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46 向き合い方
しおりを挟む「叔父上叔母上おはようございます」
大きなフランキーの声に着替え途中の手が止まった。私はウルーラお姉様が連れてきたメイドと目があい、
「フランキー?」
「だと思います。急いで続けます」
身支度を整え階段まで歩いて行く。
またやってるわ…
「フランキー考えろ、早すぎだ」
「昨日ロイスからロニー兄上からの言伝だと明日グレースに会わせると聞きましたが何時とか聞いていません。なら朝でも兄上の言う明日ですよね」
「こんな朝早くは迷惑だと分かるだろ」
「これでも朝まで我慢したんです」
「ふふっ、これはお兄様の負けよ」
「「グレース」」
「お兄様がいつも言う事よ?フランキーはいつもそれを受け入れてるわ。だからお兄様も受け入れないと。これからは何時を伝えた方がいいわね」
「そうだな。来たものを追い返したりしない」
「良かったわねフランキー」
「ああ、グレースおはよう」
「おはようフランキー、一緒に朝食にしましょ」
皆で朝食を食べる。そこへ入ってきたマークスとロイスとルイ。
そりゃあ驚くわよね?
でも3人共見て見ぬふりをしたわ。主は第二王子より上だから。
「ちょっとルイと稽古してきてもいいか?」
フランキーはルイと一緒に訓練場へ行ったわ。他の騎士達に交ざり稽古をするフランキーを見つめる。
前の時は私室の窓から見つめるだけだった。二人が稽古する所を話し笑い合う所をこっそり眺めるだけだった。
私はこれからどうフランキーと向き合うか考えてる。
でも思うの、皆の最期を見たわ。私とルイだけでなく皆が死んだ。この国は大国の統治下になりお兄様とお義姉様とロイスは姿を消した。お義姉様の国へ行ったのかそれとも…それは分からない。
なんで私だけ前の記憶があるの?
皆死んで、私だけが0歳児に戻ったの?それとも皆も戻ったけど記憶がないだけ?それか前の記憶が私の夢だったとか?今が本当の私の人生とか?
それこそ神のみぞ知るよね。
それでもあの夢は前の私の記憶と同じ。だから私の中で眠る彼女の思いを昇天させてあげたいと思ったの。
それと前の時のフランキーもフランキーなんだと思うの。性質は変わらない、なら今のフランキーにも通ずる所がある。だから私は前の時のフランキーごと向き合いたいと思ったの。そこに糸口がある気がするから。
それからしか私は本当の意味でフランキーと向き合えない気がするの。
「待ったか?」
「稽古する所を見てたから大丈夫よ」
フランキーと庭でお茶をする。
「ねぇフランキー、少しだけ目を瞑ってほしいの。それでね私が何をしても絶対に目を開けないで。これは大事な事だから」
「よく分からないけど分かった」
フランキーが目を瞑り私は立ち上がりフランキーの近付いた。そしてフランキーの頭に手を置いて額と額をくっつけた。
フランキーはビクっと動いたものの目は瞑っている。
私の目を閉じ夢の中のあの彼女の言葉を心の中で唱えた。
(愛してる、愛してるわフランキー、貴方を愛してる…)
こんな事で彼女が昇天するとは思わない。それでも今のフランキーに伝えるしかないと思うの。でもその言葉は今の私の言葉じゃない。
一つの儀式
私は額を離しフランキーから離れた。
「ありがとうフランキー」
「何かのまじないか?」
「そうね、儀式かしら。
ねぇフランキー、私真剣に貴方と向き合おうと思うの」
「そうか」
フランキーは嬉しそうに笑った。
机の上に置かれたフランキーの手。手一つ分離れた所に手を置いた。
「ねぇフランキーならこの手の離れ方をどう思う?」
「触れたくても触れられない」
「ならこれが恋人なら?」
「直ぐに手を繋ぐ」
「なら片思いの相手なら?」
「手一つ分って相手を感じるギリギリの境界線だと思うんだ」
「なら今の私達なら?幼い頃から手を繋いできたわ。でも私達は恋人じゃない。もし目の前にお兄様がいたら手は繋がないでしょ?その時のフランキーはどう思う?」
「繋ぎたい、繋げない、でもこれ以上離れたくない。これ以上近付いたら手を握ってしまう。この手を取れたら、この手を握っても文句を言われない立場なら。でもロニー兄上を前に手を繋ぐ事はできない。もし手を繋いだらグレースに会わせてもらえなくなるかもしれない。それだけは嫌だ、そう思う」
そう、だから前の時いつも手一つ分離してたのね。そしてその手はいつも固く握られていた。フランキーも耐えていた。自分の愛する人でも兄の婚約者だから、妻だから。その手を取る事は出来ないから。
「フランキーって私の事大好きなのね」
「当たり前だろ」
「もし兄様かルイの婚約者になってたらどうしたの?」
「俺はその相手を恨み妬み憎んだんだろうな。俺には一生なれないと絶望すると思う」
「そうね、そう思うわ」
あの視線もあの行動も全てが納得できる。
黒ずくめの男達が私とルイを殺しに来た、そう思ったわ。ルイはあの時レーナとは婚約解消していた。その事はフランキーも知っていた。婚約者もいない男が常に側にいる。それに私から信頼されていて私室の中にまで入れる。仲良く話す私とルイを見てフランキーの心の中は真っ黒にルイへの憎悪が渦巻いていた。それに私に対する愛憎も。それにルイを殺さなければ私は手に入らない。
ルイの強さを知っているからこそ何人も刺客を送り込んだ。確実に殺す為に。
それにフランキーは騎士団をまとめていたもの。あの黒ずくめの男達はフランキー個人の隠密だったのね。
そこまで愛していたのなら手を取り逃げれば良かったのに。例え兄の妻でも手を取ったら喜んで付いて行ったのに。
でも駄目ね、二人は思いを秘し隠していたから。
「グレース好きだ」
「フランキー?」
「伝えれる時に伝えないと一生伝えられないままだ。だから俺はもう隠さない。
それにグレースは鈍感だからな、好きだ愛してると言わないと俺の気持ちには気付かない」
「そんなに鈍感かしら」
「でも思うだけで伝わると思ってた俺も悪い。言葉で伝えないといけない気持ちはあると思うんだ」
「そうね、私もそう思う。言葉って大事だと思うわ」
思うだけでは伝わらない。声にだして言葉で伝えないと。それが愛の言葉でも拒絶の言葉でも、何も伝えなければ相手には分からないもの。
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