上 下
34 / 55

34 難攻した話し合い

しおりを挟む

「ではグレース嬢本人が受け入れてくれるか確認をして下さい、陛下」

「陛下、殿下からの申し出を妹に拒否できるとお思いですか。妹はか弱き女性です」

「ロナルド大公子、ロナルド殿は兄であって本人ではありません」

「殿下、私は兄だからこそ妹を護る権利があります」


フランキーなんて立ち上がってお兄様も立ち上がってお互い顔を見合わせてるわ。


「ではロナルド殿、グレース嬢が断った際皆に責められなければ二人きりで口説く時間を作ってもいい、そう捉えても良いという事ですね」

「年頃の男女が二人きりなのは些か問題だと思います。もし殿下がどうしても妹を口説きたいと言うのなら私も同席します」

「グレース嬢も兄の前で私に口説かれるのは恥ずかしいと思います。それに口説く為に懇願するんですからそれを黙って見ててくれますか」

「懇願するとはいえ妹を護る為に多少口を挟みますが、私が隣にいて口説けないと言うのなら諦めたらどうですか、フランシス殿下」

「ロナルド、そのくらいに」

「アルフレッド殿下は口を挟まないで頂きたい。これはグレースの家族の私とフランシス殿下の問題です」

「ロナルド、皆の前だという事を忘れるな」

「ではアルフレッド殿下も無理を言うなと口添えして頂けませんか?フランシス殿下は今は騎士フランシスだとしても殿下の弟君です」


そうね、お前の弟だろ、黙らせろ、そう言うわよね。


「フランシス、他の褒美はないのか」

「殿下、褒美を変えるつもりはありません」

「分かった、私も同席しよう」

「それでは褒美ではなくて親族の集まりです」


それもそうね。いとこの集まりだわ。

お父様を見ると両眉を上げて『俺は中立だ』と言っている。どっちの肩も持たないって事ね。

フレディもお手上げって感じね。


「両者の言い分は分かった。では本人に確認しよう。本人が受け入れた場合、褒美とする。だが、本人が受け入れない場合は他の褒美に変えよ、いいなフランシス」

「はい陛下」

「ロナルドもいいな」

「はい陛下」

「グレース」

「はい陛下」

「お主はフランシスの褒美は褒美に値するか」


フランキーは私をずっと見ている。

フランキーだけじゃなくてこの会場全員が私を見ているわね。

前の時の私なら『謹んでお受けします』そう言ったわ。

でも今の私は違う。


「陛下、発言をお許し頂けますか」

「なんだ」

「もし褒美を受け取りフランシス殿下と二人でお会いしてもそれは婚約にはなりませんか?」

「婚約は本人同士同意の場合だ」

「では、お断りするかもしれませんがその場合私の立場はどうでしょう」

「今と変わらない」

「それは陛下の臣下も同じ意見だと受け取りますがよろしいでしょうか」

「ああ」


断っても私達はいとこ。いとこなら今後会ったとしても変な噂話にもならないわね。


「皆様の目に付く所でお会いする事もあるかと思います。後に咎められる事はありますか」

「それはない。もしそのような事があれば私が責任を持とう」


なら責められる事はないわね。もし私を責めたら伯父様が対処してくれる訳だし。


「最後に、フランシス殿下、これは褒美ですか?」

「褒美だ」


高い物じゃないけど、誰かと過ごす時間は価値のあるもの。

それに優勝したら褒美をあげると約束したのは私。


「陛下、褒美を受け入れます」

「そうか、受け入れるか」


伯父様のホッとした顔。


「勝者騎士フランシスの褒美は大公女グレースを口説く二人だけの時間にする」

「ありがとうございます陛下」


はあぁ、ようやく終ったわ…。

フランキーは階段を下り私の席まで来た。


「グレース、見てたか、俺勝ったぞ」

「そうね、おめでとうフランキー」


嬉しそうに笑うフランキー。

フランキーは私の手を握った。


「褒美はもう貰った。なら今から二人だけの時間でもいいよな?」

「今から?お祝いとかあるんじゃないの?」

「俺は今すぐにお前を口説きたいんだ」

「お母様」


私はお母様に確認した。


「フランキーが自分の手で得た時間よ。そして貴女はそれを受け入れた。

フランキー頑張りなさいよ」

「叔母上、ありがとうございます。グレースを連れて行ってもいいですか?」

「ええ、でもグレースを泣かせるような事はしないでね」

「それは勿論」

「でもお兄様が…」

「ロニーは任せなさい」


お父様の顔を見たら『任せろ』そう言っていた。


「グレース行くぞ」


怖くてお兄様の顔は見れないけどお父様とお母様に任せておけば大丈夫ね。

フランキーに手を引かれ私は会場を後にした。

後ろでは『ルイ』とお兄様の声が聞こえた。でもきっとルイはマークスとアルロに止められる。


いつもの庭園

急いで準備するメイドの姿


「準備が出来るまで散歩でもするか」

「それはいいけど」


手を繋いで庭園を散歩する。


「なあグレース、俺、成果出しただろ?」

「成果?」


前に話してたのこの事だったの?


「お前が認めさせるには成果を残すしかないって言ったんだぞ」

「言った、わね…。私が言ったわ」

「それに貴族達が集まる場所で褒美を貰った」

「そうね、それも私が言ったわ」

「な?」


そう言って笑ったフランキー。

なら認めて貰えない婚約を認めてもらうには、それは、

私?

フランキーがずっと好きだったの、

私なの?


幸せそうに笑うフランキー。

フランキーのその笑顔は幼い頃私に向けていた笑顔そのもの。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

わたしとの約束を守るために留学をしていた幼馴染が、知らない女性を連れて戻ってきました

柚木ゆず
恋愛
「リュクレースを世界の誰よりも幸せにするって約束を果たすには、もっと箔をつけないといけない。そのために俺、留学することにしたんだ」  名門と呼ばれている学院に入学して優秀な成績を収め、生徒会長に就任する。わたしの婚約者であるナズアリエ伯爵家の嫡男ラウルは、その2つの目標を実現するため2年前に隣国に渡りました。  そんなラウルは長期休みになっても帰国しないほど熱心に勉学に励み、成績は常に学年1位をキープ。そういった部分が評価されてついに、一番の目標だった生徒会長への就任という快挙を成し遂げたのでした。 《リュクレース、ついにやったよ! 家への報告も兼ねて2週間後に一旦帰国するから、その時に会おうね!!》  ラウルから送られてきた手紙にはそういったことが記されていて、手紙を受け取った日からずっと再会を楽しみにしていました。  でも――。  およそ2年ぶりに帰ってきたラウルは終始上から目線で振る舞うようになっていて、しかも見ず知らずの女性と一緒だったのです。  そういった別人のような態度と、予想外の事態に困惑していると――。そんなわたしに対して彼は、平然とこんなことを言い放ったのでした。 「この間はああ言っていたけど、リュクレースと結んでいる婚約は解消する。こちらにいらっしゃるマリレーヌ様が、俺の新たな婚約者だ」  ※8月5日に追記させていただきました。  少なくとも今週末まではできるだけ安静にした方がいいとのことで、しばらくしっかりとしたお礼(お返事)ができないため感想欄を閉じさせていただいております。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

私が、幼なじみの婚約者で居続けた理由は好きな人がいたから……だったはずなんですけどね

珠宮さくら
恋愛
ルクレツィア・ソラーリは、物心がつく前から大人というものに期待していなかった。その代表が、両親だった。 それが一変したのが、婚約者となることになった子息の父親だった。婚約者が年々残念になっていく中で、それでも耐えていた理由は好きな人がいたからだったのだが……。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます

かずきりり
恋愛
もう、うんざりだ。 そこに私の意思なんてなくて。 発狂して叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。 貴女に悪意がないのは十分理解しているが、受け取る私は不愉快で仕方なかった。 善意で施していると思っているから、いくら止めて欲しいと言っても聞き入れてもらえない。 聞き入れてもらえないなら、私の存在なんて無いも同然のようにしか思えなかった。 ————貴方たちに私の声は聞こえていますか? ------------------------------  ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

処理中です...