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47 閨教育

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それで私考えたの。どうしてフランキーを男性として見れないか。

フランキーは好きよ。好きじゃなければ今まで一緒にいないわ。それに厄介な私の心を受け入れて本心を見せてくれる。私は前の時の事を隠しているのに。

お兄様やフレディとは違う気持ちも私の中にあるにはあるの。

でもどこか足踏みしちゃう。

その原因があの女癖の悪さなのよ。

今のフランキーが女癖が悪いなんて思わないわ。前の時のフランキーだとしてもどうしてもそこが引っかかるのよね。もしかしたら、いずれ、その不安が私を足踏みさせてるって思ったの。

もし婚約者になったら、もし妻になったら、いつか私への思いも無くなったら…って。ほら、15歳になったから閨教育を受けただろうし。

だから思いきって聞いてみようと思ったんだけど…。


「ねぇフランキー」

「さっきから何だよ」


そうなの。何度もフランキーを呼んでは何でもないって言ってるの。


「聞きたい事があるんだろ?早く聞けよ」

「うん、聞くわ。

フランキーってほら、閨教育受けたわよね?」

「お、お前!それは、」

「どっち?」

「一応受けた、けど…」

「どうだった?どう思った?」

「どうって…」

「答えて」

「こんなもんか…って思ったけど?もういいだろ」

「フランキー、私にはとても大事な事なの。言いにくいだろうけど正直に答えて。

もしもしもよ?私が兄様と婚約してるとしてよ?それでもこんなもんかって思う?」

「大事な事なんだな」


私は頷いた。


「兄上とグレースが婚約してたらか…。

ふざけるな、そう思うだろうな。こんな事を二人がするのかと思ったら頭に血が上って、そして自棄になる。もうどうでもいい、なら覚えたての同じ行為をしてやるって。

俺にとってグレース以外は誰でも同じだ。本当に好きな人と出来ないなら誰としようが何とも思わない。体を動かす、それと一緒だ。意味も持たない行為はただの発散にすぎない。一人でするくらいなら…そう思うだろうな」

「なら私がフランキーの婚約者だったら?」

「そんな風に思う訳がない。グレースとするから価値がある行為なんだ。あれは愛を伝える行為だ。お互い裸を見せ合うんだぞ。ってまだお前は受けてないよな…ごめん…」

「それは何となく分かるから大丈夫」

「分かるのか!」


フランキーは私を睨んだ。


「フランキー、今どき物語の本の中に書いてあるのよ?男女の営み?それくらい知ってるわよ」

「そうなのか?」

「そうよ」

「そうか、ごめん…」

「もしフランキーと私が婚約してそしたら婚姻するわよね?でも夫婦っていつか飽きるじゃないけど愛は無くなるかもしれないじゃない?」

「俺はグレースへの愛が無くなるとは思えないけどな。婚姻して妻になったら満足なんじゃない。妻になったから愛を無限に注げるんだろ?どれだけ愛しても愛し足りない。

それに愛する気持ちは年々育っていくんだと思う。確かに若い時のような愛から穏やかな愛に変わるかもしれない。父上や叔父上達を見ているとそう思う。お互いを大切にして信頼してお互いにしか見せない顔があって、でもその根本には愛しいと思う気持ちがある。それは二人で育てていく思いだろ?

ならグレースは婚姻する相手に愛が無くなるのか?愛を育てず放棄するのか?そう思う相手なら婚姻はするな。グレースだけじゃなくて相手も不幸になるだけだ。

欲を言えば俺がグレースを幸せにしたい。でもそれは押し付けるものじゃない。グレースが俺を男として見れない、いとこにしか見えない、そう思うならそれも仕方がないと思う。グレースの気持ちはグレースのものだ、俺のものじゃない。

それでも、どんな結果になっても俺の願いは一つだ。

グレースには愛する人と幸せになってほしい

それは皆も思う気持ちだ。それを忘れないでくれ」

「それは分かってる」

「どうしてそんな事を聞いたんだ?」

「ほら家の為に婚姻した人達って中には愛人を作る人がいるじゃない。勿論フランキーが言ったように愛を育くむ人もいるわ。それに愛し合って婚姻しても何かのきっかけで愛せなくなる人もいる。

でもそれは仕方がないと思うの。心を偽り続けるのはいつか限界がくるわ。それでも偽り続けたらいつか苦痛になる。顔を見るのも嫌、声を聞くのも嫌、それでも同じ空間にいないといけない。そうすると心はすり減っていく。自分には何も価値はないと、価値があるのは自分ではなく血。どうして産まれてきたのか、どうしてこんなに弱いのか、ならいっそ死んでしまおうか。でもそれも出来ない。ただ息をして人形のように意思も持たず微笑むだけ。『分かりました。今後は気を付けます』それだけを繰り返す人形になるの。傷付く事もない悲しむ事もない、嬉しいとも楽しいとも、怒る事も喜ぶ事もない、ただそんな日常を送るの。

私は幸せになりたい。死ぬ間際までこの人を愛せて良かったそう思って死にたい」

「グレース、お前はそれを経験したのか?」

「なんで?」

「時々兄上をそんな顔で見つめていた。微笑んでいても目が死んでいたり、どこか悲しげでまるで懺悔しているかのようだった。急に大人びたり、まるでお前の中に違う人がいるようだった。それにお前は兄上に限らず誰のことも見ているようで見ていない。お前の瞳は誰を映していた。

グレース、お前は兄上に何を謝り誰を見ていた。

誰に許しを乞いたいんだ」

「違うわよ?本の物語の話よ?」

「そんな物語はもう読むな。本の中と現実は違う」

「そうね」


前の時と今は違う。前の時に私は拘りすぎていた。


「でも私そんな顔してた?」

「俺はずっとお前を見てきたんだ。お前だけを見てきた。お前は手を繋いでいないと消えてなくなりそうだった」

「消えてなくならないわよ?」

「安心しろ、消えてなくならないように俺が繋ぎ止めてやる。何度でも取り戻してやる」

「その時はフランキーを呼ぶわ、フランキー助けてって。寂しい時は手を繋ぐわ。泣きたい時は胸を借りるわ。嬉しい時は抱きつくわ。楽しい時は手を取り合って楽しむわ。

フランキーの隣は幼い頃から私の居場所だもの」


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