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あっという間にお兄様と王女様の婚約が決まった。

でも王女様はまだ成人していない。本人の意思とはいえ勝手に婚約できるとは思えない。

そう思っていたんだけど…


「私が今回何の為に伯父様を連れて来たと思ってるの?」


そう笑った笑顔は晴れやかだった。

現国王の兄、第二王子だった方は未婚で唯一の成人王族。それに現在王位継承権一位。今は王太子。

馬鹿と言っていた第一王子や他の王位継承権を持っている者達はまだ成人していない。その子達が成人したら王太子も譲り継承権を放棄するそうだけど、今は放棄していない。

今回、国と国の婚約に王女様の保護者として同行した。外交では王の権限と同等の権限を持つ。

お父様もそう。お父様の意思は王の意思。

この国の王とルータン国の王太子、お兄様の保護者のお父様、後はお兄様と王女様、婚約できる条件は揃っている。

これは正式な婚約

書類を作成し晴れて?お兄様と王女様は婚約した。

断るつもりだったとはいえ、国王自らこの国に来なかった事が痛手となった。もし来ていたら反対できたもの。

王女様は色々想定して今回この国へ来た。同行者に父親ではなく伯父様を選んだのも成人王族で王太子だから。それに王太子は今回王女様の意を汲んで口出ししないと決めていたから。

その王太子も第一王子に王位を継がせたくないらしい。あれだけ身内に馬鹿馬鹿言われてる第一王子ってどんな人か少し気になるわ。

会いたくはないけど。


お兄様と婚約が決まったのが帰る前の日。

私に会いたいとお願いしていてもなかなか会わせてもらえなくて王太子の伯父様の街案内としてフレディとロザンヌ様を指名し、代わりに私とお兄様があの日補佐役になった。

帰る前、私の家に立ち寄った王女様は馬車に乗るまでも乗ってからも私の手を離さなかった。


「ウルーラお姉様、またお越し下さいね。お待ちしてますから」


お姉様は『うっ』と言ってぼそっと『このまま連れて帰ろうかしら』と言った。

そしたらお兄様が私を抱き寄せて馬車の扉を閉めた。


「お兄様、失礼よ。お兄様の婚約者なのに」

「それはそれだ」


それからお姉様を乗せた馬車を見送った。


あれから家にはお姉様からの恋文が届く。

お兄様ではなく私に。

お兄様には『元気にしてる?』その一文だけ。

でも知ってるのよ。時々お兄様宛にも恋文が届いている事を。だってお兄様、お姉様の恋文を読みながら嬉しそうなんだもの。

何が書いてあるのか聞いたら『定期連絡だ』なんて素っ気ない態度をしていたけど、幸せそうな顔をしているの。

少し前の時とは違うけど、それでもお兄様と婚約したお姉様。

またお姉様の妹になれて私は嬉しいわ。


そうそう、お姉様は時々贈り物も贈ってくれるの。私に似合いそうだからって。だからお礼の手紙を送ったらお返しの手紙はとても分厚かったわ。


お兄様と婚約して年に数回こっちへ遊びに来るの。

お兄様と婚約して次に来た時なんて、

『お父様のあの残念そうな顔、クククッ、伯父様と笑うのを堪えるのに必死だったわ』

って話しながら笑っていたわ。

私が一度お父様とお兄様の外交に付いてルータン国へ行きたいと言った時はものすごく止められたの。

『あの馬鹿の馬鹿がうつるから絶対に来ては駄目よ。それにあの馬鹿を見たらグレースのその綺麗な瞳が腐るわ。断固私は阻止するから』

そこまで言われたら行きたいとも思わなかったわ。お姉様にはこの国で会えるもの。

そうそう、それからお兄様が18歳になったら婚姻式を挙げる事になったの。

この国は婚姻するのは16歳で出来るんだけど爵位を継げるのが18歳から。

お父様が持ってる一つの爵位、公爵を譲り受けてから婚姻する事になったの。王女のお姉様を娶るんだもの、こちらもそれなりの立場は必要だものね。何も持たない大公子より公爵の爵位を持つ大公子の方がいいもの。

今のお兄様でも身分は申し分ないけど、お父様と話し合った結果らしいわ。

前の時もフランキーが18歳で婚姻したのはその為よ。フランキーは爵位を拒否したけど。

あとお兄様はフレディとフランキーどちらかの子供、男児だけど産まれたら王位継承権を放棄するみたい。

お父様もフレディが産まれてから放棄したって言っていたわ。お兄様も産まれていたから男児が二人ならもう良いだろうって。

元々王位を継ぐつもりはなくても繋ぎは必要だもの。お姉様の伯父様のようにね。

国によって考え方が違うけど、第一王子のフレディが産まれた時にこの国の王太子は決まったの。

フレディもロザンヌ様が16歳になったら婚姻式を挙げるの。その前に立太子する事が決まったからロザンヌ様は婚姻したら王太子妃になるわ。


未来は着実に変わりつつあるわ。

後はフランキーだけね。婚約者候補もいないのよ?それは私もだけど。

この前お兄様に聞いたの。

『お兄様、私も誰かと婚約した方がいいと思うの』

『グレースにはまだ早い』

『そんな事言ってたら私の婚期が終わるじゃない。行き遅れなんて言われるのなんてあっという間なのよ?』

『行き遅れ?グレースは行き遅れじゃなくて行かないんだ。もしグレースを笑う奴がいたら俺が何とでも出来る』

お姉様にも相談したのよ?

『婚約?しなくていいわよ。私と一生暮らしましょ。大丈夫、グレース一人くらい私が養えるわ』

二人に相談した私が馬鹿だったのよね。

お兄様もお姉様も似た者同士なの。

でも幸せそうな顔をしている二人を見ていると私も嬉しいわ。

二人の間には勿論私がいるんだけど。



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