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40 父と娘

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フランキーとは毎日会っている。

数十分の時もあれば数時間の時もあるけど。

私は今、玄関の前でフランキーの到着を待っている。


「フランキーはまだか?」

「そうみたい」


お父様が様子を見に来た。


「お父様、お父様はお兄様のように反対しないの?」

「反対は散々した」

「そうなの?でも今は反対してないわよね?」

「今はな。でもグレースの意思に背く婚約はさせるつもりはない。だからゆっくり考えろ」


お父様は私の頭を撫でた。


「どうして反対してたの?いとこだから?」

「それもある。いとこといえど婚姻は出来る。でも血が濃くなりすぎるのも良くないと思った。それとフレディの婚約者よりお前の方が立場が上だ。

俺は第二王子の婚約者が第一王子の婚約者より力があるのは避けたいと思った。

それは俺の経験だがな」


私はお父様を見つめた。


「兄上はこの国の公爵令嬢と婚約した。俺は隣国の王女と婚約した。婚約者の立場でいえば立場が上なのは王女だ。それは分かるな?」


私は頷いた。


「俺は王位なんて狙ってもいない。王太子になるのも王になるのも兄上だと思っていた。それでも周りは違う。この国の公爵と隣国、どちらが力が強い」

「隣国ね」

「そうなると俺を王に、そう担ぎ上げる者が出る。王女を娶り第二王子妃の立場では隣国が傍観する訳がないってな。

始めは兄上と俺の婚約者を交換しようって話になった。それこそ隣国が黙ってない。なら初めから第一王子と婚約させれば良かっただろとな。

次に俺を王太子にしようって話になった。そうなると公爵も黙ってはいない。兄弟で対立だ。一つの席を巡る争い。俺はそこまでして王座に座りたいとは思わない。そもそも王太子になるのは兄上だと思っていたんだからな。

兄上も思う所はあったと思う。王太子になる為に俺よりも厳しく指導されてそれを婚約者の立場だけで王太子にはなれない。でも兄上は俺に言った。

『私の婚約者は誰に何を言われても、自分の立場が変わってもソフィーだけだ。それにお前と争ってまで王太子になりたい訳じゃない。だからお前が王太子になれ。私は持てる力全てでお前を支える。ハリソン、この国を民を頼んだぞ』

俺は第二王子だ。フランキーと同じ立場だ。幼い頃から国の為に、だから他国の言語もマナーも兄上よりも学んだ。他国へ行った時にその国の人達の話が分かるように。マナー一つで火種にならないように。粗相は許されない。俺はこの国で民を護るんじゃなくて他国からこの国と民を護る為に学んできた。

それに兄上ほどこの国を民を思っている人はいない。俺はそう思った。兄弟で争う事ほど馬鹿げた話はない。国と民を共に護る者達が国と民を危険にさらし路頭に迷わせるのが王族か?なら何のために跡継ぎは第一王子だと決めた。この国と民を護る為だ。

だから父上に早く兄上を王太子にしろと言った。王太子になれば皆が兄上を認める。そしたら婚約者の立場が何だと言う者はいなくなる。

それに義姉上は兄上の婚約者として亡くなった母上の代理を務める叔母上を拙いながらも手伝い必死に務めていた。

そんな二人から奪いたいとは思わない。二人こそが国王と王妃に相応しいと思った。

だから俺は『誰を娶っても王太子にはならない。それでも何か言うのなら王位継承権を今ここで放棄する』そう皆に伝えた。


まだ幼いフランキーに聞かれた事があった。『ぼくもおうたいしになれますか』と。今でもフランキーが王太子になりたいとは俺も思っていない。でもこの先もし王太子になりたいと望んだら、その時お前が婚約者では俺の時と同じになる。そしたら兄弟で対立か?だからフレディの婚約者より立場が下の方が良いと思った。だから俺は反対した」

「なら何がお父様の心を変えたの?」

「ウルーラとロニーの婚約が決まった時、フランキーが言ったんだ。

『俺は第二王子だから国の為に俺の人生を捧げる覚悟をしている。だからこの先いつでも他国へ行く。でもグレースにだけはそんな人生を歩ませないで下さい。王女でもない王族唯一の女性というだけでグレースにこんな重荷を背負わせないで下さい。国と国の為の婚姻をするのは今後俺だけでいい。だから父上、叔父上、国の為にとグレースを考えているのなら諦めて下さい。グレースはこの国で護って下さい。他国と戦になるのならその前に止めて下さい。それでも戦になるのなら俺が先頭に立って戦います。それでも他国からグレースとの婚約を望んできたのならその前にこの国の者と婚姻させて下さい。

グレースは国の為に自分が婚姻するからと必ず言います。でも俺は嫌だ。グレースを犠牲にしてまでこの国を護っても俺はこの国で生きていけない。好きな女性を犠牲にして得た国に何の価値があるんですか。

だからお願いします。グレースをこの国で必ず護って下さい』

そう頭を下げられた。その前からお前と婚約させてほしいと何度も頭を下げられた。それこそフランキーが子供の頃からな。兄上も説得し俺も反対した。それでも諦められないと何度二人で諭したか分からない。

第二王子として国の為に、そう直面した時でもお前を護る事しか考えていないフランキーに俺は反対するのを止めた。

『グレース次第だ』とな」

「伯父様も?」

「協力はしないが手助けはすると言ったな」

「だから今更食事会だったのね」

「そうだ」


お父様は笑って私の頭を撫でた。



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