳にはいかないじゃない?だから王女らしくしおらしくしていたわ。でも心の中ではありがとうと何度もお礼を言って飛び跳ねていたわ。

だから本当の意味で犠牲になったのはハリーだけよ。だから私はこの人を愛そうと思った。だから手紙で本当の事を伝えたわ。そしたら『ジェシカと出会えた幸運の前にお互いの理由は些末なことに過ぎない』って。それから手紙のやり取りだけで愛を育てたわ。

グレース、私はハリーと婚姻できて本当に幸せよ。それに手紙でしか伝えられなかった気持ちを今は直接伝えられる。愛の言葉も私の意思も。

意思や言葉は生きる者に与えられた武器よ。だから喧嘩してもいいの。でも自分の意思も言葉も伝えられない夫婦にはならないで。嫌な事も愛も言葉で伝えないと相手には伝わらないわ。

自分の意思も伝え相手の意思も聞く、そして二人で話し合えばいいの。私達は誰かと会話をする為に言葉を覚えるの。意思を伝える為に言葉を覚えたの。だから言葉を伝え合える夫婦になって。

グレース、貴女の幸せを皆が願っているわ。フランキーと幸せにね」

「お母様…」


私はお母様に抱きついた。

言葉を伝える大切さは身に沁みて分かってる。前の時の後悔を今度は絶対にしない。

それにフランキーとなら幸せになれると確信があるの。

前の時の怖いくらいの愛もフランキーの奥底に眠る感情だと思うの。そして今も重すぎる愛で私を愛してくれる。

でもそれが嬉しいと思うのよ。

最期フランキーに殺されたのは驚いたわ。でも憎しみに変わるくらい私を愛してくれてたって事でしょ?

結果的にフランキーが私を殺したけど、私だって最期はルイに殺してほしかったと望んだわ。知らない人に殺されるなら知ってる人の手で殺してほしい、そう思った。

それだって私の強い願望。

私は自分では死ねなかった。誰かに殺されるのを待っていたの。もう限界だったから。この世に生きていたくなかったから。

だから抵抗出来ずに散ったんじゃない。抵抗せずに散ったの。か弱い女性だから?違うわ、私は助かる事を放棄したの。

それにフランキーがあんな風になったのはああなるしかなかったから。それに今はあれで良かったと思ってるの。前の時の私はグレースではなくてグレース人形だったから。


人形だった私が0歳児に戻って人間として今は生きてる。

叶えられなかった前の時の思いを今は叶えられた。

皆がそれぞれの幸せを手に出来たの。

ボタンの掛け違いで狂った人達の運命を戻せた。


今の私に問いたい

『愛は必要ですか?』

愛は必要だわ。

自分が愛した人が自分を愛してくれる、そんな幸せなことはないの。

それに愛しい人がいる、それだけで毎日が楽しいわ。

だから愛は必要よ。



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