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49 ファーストダンス
しおりを挟む私も15歳になりお父様とお母様、なぜかお兄様まで一緒に国王陛下に謁見し誕生日の報告をした。
成人後初めての夜会は伯父様の誕生会。節目の誕生会以外は国内の貴族だけで誕生日を祝うの。
ウルーラお姉様は参加出来ない事を残念がっていたわ。私も残念だった。
ルータン国は第一王子の王位剥奪、第二王子の王位継承権の放棄、そして王太子が決まった。第一王子と第二王子は王家籍は抜けず、第一王子は監視付きの幽閉。まだ10歳の第二王子は厳しく教育される事になったみたい。今後は王族として王太子を支える一人になれるように。
お姉様の心痛を思うと、どう手紙を書いていいのか…。
お兄様は『よくやった』その一言だけの手紙を送ったと言っていたわ。きっとお姉様もお兄様の手紙に『でしょ?私やり切ったわ』そう言ってる姿が浮かぶの。
白いドレスに身を包み頭には赤い薔薇の花。この薔薇の花もフランキーがわざわざ朝から持ってきたのよ?『これを着けてほしい』って。
お父様とお母様とお兄様と馬車に乗り込み王宮へ向かう。
お兄様のエスコートで会場に入った。
綺羅びやかな会場に貴族達の姿。
懐かしい光景。それに前の時は派閥で分かれていた人達が一緒に語り合う姿。派閥で婚約出来なかった人達も仲違いした友たちも今は楽しく談笑している姿に涙が出そうになった。
私はこの光景を見たかった
平和を象徴するような姿を見たかった
ルイも今日は白い正装をしている。ルイの隣には仲良く談笑している幸せそうなレーナの姿。
未来を変えたいと願い0歳児に戻った。
戻って本当に良かった
国王陛下の挨拶が終わり貴族達の視線は白い服装をしている人達に移る。
今はフレディとロザンヌ様が始まりのダンスを踊っている。
私の目の前に差し出された手
「グレース嬢、貴女のファーストダンスの相手に願い出たいのですが」
ふふっ、そうね、それも私が言ったわ。
ファーストダンスを踊って婚約者だと周りに認識させればいいって。
お兄様は飛び出してきそうな勢いだけどお父様とフレディが止めてるわ。マークスも合わせれば3人がかりね。
フレディ?ならダンスは白い服装の人達の番って事ね。それに身分が上位の人から踊る習わし。
お兄様は自分が私のファーストダンスの相手をするつもりでいた。国内の貴族が集まる王宮の夜会で家族以外と踊れば婚約者だと認識される。例えいとこでも婚姻出来る以上家族には入らないから。
昨日フランキーに言われたの。
『俺はグレースを一生離す事はできない。俺が愛するのも死ぬまで一緒にいたいのもグレースだけだ。
グレース、俺と婚約してくれないか』
フランキーを好き、フランキーとずっと一緒にいたい。フランキーの隣に立つ女性は私で在りたい。
それは死ぬまで一緒にいたい?
死ぬまで一緒にいたい。それに前の時、フランキーと私が同じ棺に入った光景を見たとき、お父様の言葉を借りるなら『ストンと腑に落ちた』の。
死ぬまで一緒死んでも一緒。
前の私もそれを望んでいたと。今の私もそう望んでいると。本当はあの光景を見た時羨ましいと思ったの。
家族に拘ったのも家族ならフランキーと切れる事のない糸で繋がれるから。でもフランキーとなら一生切れない糸を繋げられる。
私は貴女の妻になりたい。
『はい、お受けします』
『グレース好きだ、愛してる。一緒に幸せになろう』
『ええ、一緒に幸せになりましょ。フランキー大好きよ』
それから二人でお父様とお母様に報告して婚約の許しをもらい、お父様とお母様と一緒に伯父様と伯母様にも報告した。伯父様の誕生会が終わったら国中に発表する事が決まった。
お父様を見れば頷いている。伯父様も微笑んでいる。
なら良いって事ね。
昼間に上位貴族に報告し承認も得てる。それに夜会が始まる前に下位貴族の当主にも伝えられた。
「フランシス殿下、私のお相手をお願いできますか?」
「はい、光栄です」
私はフランキーの手の上に手を添えた。
フランキーは私をエスコートして会場真ん中まで移動した。
奏者の演奏が始まり…
「グレース、綺麗だ」
「ありがとう」
「ロニー兄上もこれで認めざる得ないよな」
「そうね」
私は思わず苦笑した。
昨日、伯父様と伯母様、お父様とお母様、フランキーと私、正式に婚約の手続きを済ませ仲良く6人でお茶をしてたら突然お兄様が入ってきたの。
『俺は婚約を認めない』
お兄様が認めないと言ってももう正式に手続きは終わった後。それに婚姻式はどうする、住居はどうする、そんなまだ先の話しを伯父様と伯母様、お父様とお母様は嬉しそうに話してたの。
『伯父上、王の印はまだ押してないですよね?』
『押したぞ』
『もう諦めろロニー』
伯父様もお父様も呆れた顔をしていたわ。伯父様は国王なのよ?印を押してるから『正式な婚約だ』とお兄様に何度も説明したのに。
本当は夜会の始まりの挨拶の時に正式に発表するはずだったの。でもお兄様に配慮して夜会の終わりの挨拶の時に発表しようとなっただけ。
でもお兄様にはこれで良かったのよ。
現実を受け入れてもらわないと。
フランキーとダンスを踊る。
私は今もダンスは得意ではないの。フランキーと目が合って
『ごめんフランキー』
『グレース、お前な…』
『踏んじゃったわ』
『踏んだな』
お互い笑い合った。
でもそれが許されるのもフランキーだから。私達は幼い頃からずっと側にいた。一緒に頑張ってきた。お互い素も出せる。失敗も笑い合える。言いたい事だって言える。
そこに愛も加わった。
『グレース好きだ』
『私は大好きよ』
『俺は愛してる。愛しい、可愛い、もう離さない』
私達は見つめ合いながらダンスを踊り終わった。
フランキーは私の頭にある赤い薔薇の花を取り、自分の胸元に刺してある赤い薔薇の花を取り水の入ったグラスに挿した。
「フランキー?」
「呆れると言われても二人だけが良かった。それに会場の中なのは同じだろ?」
「そうね」
会場のどの花瓶に挿すかは花を受け取った人が決めて挿す。近い花瓶に挿す人もいれば好きな花がある花瓶に挿す人もいる。
ならグラスでも同じよね。
ルイのファーストダンス、レーナと踊っている所をフランキーの隣で見ている。
レーナはルイの胸元から花を取りレーナも別のグラスに入れ私達の横に並べた。
グラスが2個並んで置いてあるその横で4人で仲良く談笑する。そこにフレディとロザンヌ様、お兄様とロイス、ロイスの婚約者も加わり皆で談笑する。
未来を担う若者達を国王をはじめ皆がその光景を微笑ましく見ていた。
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