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42 嫉妬
しおりを挟む庭園に準備されたお茶とお菓子。
「ロニー兄上今日は家にいないのか?」
「夕方まで帰って来ないってお父様が言ってたわ」
「そうか」
嬉しそうに笑ったフランキー。
「嬉しい?」
「そりゃあそうだろ。何度ロニー兄上に邪魔されたと思ってるんだよ」
そうなの。お兄様は王宮でお茶をする私達の所に来るの。『グレース俺の仕事は終った。帰るぞ』そうやってね。
フランキーは私を家まで送り届けたい。家って言っても馬車で数分よ?なんだったら歩いてでも行ける距離よ?
でもお兄様は一緒の家に帰るんだから一緒に帰ればいいだろって。言ってる事は分かるけど。
『ロニー兄上、二人きりの時間です』
『俺が来るまで二人きりだっただろ?お前は二人きりの時間とは言ったが時間は指定していない。なら数分でも数十秒でも二人きりの時間だ、違うか?』
そう屁理屈よ?でも違うとは言えないわ。フランキーは時間を指定いないもの。口説く時間とは言うけど、数十秒でも口説けるわよね?
『グレースが好きだ』
それだって口説く言葉よ?
「そうね、でもお兄様の邪魔が入るってフランキーだって分かっていたでしょ?」
「それはな。でも少しくらい大目に見てくれてもいいと思わないか?」
「ふふっ、そうね。お兄様らしいといえばお兄様らしいけど」
「なぁグレース、少しは俺の事男として見てくれてるか?
こんな事聞くのは間違ってるけど、……やっぱり気になる…」
「うーん、少しかな?」
「少しか…、うん、でも少しでも男として見てくれてるならいいや。これは俺の頑張り次第だからな」
フランキーと話をしながらお茶をしている。雰囲気は前と変わらない。
「グレースここにいたのか。フランシスと一緒か、ならまた後で出直す」
「いいわよ、どうしたの?」
ルイは私の横に立って私を見た。
「聞いてると思うけど、レーナと正式に婚約した。それだけ伝えたかっただけだ」
「おめでとうルイ。やっととも思うけど二人が婚約して私も嬉しいわ。レーナの事幸せにしてね」
「勿論だ」
「でもルイ、私はルイにも幸せになってほしいの。だからルイもレーナに幸せにしてもらってね?」
「ああ」
普段あまり笑わないルイが幸せそうに笑った。私はその顔を見て微笑んだ。
視線を感じる…あの視線…
ルイが去っていき、
「フランキー、聞きたい事があるの。フランキーの気持ちを知ってるからその視線の意味も分かるわ。でもルイよ?」
「……ルイも、男だろ……」
「性別で言えばね」
「仲良く話すだろ」
「そうね、私の乳兄妹だし護衛騎士だからね」
「お前はいつもルイを護衛騎士だと言う。確かに本当の事だ、ルイはお前の護衛騎士だからな。
……俺はずっと聞かされてきた。お前の騎士はルイだって。だからおれは剣を持った。俺だって剣を振れる、俺だってお前を護れる、そう思って……」
「思って?」
「俺が、俺だけがお前を護りたい」
フランキーは真っ直ぐ私を見つめる。
「だからルイに嫉妬するの?いつも私を護る護衛騎士だから。いつも私の側に立つから、だから?」
「そうだ。たまにルイが憎く思える。でも友だと同士だと思う気持ちも嘘じゃない。ルイの剣の腕に嫉妬もするけどこいつより強くなろうと、こいつには置いていかれないように俺も強くならないとと思える。
でもお前に信頼されているルイを見ると…俺の中にどす黒いものが溜まっていくんだ」
「いつか殺したくなるくらいに?」
「そんな事は考えていない、本当だ」
真剣な顔をしているから本当なんだと思う。
「でも護衛騎士を信頼しないと命は預けられないわ」
「分かってる。今はお前を護るのがルイで本当に良かったと思ってるんだ。初めて声を掛けた時はお前の護衛騎士だから近付いた。どんな奴か知りたくてな。
でもルイにならお前を任せられる。俺がずっとお前の側にいられる訳じゃない。俺が護りたいと言ってもそれが出来ない事くらい俺が一番分かってる。
でも嫉妬は別だろ?俺以外の男がお前の隣に常にいるんだぞ、これとそれは違うんだ」
「ねぇ気になったんだけどどうして今はルイで良かったと思ったの?それは強いから?
確かに私が産まれる前にルイは将来私の護衛騎士に決まったわ。でもルイの気持ちもあるから今後は分からないわよ?違う人になるかもしれないし」
「そうなのか?」
「もしルイが忠誠を誓う気がないならそりゃあ違う人になるわよ」
「誰になるんだ」
「それはマークスが決めるから」
「男…だよな。それってグレースから指定出来ないのか?ほら条件とか、あるだろ?」
「条件?私は護られる方なのよ?別にないわよ。相性はあるだろうけど」
「相性?そう、だよな…」
「どうしたの?フランキー」
フランキーは俯き、顔を上げた。
「できれば妻がいる人か、婚約者がいる人にしてほしいと言ってくれないか」
「それは別にいいけど、でもどうして?」
「妻や婚約者がいれば、グレースを好きにならないだろ?グレースもそいつを好きにならないだろ?」
「わざわざそういう人を好きにならないけど、護衛騎士よ?そういう対象じゃないわ。
ねぇ、今はルイで良かったって、もしかしてルイにはレーナがいるから?レーナの事が好きなのを知っているから?」
フランキーはコクンと頷いた。
「ロニー兄上とは婚姻できないから嫉妬はするけどまだ許せる。けど兄上は許せない。兄上とは婚姻できるからな。それに兄上が婚姻するまでは分からないだろ?いつまた王太子の妃にはお前の方がいいって貴族達が言い出すかもしれない」
「フレディ兄様は私を妹としてしか見てないでしょ。私だってよ?
ねぇ、私の隣にいる男性皆に嫉妬するつもり?」
「当たり前だ」
呆れて物が言えないとはこの事ね…。
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