0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ

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19 婚約者

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フランキーと王女の婚約はまだ正式に決まっていない。

【一度両者を会わせてから】

それがこちらから提示した条件。

戦に発展するような決裂もなく定期的に行われる外交の場で急に出た婚約の話。

あまりに一方的すぎるルータン国の提示に待ったをかけた国王。


フランキーの心情も含めた結果だと思うけど。

それにお父様はその場では決めてこなかった。『改めて返答する』それでもこういう場合はほぼ婚約は決定するのよね。



1ヶ月後、王女様がこちらの国へ来て一週間滞在する事になった。

フランキーとの顔合わせには補佐役としてフレディとロザンヌ様も一緒に立ち合う事になった。

フランキーは毎日黙々と剣を振る。その姿を遠くから私は見つめる。


「グレース」

「お父様…」

「フランキーが心配か?」

「……うん」

「でもいつかはお互い離れる時がくる。遅かれ早かれな。それが今だった、それだけだ」


お兄様のように同性なら側で支える事ができる。でも私達は異性、ずっと側で支える事はできない。

お互い離れる時がくる、それは分かっていた。

私に婚約者ができたら、フランキーに婚約者ができたら、それに、子供から大人になる前には離れないといけない。

それが今だった、それだけ。

王女様が私の知っているお義姉様なら、それなら…。

それでもフランキーが心配。

フランキーには婚約者と仲良くなってほしい。そして今度こそ幸せになってほしい。

でも…、

まだ私の側にいてほしい…。

『兄上を取られた気分か?』

前にフランキーに言われた言葉。その言葉が一番しっくりくる。

フランキーを取られた気分

フランキーの隣で、言いたい事を言い合って、一緒に頑張ってきた。

物心つく前からずっと一緒にいたのよ?遊ぶ時も勉強する時も、お昼寝だって。一緒に成長してきたの。私の隣にはいつもフランキーが居た。

叱られる時も褒められる時も、同じ気持ちを共有してきたの。どれだけ辛くても繋がれた手に安心したし、私に向ける笑顔に心が落ち着いた。

まるで一人残されたような置いていかれたような、そんな気分。


「フランキーの幸せを願ってやれ」

「そのつもりよ…」


お父様は俯く私の頭を撫でた。


あっという間に1ヶ月が過ぎ、ルータン国の王女様が来ている間、私は王宮へは行っていない。

久しぶりに自分の時間を過ごしている私はお菓子作りをしている。

上手に出来ても何も楽しくない。お兄様は美味しいと食べてくれる。でも何か物足りない。

なら読書をしようと読み始めても一向に進まない。さっきから同じ所を読んでいるわ。

刺繍をと思ったけど私の刺繍箱は王宮に置いてある。

だから窓からぼぅっと外を見ている。

考える事はフランキーの事だけ。

上手く話せているかしら、王女様と仲良くなったのかしら、エスコートをしているかしら、無愛想にしてないかしら、

どうしてもフランキーの心配をしてしまう。


「フランキー大丈夫かしら」

「何とかやってるみたいだぞ」


突然の声に振り返った。


「お兄様」

「明日、俺とグレースが補佐役で付く事なった、父上からの伝言だ」


次の日お兄様と一緒に王宮へ向かい先に庭園で待っている。

フランキーのエスコートで現れた王女様。前の時よりも少しだけ幼さが残る。それでも変わらないお義姉様の姿。

挨拶を済ませ、4人で話をしながら和やかにお茶会は進む。

フランキーのこんな姿始めて見るわ。にこやかに話をして時折王女様を気遣う。お茶が無くなりそうになるとそっと合図を送ったり。

きちんと出来てるじゃない。心配して損したわ。

それに仲が良さそう。

私は自然と笑みが溢れた。

緊張してた糸が緩みお茶を一口飲んだ。

視線を感じ目線を上げるとフランキーと目が合った。私はフランキーに『良かったわね』と笑いかける。

フランキーから一瞬笑顔が消えた。

どうしたの?フランキー?


「私決めたわ」


突然の声に皆が一斉に王女様を見つめた。


「私、貴方と婚約したい」


王女様の視線はフランキーではなくお兄様に向いていた。


「ウルーラ王女殿下、ご冗談が過ぎますよ。貴女の相手は私ではなくフランシス殿下です。それをお忘れなく」

「あら、婚約するなら好みの男性がいいわ。殿下は私の好みではないの。良い男性ではあるけどね。

それに貴方と婚姻したらこの可愛い妹が側にいるんでしょ?」

「確かに妹が可愛いのは認めますが」


お兄様?今は可愛いとかそんなのどうでもいいわよね?お兄様と婚約するって言ってるのよ?


「それに、グレース、その名前も可愛いわ。グレースに合ってる」

「そうでしょう。妹は名前も可愛いんです」

「お兄様?」

「なんだいグレース。お菓子が欲しいのか?」

「お兄様、今は、その…」

「今?そうだね、補佐役とはいえ私達はお邪魔かもしれないね。そろそろ二人にして私達は席を外そうか。

それに殿下の婚約者なんだ、殿下が王女殿下のお相手をするよ。そうですよね、フランシス殿下」


お兄様、フランキーに圧をかけてどうするの?それに王女様の前なのよ?分かってる?


「ロナルド兄上、まだ婚約者ではありません」


フランキー、そこは大公子か殿でしょ。


「婚約者に決まったも同然ですよ、殿下」

「まだ正式に決まっていません」


もう!お兄様もフランキーもどうしたのよ!どうしてここにフレディ兄様はいないのよ。

仕方がないわ、


「フランシス殿下、王女殿下と庭園でも散歩してはどうですか?」


フランキーは私の声が聞こえないのかお兄様と見つめ合ったまま。


「グレース、殿方は殿方の話があるみたいよ。私の話相手をしてくれない?」


懐かしいお義姉様の笑顔を見れて嬉しい。

嬉しいけど…



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