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43 最期の時…

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夜ベッドで横になり天井を見つめる。

昼間のフランキーの嫉妬、それは分かった。私の隣に男性がいるのが嫌なのも私が自分以外の男性の話をするのも。

『俺が何度ルイに嫉妬したか。幼いお前が毎日のようにルイを自分の騎士だと言う度に俺は嫌だった。ルイの話を嬉しそうに楽しそうに話すお前をいつも俺がどんな気持ちで聞いていたと思う。

それに兄上をじっと見てたり兄上の為に涙を流したり、結局最後に頼るのは兄上。お前の兄上を見る視線は家族とは別のものに俺には見えた。それは幼い頃からだ。だからグレースは兄上が好きなんだと思ったんだ』


ルイの家は同じ敷地にあるから毎朝会うわ。それは今でも。マークスに付いてルイとロイスは毎朝挨拶にくるから。

マークスは伯爵だけどお父様は同じ敷地にマークスの家を建てた。マークスは近衛隊を辞めた時、全てを放棄した。実家の伯爵家も当主の座も。

お父様だけを護る護衛騎士になる為に

マークスはお父様の護衛騎士になる為に平民になる事を選んだ。だからお父様は自分が持っている領地のない伯爵の爵位をマークスに授爵したの。王の執務室に出入りするお父様を護衛するには貴族でないと入れないから。

マークスのお父様に対する忠誠心は凄いの。

確かに幼い頃からルイの話をフランキーに話したわ。今日はね、って。嬉しかった事や楽しかった事、嫌だった事、子供が何でも親に話すのと同じで、ただその朝あった事を話しただけ。

それにフレディの事は前の時があったから。

家族とは別の視線か…

そうかもしれないわね。でも好意とは別。今度は幸せになってほしい、その思いが大きかったかも。フレディへの思いは家族愛の域を出ない。それは前も今も。

血で選ばれた第一王子妃の立場

愛で選んでほしかった第一王子妃

未来を変える、そのせいで確かにフレディを見つめていたかも。でもそれはロザンヌ様と二人の姿をよ?

でもフランキーにはフレディを見つめているように思えたって事なのね。

もしかして!

前の時、フランキーのあの視線、あれは私に向けたものじゃなくて隣に立つフレディやルイに向けたものって事?

嫉妬

自分にはなれない婚約者という立場

自分にはなれない護衛騎士という立場

派閥が出来てフランキーとすれ違う時いつもフランキーとルイは立ち止まり睨み合っていた。私はフランキーには声を掛けなかった。『ルイ行くわよ』そう言って…、あの時のフランキーの視線は嫉妬というよりも殺意に近かった気がする。

フランキーに声を掛けてそれを誰かに見られたら、王太子妃の自覚がないと責められるから。そんな面倒事はもううんざりだった。

勝手にフレディの婚約者にされ、勝手に王太子の座を巡る争いをするフレディとフランキー。

もううんざりだったの

でもその全部が私を愛するがゆえの行動だとしたら…。

重すぎる愛は怖いわね

もしフランキーが王太子になって王になったら王命でも出して妃にしようとしたの?

あの突然思い出した幼い頃の記憶、フランキーの大好きは本当の大好きだったの?

結婚する二人の口付け、あれは本当の意味だったの?

フランキーはずっと私を好きだったの?

だから愛が、憎しみに………



『貴女は知りたい?貴女の最期の時、そしてその後を、貴女は知りたい?』

この女性、覚えているわ、私が0歳に戻る時にも会った女性だわ。

『知りたい。この国がどうなったのか、私は知りたい』

『どんな結末でも?』

『どんな結末でも私は知らないといけないと思うから。全ては私から始まった悲劇、そう思うから…』

『そう…、分かったわ』


パチン!


『ルイ、ルイ、ルイ!ねぇ、ルイ返事をして!ルイ!』

部屋の中に入ってきた一人の黒ずくめの男

『退かせ』

退かされる護衛騎士の体

蹲り目を瞑っている女

男が女に跨り剣を刺した

息絶えた女

男は女を抱きしめた

『愛してる、愛してるグレース。お前を愛してる。

ようやく、ようやく言えた…。ようやくお前に伝えられた…。これでお前は俺のものだ。兄上のものでもルイのものでもない、俺の俺だけのものだ!

約束しただろ?口付けまでして約束しただろ?それなのにお前は約束を破った。約束を破って兄上と婚姻した。

俺の気持ちがお前に分かるか?なぁグレース、俺の気持ちが分かるか?

お前をこんなに愛しているのに、誰よりもお前を愛しているのに、兄上よりもルイよりもお前を愛しているのに…、どうしてお前は俺を愛してくれない。

だから俺は俺の手でお前を永遠に手に入れた。もう誰にも渡さない。もう誰にもお前に触れさせない。

お前の体もお前の命も全部俺の俺だけのものだ!

なぁグレース、お互い死ぬまでずっと一緒だ。もう離れなくていいんだ。俺達はあの時口付けして約束した。これからはずっと一緒にいような。

愛、して、る……、愛し…て、る……グ、レー…ス………』

ポロポロと涙を流しながら女を抱きしめる男

男の涙が女の頬を伝う

まるで一緒に涙を流しているように

『これからは永遠に一緒だ』

口付けをする男

『全員始末してこい』

黒ずくめの男達は部屋を出て行った


隣国に攻め入れられたこの国は、王宮では国王と王妃、王太子は既に亡骸となっていた。王太子の傍らには第二王子妃が自害していた。大公邸では大公と大公妃の亡骸。大公の傍らには大公の護衛騎士が大公妃の傍らには大公妃の護衛騎士が寄り添うように亡骸となっていた。

指令を出す者がいないこの国はあっという間に隣国に落ちた。

公爵は妹を探した。公爵の護衛騎士は弟を探した。妹の私室、護衛騎士の亡骸、その近くにあった乾いた血溜まりの跡。公爵は国中を探した。それでも見つからない妹。


一方で男と女の行方…

王家の墓の中

同じ棺に入る男と女

そして男はまだ女の血が滴る同じ剣で自害した



パチン!


『これが真実。原因は貴女。封印したその心』

女性は私の胸を指差した。

『貴女は誰なの?どうして私だけを戻したの?』

『私を勝利の女神と呼んだ人もいるわ。でも私は貴女の封印した心。

彼は優しいがゆえに心が壊れてしまった。そして愛するがゆえに愛が憎しみに変わり憎しみが殺意になってしまった。

自分の手で貴女を殺し永遠に貴女を手に入れたの。

そして自分と貴女を引き離した全ての人を殺した。

彼を救えるのは貴女。

彼を救ってあげて。フランシスは私が愛したたった一人の人なの。

だから貴女に私を返すわ』



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