0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
22 / 55

22 王宮で過ごす最後の日

しおりを挟む

13歳になってようやく教育が終わった。

少しずつご褒美の時間をはさみながら無理のない範囲でコツコツと。

前の時はフレディとまだ婚約も決まっていない時から王太子妃王妃教育が私の教育計画に組まれていたから休みなんてなかった。それにこの年齢の時は王太子妃教育も既に始まっていた。毎日厳しく無理をしてでも、それが日常だった。


フランキーも一足先に終わり今は王宮の騎士団に入団して騎士達と過ごしているわ。

勉強が終わるとたまに見学に行くの。『来るな』って言われているからこっそり覗いているんだけどね。

騎士達と笑い合ってる姿を見ているとこれはこれでフランキーの幸せなのかなと今は思うの。婚約や婚姻だけが幸せじゃないもの。

フランキーにとっての幸せは前とは違った未来の形なのかもね。


王宮で過ごす最後の日、その日フランキーは部屋の前で私を待っていた。


「お茶、しないか」

「そうね、久しぶりだし、これが最後だしね」

「お茶くらいいつでもできるだろ」


私はただ笑っただけ。

いつでも、それはもうできないの。私が王宮へ来る用事はもうないし、フランキーが私の家に来たら噂話が広がるわ。

いとこだとはいえフランキーはもう来年には成人するもの。

この国は15歳が成人。

他の国だと15歳になる年の令息や令嬢を集めて夜会を開く国もあるけど、この国は15歳の誕生日に国王に謁見して報告し成人として認められるの。

成人として認められた後の夜会が夜会始めとなり令息は白い正装、令嬢は白いドレスを着るのよ。その時にファーストダンスを踊る相手は婚約者。ダンスを踊る事で周りに教えるの。

婚約者がいない人は親やきょうだいが踊るわ。

お兄様の時はお姉様がこの国へ招待されたの。王太子の伯父様と一緒に。王女としてだけどお兄様の婚約者を皆に教える為だと思うわ。だってお兄様の夜会始めはフレディの誕生会の夜会だったから。お姉様の国では成人してなくても13歳を過ぎれば夜会の出席は出来るらしいわ。

だからお兄様のファーストダンスの相手はお姉様よ。

フレディは王妃様、伯母様が踊ったわ。ロザンヌ様は夜会に出席できないから。

ファーストダンスか違うか、それを見極めるのは赤色の花よ。令嬢は耳にかける人が多いわね。でもダンスで落ちないように結ってる髪にさすようにするみたい。令息は胸元にさす人が多いわ。

赤色の花が無ければ2回目、だから婚約者とは間違われないの。

その赤色の花はダンスを踊った相手が近くの花瓶に挿すのよ。『これであなたも夜会に出席できる成人よ』って。

王宮の夜会だけじゃなくてどこの家の夜会でも色とりどりの花を花瓶に挿して飾るでしょ?花を飾らない夜会はないもの。

花瓶の花を夜会に出席する人達に例えたの。その仲間入り、そういう意味があるのよ。

でもお茶会でも花は飾るんだけどね。何もなくても家では花が飾ってあるわ。

だから『大人の仲間入りを皆で祝いましょう』その意味も込められているの。だから夜会を開催して招待客の中に成人になった人がいる時は少し豪華なの。飾り付けも食事も。

だから成人してからの夜会は必ず他家で。でも王の子、フレディとフランキーだけは誕生会を王宮で開くわ。他国を招くから。

フランキーも伯母様とファーストダンスを踊る事になりそうね。


成人した男性が未婚の女性の家に行った、いとことはいえ婚姻はできるんだから変に勘ぐる人がいるわ。

いくら当事者達がいとこだから、友達だからと言っても婚約者だと間違われる事は実際あるの。婚約者じゃなくても婚約するのか、って。

ほら、人ってそういうの好きじゃない。あの二人、って噂するのが。それが本当でも嘘でも事実よりも噂話で良いのよ。噂は所詮噂なんだから軽く話せるもの。

当事者は軽くでは済まされないけどね。

だからそんな噂になっては駄目なの。



フランキーといつもの庭園で最後のお茶をしたわ。

私達はもう子供から大人になる時期がきたの。子供のままではもういられない。


「なぁ、一つ聞いていいか?」

「なに?」

「認めてもらえない婚約を認めさせるにはお前ならどうする?」

「フランキー、ついに?誰誰?」

「真剣に答えろよ」

「もう…。そうね、認めざるを得ない状況を作る、かしら。貴族が集まる時とか、何かの褒美とか?

ほら今は戦がないけど昔戦続きの時に勝利へ導いた平民の騎士に褒美として男爵を授与したって習ったじゃない?それに戦に貢献した騎士に一代限りの騎士伯とか。

褒美なら伯父様だって認めざるを得ないでしょ?」

「褒美な…」

「後は、ほら成人したら夜会始めがあるじゃない。その時にファーストダンスを踊ったら?本当はマナー違反だけど婚約者だと皆が認識するでしょ?その認識を本当にすればいいんじゃない?

ねぇ、フランキーの好きな人、男爵令嬢なの?それとも子爵令嬢?もう、誰か教えてよ。

でも、伯父様も伯母様も反対するかしら。フレディ兄様の相手なら反対するのも分かるのよ?妃にはやっぱり後ろ盾は必要だもの。王太子、国王の妃には家柄が必要だわ。でもフランキーは第二王子とはいえ後ろ盾は別に必要ないと思うんだけど。

だってフランキー国王になりたい訳じゃないでしょ?

王子妃といっても貴族令嬢なら許容範囲だと思うのよね…。それに後ろ盾が強過ぎても問題だと思うの」


前の時、フランキーにはロザンヌ様の実家の公爵家が後ろ盾になった。フランキーを王太子に、そう声を上げたのは公爵。公爵を中心に第二王子派閥が出来上がった。

フランキーが王太子の椅子をフレディから奪いたい、その思いがあったからこそではあるけど。

後ろ盾だけでいったら私の方がロザンヌ様より上だもの。

フランキーが誰と婚約したいのか分からないけど、フランキーの意思ではなく相手の実家が力を持ってる家ならフランキーを祭り上げる事を考えてもおかしくないわ。

でもロザンヌ様の公爵家と対抗できるほどの力を持ってる貴族っているかしら。

未婚の公爵令嬢、婚約者もいなくて…、

いたわね。

伯母様に憧れて伯母様の侍女になりたいと志願した方。今も伯母様の侍女として側で仕えているわ。

一生独身を貫く、そう聞いたわ。

確か…、フランキーより何歳年上かしら。



しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

処理中です...