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37 家族と恋人との違い
しおりを挟む馬車乗り場まで手を繋いで向かう。
「明日も会ってくれるか?」
「ええ」
嬉しそうに笑うフランキー。
「フランキー嬉しそうね」
「そりゃあそうだろ、グレースと手を繋いでるんだから」
「手?そんなの今更じゃない?」
「手を繋ぐって好きな人に唯一触れる事を許される事だろ?例えグレースが幼い頃から繋いでたから習慣のようだとしても、俺にとってはグレースに触れられる時だった。手を繋ぐ事だけは許されたからな」
「そうね、フランキーの手って安心するの。頑張れって励ましてくれたり泣くなって慰めてくれたり、フランキーの手から『俺がいる、大丈夫だ』って伝わるの。それがいつも私を助けてくれて支えてくれたわ。それは幼い頃からよ?
だから私はフランキーと手を繋ぐのは好きなの」
「そうなのか?」
「そうなの」
「なら兄上は?」
「兄様?兄様は、そうね、安心というよりは支援かしら。兄様と手を繋いだのなんて幼い頃だけだもの。私が転けないように支える為だけ。それって支援じゃない?そこに何も思わないわよ」
「そうか、なら良かった」
「どうして兄様なの?」
「グレースは兄上を好きなのかと思ってたんだ」
「私が兄様を?それはないわよ。家族としては好きよ?でも家族以上の気持ちはないわ」
「兄上に頼ったりするだろ?」
「それは甘えでしょ?兄様だと思うから甘えて頼るの。兄様だって私を妹だと思ってるから護ってくれてるんでしょ?お兄様も同じよ?」
「そうだけど」
「でもそれはフランキーにも言えるのよ?フランキーにどれだけ甘えて頼ってると思うの?」
「そうだけど、俺は俺だけに甘えて頼ってほしいんだ」
「きっとね、妹はいつまでも妹なの。私がやめてよって言ってもお兄様も兄様も私の頭を撫でるわ。それに私の前に立って私を護るの。私はそれはそれで嬉しいのよ。それに今は変わらないでいてほしいとも思うの。
だって仲が良いからできる事なのよ?仲が悪かったらそんな事もしないもの」
前の時、まだ仲が良かった頃はフレディも私の頭を撫でていた。だんだん私達の関係が変わって仲が悪くなった時、顔を見る事も話す事もしなくなった。お互い興味もなくなった。
お兄様とも私は距離を置いた。
だから今はまだこのままでいい。
溺愛するお兄様、見守ってくれる兄様、甘える私。
仲の良い兄と妹、今はこの関係のままでいい。
そこには家族愛以外の感情はないから。
今後はどうなるのか分からない。お兄様も兄様も婚姻して子供が出来れば変わるかもしれない。
私だって婚姻して子供が出来たら変わるかもしれない。
それはその先にいってみないと分からない。
「それにお兄様や兄様に甘えて頼るのは家族だからでしょ?お父様や伯父様に甘えて頼るのと一緒。
可愛いと思えば頭を撫でたくなるし泣いていれば慰めようと抱きしめる。怖くて震えていれば膝の上に乗せて宥めようとする。
でも家族と恋人は違うと思うの。私もその違いは分からないけど、多分よ?
家族は受け入れるもので恋人は願うものじゃないかしら」
「願うもの?」
「手を繋いでほしい、抱きしめてほしい、頭を撫でてほしい、自分がしてほしい時に『やって』ってお願いするのが恋人に対する甘えや頼るって事じゃないかしら。
何か理由がなくてもしてほしい事。でもそれって恋人じゃないと嫌でしょ?
そりゃあお父様やお兄様は私がお願いしたらしてくれるわ。でも家族以外で触れられるのは私は嫌よ。
でも好きな人なら触れたいと思うだろうし触れてほしいと思うでしょ?」
「そうだな」
「だから家族と恋人の甘えや頼るのは別ものなの。
ねぇフランキー手を離して」
「え?嫌だ」
「いいから早く」
フランキーはしぶしぶ手を離した。
「家族ならこれから手を繋がないわ。私はもう幼くないもの。一人で歩いても転ばない。
フランキー手を繋いで」
フランキーは私の手を繋いだ。
「こうやってお願いするのが恋人だと思うの。繋いでいた手が離れたから繋ぎなおす。隣に並んだら自然と手を繋ぐ。
そうじゃない?」
「ああ」
「違い分かった?今私はフランキーに甘えたの」
「でも今までとあまり変わらないよな?」
「例え話でしょ?さっきも言ったように私フランキーと手を繋ぐの好きなの」
「そうか、なら、」
フランキーは繋いでる私の手の甲に口付けした。
「フランキー」
「俺の家族と恋人との違いはこうだ。嫌か?」
「嫌も何も驚いたわ」
「でも俺はグレースに口付けしたいと思う好きだならな。嫌うか?」
「嫌うも何も…」
「好きな女に触れたい、口付けしたい、そう思うだろ?」
本心を見せてとは言ったけど…。
そういうものなの?
私の知ってる男女のそれは義務だったから。その義務の中に口付けも含まれていたもの。
それに私の知識は主にレーナだもの。
レーナが前に言っていたの。好きな人なら触れたいと思うし触れてほしいと思うって。それにルイと手を繋いだとは聞いていたしルイがレーナを抱きしめてる所も見た事がある。
だけど口付けは聞いてないわ。
世の恋人達は口付けをするの?
あれ?手の甲は挨拶みたいなもの…よね?ほら、貴女はお美しいって手の甲に口付けした、マダムの手の甲に口付けしたって書いてあったわ。
唇への口付けは男女のそれの付属みたいなものでしょ?何度も重なる口付け、それはいつも男女のそれの時だったもの。
「ねぇフランキー、ちょっと聞いていい?
これって挨拶よね?」
「はあ!?」
違ったみたい…
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