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22 王宮で過ごす最後の日
しおりを挟む13歳になってようやく教育が終わった。
少しずつご褒美の時間をはさみながら無理のない範囲でコツコツと。
前の時はフレディとまだ婚約も決まっていない時から王太子妃王妃教育が私の教育計画に組まれていたから休みなんてなかった。それにこの年齢の時は王太子妃教育も既に始まっていた。毎日厳しく無理をしてでも、それが日常だった。
フランキーも一足先に終わり今は王宮の騎士団に入団して騎士達と過ごしているわ。
勉強が終わるとたまに見学に行くの。『来るな』って言われているからこっそり覗いているんだけどね。
騎士達と笑い合ってる姿を見ているとこれはこれでフランキーの幸せなのかなと今は思うの。婚約や婚姻だけが幸せじゃないもの。
フランキーにとっての幸せは前とは違った未来の形なのかもね。
王宮で過ごす最後の日、その日フランキーは部屋の前で私を待っていた。
「お茶、しないか」
「そうね、久しぶりだし、これが最後だしね」
「お茶くらいいつでもできるだろ」
私はただ笑っただけ。
いつでも、それはもうできないの。私が王宮へ来る用事はもうないし、フランキーが私の家に来たら噂話が広がるわ。
いとこだとはいえフランキーはもう来年には成人するもの。
この国は15歳が成人。
他の国だと15歳になる年の令息や令嬢を集めて夜会を開く国もあるけど、この国は15歳の誕生日に国王に謁見して報告し成人として認められるの。
成人として認められた後の夜会が夜会始めとなり令息は白い正装、令嬢は白いドレスを着るのよ。その時にファーストダンスを踊る相手は婚約者。ダンスを踊る事で周りに教えるの。
婚約者がいない人は親やきょうだいが踊るわ。
お兄様の時はお姉様がこの国へ招待されたの。王太子の伯父様と一緒に。王女としてだけどお兄様の婚約者を皆に教える為だと思うわ。だってお兄様の夜会始めはフレディの誕生会の夜会だったから。お姉様の国では成人してなくても13歳を過ぎれば夜会の出席は出来るらしいわ。
だからお兄様のファーストダンスの相手はお姉様よ。
フレディは王妃様、伯母様が踊ったわ。ロザンヌ様は夜会に出席できないから。
ファーストダンスか違うか、それを見極めるのは赤色の花よ。令嬢は耳にかける人が多いわね。でもダンスで落ちないように結ってる髪にさすようにするみたい。令息は胸元にさす人が多いわ。
赤色の花が無ければ2回目、だから婚約者とは間違われないの。
その赤色の花はダンスを踊った相手が近くの花瓶に挿すのよ。『これであなたも夜会に出席できる成人よ』って。
王宮の夜会だけじゃなくてどこの家の夜会でも色とりどりの花を花瓶に挿して飾るでしょ?花を飾らない夜会はないもの。
花瓶の花を夜会に出席する人達に例えたの。その仲間入り、そういう意味があるのよ。
でもお茶会でも花は飾るんだけどね。何もなくても家では花が飾ってあるわ。
だから『大人の仲間入りを皆で祝いましょう』その意味も込められているの。だから夜会を開催して招待客の中に成人になった人がいる時は少し豪華なの。飾り付けも食事も。
だから成人してからの夜会は必ず他家で。でも王の子、フレディとフランキーだけは誕生会を王宮で開くわ。他国を招くから。
フランキーも伯母様とファーストダンスを踊る事になりそうね。
成人した男性が未婚の女性の家に行った、いとことはいえ婚姻はできるんだから変に勘ぐる人がいるわ。
いくら当事者達がいとこだから、友達だからと言っても婚約者だと間違われる事は実際あるの。婚約者じゃなくても婚約するのか、って。
ほら、人ってそういうの好きじゃない。あの二人、って噂するのが。それが本当でも嘘でも事実よりも噂話で良いのよ。噂は所詮噂なんだから軽く話せるもの。
当事者は軽くでは済まされないけどね。
だからそんな噂になっては駄目なの。
フランキーといつもの庭園で最後のお茶をしたわ。
私達はもう子供から大人になる時期がきたの。子供のままではもういられない。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「なに?」
「認めてもらえない婚約を認めさせるにはお前ならどうする?」
「フランキー、ついに?誰誰?」
「真剣に答えろよ」
「もう…。そうね、認めざるを得ない状況を作る、かしら。貴族が集まる時とか、何かの褒美とか?
ほら今は戦がないけど昔戦続きの時に勝利へ導いた平民の騎士に褒美として男爵を授与したって習ったじゃない?それに戦に貢献した騎士に一代限りの騎士伯とか。
褒美なら伯父様だって認めざるを得ないでしょ?」
「褒美な…」
「後は、ほら成人したら夜会始めがあるじゃない。その時にファーストダンスを踊ったら?本当はマナー違反だけど婚約者だと皆が認識するでしょ?その認識を本当にすればいいんじゃない?
ねぇ、フランキーの好きな人、男爵令嬢なの?それとも子爵令嬢?もう、誰か教えてよ。
でも、伯父様も伯母様も反対するかしら。フレディ兄様の相手なら反対するのも分かるのよ?妃にはやっぱり後ろ盾は必要だもの。王太子、国王の妃には家柄が必要だわ。でもフランキーは第二王子とはいえ後ろ盾は別に必要ないと思うんだけど。
だってフランキー国王になりたい訳じゃないでしょ?
王子妃といっても貴族令嬢なら許容範囲だと思うのよね…。それに後ろ盾が強過ぎても問題だと思うの」
前の時、フランキーにはロザンヌ様の実家の公爵家が後ろ盾になった。フランキーを王太子に、そう声を上げたのは公爵。公爵を中心に第二王子派閥が出来上がった。
フランキーが王太子の椅子をフレディから奪いたい、その思いがあったからこそではあるけど。
後ろ盾だけでいったら私の方がロザンヌ様より上だもの。
フランキーが誰と婚約したいのか分からないけど、フランキーの意思ではなく相手の実家が力を持ってる家ならフランキーを祭り上げる事を考えてもおかしくないわ。
でもロザンヌ様の公爵家と対抗できるほどの力を持ってる貴族っているかしら。
未婚の公爵令嬢、婚約者もいなくて…、
いたわね。
伯母様に憧れて伯母様の侍女になりたいと志願した方。今も伯母様の侍女として側で仕えているわ。
一生独身を貫く、そう聞いたわ。
確か…、フランキーより何歳年上かしら。
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