上 下
35 / 55

35 口説かれます

しおりを挟む

お茶の準備が出来て私達は向かい合って座った。


「グレース、俺はお前が好きだ。物心ついた時からずっと好きだ。

でもお前は俺のこと男としては見てないだろ」

「男性だとは思っているわよ。でもそういう意味の男性とは見ていないわ。それは家族だと思っているから。それに私達はいとこだからよ」

「いとこでも婚姻出来る」

「それは知ってるわ。でも私にはフランキーは大切な家族なの」

「俺は家族は嫌だ。俺は夫婦になって家族になりたい。

だから一度俺を男として見てほしい」

「直ぐには無理よ?」

「分かってる」


目の前でお茶を飲んでるフランキー。

私はフランキーを見つめる。


フランキーとは幼い頃からずっと一緒にいた。フレディよりも一緒にいる時間は多かった。ルイとも毎日顔を合わせていたとはいえ過ごす時間はフランキーが一番長い。

フランキーが私に向ける思いは私と同じで家族だと思っていた。お兄様は勿論だけどフレディも私を妹だと思ってる。それは言葉や態度がそう物語っているから。

フランキーもそうだと思っていた。家族のようで兄妹のようで友のようで、そして同士。

お互い支え合いながら助け合いながら競い合いながらこれまで切磋琢磨してきたから。

性別という意味ではフランキーは男性だわ。だからいつか離れる時がくる、それを寂しいと思った。お兄様の様にずっと側で支えたいと思っても私にはそれができないから。

でもそれは妻としてではないの。

フランキーも幸せになってほしい、孤独にはさせない、そう思ってるけど…、私はフランキーを幸せにはできないしまた孤独にさせる。

変えようと思った未来

でも前の時みたいに家族愛はどこまでいっても家族愛なの。それは私が一番分かってる。それが及ぼす影響も。

ここで家族愛でも愛はあるからとフランキーの手をとっても私達は形だけの偽りの夫婦になる。

それはフランキーも私も不幸になるわ

フランキーが私を女性として好きでも私は家族として好き。その差は大きく開いてフランキーの愛はいつしか憎しみに変わる。

どれだけ思っても返して貰えない自分と同じ思い。自分と同じ分だけ相手にも思ってほしい。

でも私の心は私のもの

好きになれと強要されて好きになるものではないもの。

でも私は前の時フレディとの関係を築く努力を怠った。婚約者としても夫婦としても。家族から婚約者として新たに始めようとしてくれたフレディの気持ちを拒否した。

それは私がこれから反省する事

婚約者じゃなくても人間関係も同じ。これから関係を始めようとする人に近寄るには多少の努力も必要だと思うの。自分の意見ばかり言うのは駄目。相手の意見を聞くそれも大事。そうしてお互い近寄り人間関係は築かれる。

だから家族だから男性とは見えない、そうフランキーを拒絶するのは違うわね。口説く時間を過ごして、それでもフランキーの事は家族にしか思えないと断ってもフランキーは納得する。

でも初めから断ればそれはフランキーを闇へ落とす。

ん?待って

経緯は違っても前の時と今と好きになる人は変わらない。

そうよね?

だから私は好意という意味での好きな人がいないの。

でもフランキーは私が好き

なら前の時もフランキーは私が好き?

だから報われない思いに闇に落ちた?

婚約したら婚姻、それは何かがない以上その流れだから。


「ねぇフランキー、正直に答えてほしいんだけど」

「ん?」

「フランキーは王太子になりたいの?

あっ、それとフランキーは私を口説きたいのよね?」

「ああ、口説きたい」

「ならこれから私が答えてと質問した事には正直に答えてほしいの。勿論嘘をついても私には分からないわ。でも嘘をつくなら私はもうフランキーとは会わない。

嘘をつくような人とは関係を築けないもの。だから私もフランキーに嘘はつかない。正直にその時の気持ちを伝えるわ。だからフランキーも私に聞きたい事は聞いてくれていいのよ」

「正直に言って俺を嫌わないか?」

「前にも言ったようにフランキーはフランキーだもの。それにどんな残酷な事を思っていたとしてもそれも貴方の一部だもの。それで嫌わないわ。

それで?フランキーは王太子になりたいの?」

「なり、たいと思ってた」

「どうして?」

「お前小さい頃から王女教育をしていただろ?」

「そうね、唯一の女児だったから」

「その時聞いたんだ。兄上はいずれ王太子になる。王太子の婚約者はお前にするべきだって…。俺が王太子になればお前は俺の婚約者になる、そう幼心にそう思った。

兄上の婚約者になんかしたくなかった。だからそう思った時もある。

それに、兄上は好きな人と婚約できて第二王子だからって俺は国の為に好きでもない人と婚約するのは嫌だった」

「ウルーラお姉様の事?」

「あの時はそうだけど、それはこれからも付き纏う。俺が第二王子な限りずっとだ」

「そうね、それは私もだけど…」


国の為に、それはフランキーも私も同じ。

他国と戦になるような亀裂が生じた時は私かフランキーかどちらかが相手の王子か王女と婚姻する。

お姉様のように例え国の為でも最後は自分の意思で嫁ぎたい、そう思う。でも実際はそこまで強くないわ。

お姉様はお兄様を好みだからと言ったけどあれは本当かもしれないし嘘かもしれない。第一王子を王太子にしない為、第一王子から国を護る為、その気持ちから出た言葉だと私は思う。

今は本当にお互い好きな人にはなったけど。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】バッドエンドの落ちこぼれ令嬢、巻き戻りの人生は好きにさせて貰います!

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢エレノアは、容姿端麗で優秀な兄姉とは違い、容姿は平凡、 ピアノや刺繍も苦手で、得意な事といえば庭仕事だけ。 家族や周囲からは「出来損ない」と言われてきた。 十九歳を迎えたエレノアは、侯爵家の跡取り子息ネイサンと婚約した。 次期侯爵夫人という事で、厳しい教育を受ける事になったが、 両親の為、ネイサンの為にと、エレノアは自分を殺し耐えてきた。 だが、結婚式の日、ネイサンの浮気を目撃してしまう。 愚行を侯爵に知られたくないネイサンにより、エレノアは階段から突き落とされた___ 『死んだ』と思ったエレノアだったが、目を覚ますと、十九歳の誕生日に戻っていた。 与えられたチャンス、次こそは自分らしく生きる!と誓うエレノアに、曾祖母の遺言が届く。 遺言に従い、オースグリーン館を相続したエレノアを、隣人は神・精霊と思っているらしく…?? 異世界恋愛☆ ※元さやではありません。《完結しました》

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」  ぱさっ。  伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。 「きちんと目は通してもらえましたか?」 「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」  ざわざわ。ざわざわ。  王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。 「──女のカン、というやつでしょうか」 「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」 「素直、とは」 「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」  カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。 「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」 「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」  カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。 「それではどうぞ、お好きになさいませ」

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

時を戻して、今度こそ好きな人と幸せになります

編端みどり
恋愛
王女カトリーヌは、婚約の王子から冤罪をかけられて婚約破棄をされた。やった! あちらからの破棄なら慰謝料も取れるし、ようやく国に帰れるわ! そう思っていたのに、婚約者はわたくしを地下牢に閉じ込めて一生仕事だけさせると言い出した。逃げようとするカトリーヌを守って騎士が死んだ時、王族の血族のみが使える魔法で過去に戻る。 過去に戻ったカトリーヌは、今度こそ幸せになれるのか?!

処理中です...