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14 変わった一つの未来
しおりを挟む「お姉様、これからフランキーと散歩をするの。お姉様も一緒に散歩をしましょうよ」
「でも…」
「お願い、お姉様」
「分かったわ」
私はロザンヌ様の腕に腕を回した。私とロザンヌ様の少し離れた後ろをフレディとフランキーが歩いて付いてくる。
「グレースどうしたの?」
「お姉様に相談があったの」
「相談?聞かせて?」
私はついさっきのフランキーとの会話をロザンヌ様に話した。
「それでね、さっきもだけどフランキーはいつも呆れた顔をするのよ?失礼だと思わない?だから前にお母様になんでか聞いたの。でもお母様何も教えてくれなくて。
だからお姉様にずっと相談したかったの」
「ふふっ、そうね、それは私も教えられないかもしれないわ」
「どうして?」
「うーん、それは私がフランシス殿下ではないから、かな?」
「どういう意味なの?」
「いつかグレースにも分かるわよ」
「あっ、ねぇお姉様、どうしてさっきは笑ったの?」
「さっき?」
「ほら兄様がクッキーを食べた後よ」
「それね、ふふっ」
「お姉様?」
「そうね、なら少しだけ助言ね?」
「なに?」
「フランシス殿下の態度かしら」
「フランキーの態度?」
「グレースが見えていないものが見えた時、全ての謎が解けるわ」
その頃、兄弟の会話では…
「フランキーそう不貞腐れるな」
「兄上がグレースのクッキーを食べたからだろ」
「それは仕方がないだろ。お前だってグレースが食べてくれと頼んできて断れるのか?」
「それは、断われ、ないけど…。でもグレースが作った物は俺が全部食べたいんだ」
「なら俺を睨む前にグレースにそう言えばいいだろ。『グレースが好きだからグレースの作った物を俺以外に食べさせないでほしい』って」
「それが言えたら兄上に怒ってない」
「それもそうか。それよりもお前ロニーに『グレースと婚約したい』って言ったのか?グレースと婚約したいなら叔父上よりもロニーを口説け」
「言ったら鼻で笑われた」
「何度でも伝えろ。断られても断られても何度でも伝えるしかないぞ」
「分かってるよ」
「グレースが好きなんだろ?」
「好きだ」
「諦められないんだろ?」
「誰が諦めるか。父上がどれだけ俺を説得しようが叔父上が反対しようがロニー兄上が認めなくても、俺はグレースを諦めない」
「ロニーは手強いぞ」
「知ってるよ」
「まあ頑張れ。俺も父上と叔父上は説得してやる。だがロニーは別だ」
「分かってる。ロニー兄上だけは俺が説得しないといけない、そう思ってる」
「なら大丈夫だな」
フレディはフランキーの頭を撫でる。
「やめろよ、兄上」
「お前も可愛い弟だ。それは俺にとってもロニーにとってもだ」
「…知ってるよ」
ロザンヌ様と話しながら庭園を周り、今は仲良く手を繋ぎ歩くフレディとロザンヌ様二人の後ろ姿を見送っている。
「羨ましいのか?」
「羨ましいというよりも安心したかな?」
「安心?」
「でもやっぱり羨ましいわね。そうでしょ?あんなに仲が良くて幸せな二人を見てたら誰だって羨ましいと思うわ。
ねぇフランキー、あの二人なら立派な王と王妃になると思わない?」
「そうだな」
「この国も平和な国が続くわね」
フレディとロザンヌ様、お互いを愛しお互いを支え、唯一無二の存在になる。
国王と王妃、二人の頭に冠が見えた気がした。
その二人を側で支えるフランキーとお兄様。
少しずつ未来は変わり良い方へ進んでいる。
幸せそうな顔をするフレディの姿を見れて良かった。ロザンヌ様に愛しいと向ける瞳も、大切だと包むように抱き寄せる腕も、何があっても離さないと繋ぐ手も、幸せそうに笑う笑顔も、見ている私にも伝わる愛。
貴方の幸せを誰よりも願っているのは前の時を知ってる今の私。
幸せになって…
今度こそ幸せになってフレディ…
フレディは立ち止まり後ろを振り返った。そして私達に手を振った。
幸せそうに笑っているフレディの笑顔、
曇のない笑顔、
偽りのない笑顔、
私の好きな兄様の笑顔、
私はずっとその笑顔が見たかった…。
兄様の本当の笑顔をずっと見たかった…。
愛はあったの。その愛は家族愛と呼べるものだったけど、私は兄様の優しく笑うその笑顔が好きだった。
偽りの愛も偽りの笑顔もやっぱり兄様には似合わないわ。
だから今度こそ幸せな姿を私に見せて。
兄様の笑顔を見ていたら、私の中の重い枷のような物が外された気分だった。
そして私は兄様に手を振り返した。
目頭が熱くなり、頬を伝う雫…
フランキーは私の手を握った。
「兄上を取られた気分か?」
「そうね、でもこれは悲しい涙じゃないわ、嬉し涙よ」
「そうか、ならいい」
「うん、ありがとうフランキー」
フランキーの握る手にこれまで何度安心し何度助けられたか分からない。
『俺がいる、大丈夫だ』
そうフランキーの気持ちが伝わってくる。
フレディとロザンヌ様の姿が見えなくなるまで見送った。
その時ふと思ったの。
フレディの未来は変わった。フレディの未来が変われば派閥もなくなりこの国の令息令嬢の婚約婚姻も変わる。
全ては私とフレディの婚約、そこから始まったと思うから。
でもそれはこの国だけの未来。
お兄様の裏切りもあったけど隣国の伯父様はこの国を攻めようとしていた。
その未来も、変わるの?
それとも、変わらないの?
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