43 / 55
43 最期の時…
しおりを挟む夜ベッドで横になり天井を見つめる。
昼間のフランキーの嫉妬、それは分かった。私の隣に男性がいるのが嫌なのも私が自分以外の男性の話をするのも。
『俺が何度ルイに嫉妬したか。幼いお前が毎日のようにルイを自分の騎士だと言う度に俺は嫌だった。ルイの話を嬉しそうに楽しそうに話すお前をいつも俺がどんな気持ちで聞いていたと思う。
それに兄上をじっと見てたり兄上の為に涙を流したり、結局最後に頼るのは兄上。お前の兄上を見る視線は家族とは別のものに俺には見えた。それは幼い頃からだ。だからグレースは兄上が好きなんだと思ったんだ』
ルイの家は同じ敷地にあるから毎朝会うわ。それは今でも。マークスに付いてルイとロイスは毎朝挨拶にくるから。
マークスは伯爵だけどお父様は同じ敷地にマークスの家を建てた。マークスは近衛隊を辞めた時、全てを放棄した。実家の伯爵家も当主の座も。
お父様だけを護る護衛騎士になる為に
マークスはお父様の護衛騎士になる為に平民になる事を選んだ。だからお父様は自分が持っている領地のない伯爵の爵位をマークスに授爵したの。王の執務室に出入りするお父様を護衛するには貴族でないと入れないから。
マークスのお父様に対する忠誠心は凄いの。
確かに幼い頃からルイの話をフランキーに話したわ。今日はね、って。嬉しかった事や楽しかった事、嫌だった事、子供が何でも親に話すのと同じで、ただその朝あった事を話しただけ。
それにフレディの事は前の時があったから。
家族とは別の視線か…
そうかもしれないわね。でも好意とは別。今度は幸せになってほしい、その思いが大きかったかも。フレディへの思いは家族愛の域を出ない。それは前も今も。
血で選ばれた第一王子妃の立場
愛で選んでほしかった第一王子妃
未来を変える、そのせいで確かにフレディを見つめていたかも。でもそれはロザンヌ様と二人の姿をよ?
でもフランキーにはフレディを見つめているように思えたって事なのね。
もしかして!
前の時、フランキーのあの視線、あれは私に向けたものじゃなくて隣に立つフレディやルイに向けたものって事?
嫉妬
自分にはなれない婚約者という立場
自分にはなれない護衛騎士という立場
派閥が出来てフランキーとすれ違う時いつもフランキーとルイは立ち止まり睨み合っていた。私はフランキーには声を掛けなかった。『ルイ行くわよ』そう言って…、あの時のフランキーの視線は嫉妬というよりも殺意に近かった気がする。
フランキーに声を掛けてそれを誰かに見られたら、王太子妃の自覚がないと責められるから。そんな面倒事はもううんざりだった。
勝手にフレディの婚約者にされ、勝手に王太子の座を巡る争いをするフレディとフランキー。
もううんざりだったの
でもその全部が私を愛するがゆえの行動だとしたら…。
重すぎる愛は怖いわね
もしフランキーが王太子になって王になったら王命でも出して妃にしようとしたの?
あの突然思い出した幼い頃の記憶、フランキーの大好きは本当の大好きだったの?
結婚する二人の口付け、あれは本当の意味だったの?
フランキーはずっと私を好きだったの?
だから愛が、憎しみに………
『貴女は知りたい?貴女の最期の時、そしてその後を、貴女は知りたい?』
この女性、覚えているわ、私が0歳に戻る時にも会った女性だわ。
『知りたい。この国がどうなったのか、私は知りたい』
『どんな結末でも?』
『どんな結末でも私は知らないといけないと思うから。全ては私から始まった悲劇、そう思うから…』
『そう…、分かったわ』
パチン!
『ルイ、ルイ、ルイ!ねぇ、ルイ返事をして!ルイ!』
部屋の中に入ってきた一人の黒ずくめの男
『退かせ』
退かされる護衛騎士の体
蹲り目を瞑っている女
男が女に跨り剣を刺した
息絶えた女
男は女を抱きしめた
『愛してる、愛してるグレース。お前を愛してる。
ようやく、ようやく言えた…。ようやくお前に伝えられた…。これでお前は俺のものだ。兄上のものでもルイのものでもない、俺の俺だけのものだ!
約束しただろ?口付けまでして約束しただろ?それなのにお前は約束を破った。約束を破って兄上と婚姻した。
俺の気持ちがお前に分かるか?なぁグレース、俺の気持ちが分かるか?
お前をこんなに愛しているのに、誰よりもお前を愛しているのに、兄上よりもルイよりもお前を愛しているのに…、どうしてお前は俺を愛してくれない。
だから俺は俺の手でお前を永遠に手に入れた。もう誰にも渡さない。もう誰にもお前に触れさせない。
お前の体もお前の命も全部俺の俺だけのものだ!
なぁグレース、お互い死ぬまでずっと一緒だ。もう離れなくていいんだ。俺達はあの時口付けして約束した。これからはずっと一緒にいような。
愛、して、る……、愛し…て、る……グ、レー…ス………』
ポロポロと涙を流しながら女を抱きしめる男
男の涙が女の頬を伝う
まるで一緒に涙を流しているように
『これからは永遠に一緒だ』
口付けをする男
『全員始末してこい』
黒ずくめの男達は部屋を出て行った
隣国に攻め入れられたこの国は、王宮では国王と王妃、王太子は既に亡骸となっていた。王太子の傍らには第二王子妃が自害していた。大公邸では大公と大公妃の亡骸。大公の傍らには大公の護衛騎士が大公妃の傍らには大公妃の護衛騎士が寄り添うように亡骸となっていた。
指令を出す者がいないこの国はあっという間に隣国に落ちた。
公爵は妹を探した。公爵の護衛騎士は弟を探した。妹の私室、護衛騎士の亡骸、その近くにあった乾いた血溜まりの跡。公爵は国中を探した。それでも見つからない妹。
一方で男と女の行方…
王家の墓の中
同じ棺に入る男と女
そして男はまだ女の血が滴る同じ剣で自害した
パチン!
『これが真実。原因は貴女。封印したその心』
女性は私の胸を指差した。
『貴女は誰なの?どうして私だけを戻したの?』
『私を勝利の女神と呼んだ人もいるわ。でも私は貴女の封印した心。
彼は優しいがゆえに心が壊れてしまった。そして愛するがゆえに愛が憎しみに変わり憎しみが殺意になってしまった。
自分の手で貴女を殺し永遠に貴女を手に入れたの。
そして自分と貴女を引き離した全ての人を殺した。
彼を救えるのは貴女。
彼を救ってあげて。フランシスは私が愛したたった一人の人なの。
だから貴女に私を返すわ』
17
お気に入りに追加
1,205
あなたにおすすめの小説
【完結】バッドエンドの落ちこぼれ令嬢、巻き戻りの人生は好きにさせて貰います!
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢エレノアは、容姿端麗で優秀な兄姉とは違い、容姿は平凡、
ピアノや刺繍も苦手で、得意な事といえば庭仕事だけ。
家族や周囲からは「出来損ない」と言われてきた。
十九歳を迎えたエレノアは、侯爵家の跡取り子息ネイサンと婚約した。
次期侯爵夫人という事で、厳しい教育を受ける事になったが、
両親の為、ネイサンの為にと、エレノアは自分を殺し耐えてきた。
だが、結婚式の日、ネイサンの浮気を目撃してしまう。
愚行を侯爵に知られたくないネイサンにより、エレノアは階段から突き落とされた___
『死んだ』と思ったエレノアだったが、目を覚ますと、十九歳の誕生日に戻っていた。
与えられたチャンス、次こそは自分らしく生きる!と誓うエレノアに、曾祖母の遺言が届く。
遺言に従い、オースグリーン館を相続したエレノアを、隣人は神・精霊と思っているらしく…??
異世界恋愛☆ ※元さやではありません。《完結しました》
悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。
ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」
ぱさっ。
伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。
「きちんと目は通してもらえましたか?」
「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」
ざわざわ。ざわざわ。
王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。
「──女のカン、というやつでしょうか」
「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」
「素直、とは」
「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」
カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。
「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」
「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」
カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。
「それではどうぞ、お好きになさいませ」
時を戻して、今度こそ好きな人と幸せになります
編端みどり
恋愛
王女カトリーヌは、婚約の王子から冤罪をかけられて婚約破棄をされた。やった! あちらからの破棄なら慰謝料も取れるし、ようやく国に帰れるわ! そう思っていたのに、婚約者はわたくしを地下牢に閉じ込めて一生仕事だけさせると言い出した。逃げようとするカトリーヌを守って騎士が死んだ時、王族の血族のみが使える魔法で過去に戻る。
過去に戻ったカトリーヌは、今度こそ幸せになれるのか?!
王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。
しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。
相手は10歳年上の公爵ユーグンド。
昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。
しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。
それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。
実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。
国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。
無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
【完結】「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする〜二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」
まほりろ
恋愛
【完結しました】
アリシア・フォスターは第一王子の婚約者だった。
だが卒業パーティで第一王子とその仲間たちに冤罪をかけられ、弁解することも許されず、その場で斬り殺されてしまう。
気がつけば、アリシアは十歳の誕生日までタイムリープしていた。
「二度目の人生は|殺《や》られる前に|殺《や》ってやりますわ!」
アリシアはやり直す前の人生で、自分を殺した者たちへの復讐を誓う。
敵は第一王子のスタン、男爵令嬢のゲレ、義弟(いとこ)のルーウィー、騎士団長の息子のジェイ、宰相の息子のカスパーの五人。
アリシアは父親と信頼のおけるメイドを仲間につけ、一人づつ確実に報復していく。
前回の人生では出会うことのなかった隣国の第三皇子に好意を持たれ……。
☆
※ざまぁ有り(死ネタ有り)
※虫を潰すように、さくさく敵を抹殺していきます。
※ヒロインのパパは味方です。
※他サイトにも投稿しています。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※本編1〜14話。タイムリープしたヒロインが、タイムリープする前の人生で自分を殺した相手を、ぷちぷちと潰していく話です。
※番外編15〜26話。タイムリープする前の時間軸で、娘を殺された公爵が、娘を殺した相手を捻り潰していく話です。
2022年3月8日HOTランキング7位! ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる