0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
14 / 55

14 変わった一つの未来

しおりを挟む

「お姉様、これからフランキーと散歩をするの。お姉様も一緒に散歩をしましょうよ」

「でも…」

「お願い、お姉様」

「分かったわ」


私はロザンヌ様の腕に腕を回した。私とロザンヌ様の少し離れた後ろをフレディとフランキーが歩いて付いてくる。


「グレースどうしたの?」

「お姉様に相談があったの」

「相談?聞かせて?」


私はついさっきのフランキーとの会話をロザンヌ様に話した。


「それでね、さっきもだけどフランキーはいつも呆れた顔をするのよ?失礼だと思わない?だから前にお母様になんでか聞いたの。でもお母様何も教えてくれなくて。

だからお姉様にずっと相談したかったの」

「ふふっ、そうね、それは私も教えられないかもしれないわ」

「どうして?」

「うーん、それは私がフランシス殿下ではないから、かな?」

「どういう意味なの?」

「いつかグレースにも分かるわよ」

「あっ、ねぇお姉様、どうしてさっきは笑ったの?」

「さっき?」

「ほら兄様がクッキーを食べた後よ」

「それね、ふふっ」

「お姉様?」

「そうね、なら少しだけ助言ね?」

「なに?」

「フランシス殿下の態度かしら」

「フランキーの態度?」

「グレースが見えていないものが見えた時、全ての謎が解けるわ」



その頃、兄弟の会話では…


「フランキーそう不貞腐れるな」

「兄上がグレースのクッキーを食べたからだろ」

「それは仕方がないだろ。お前だってグレースが食べてくれと頼んできて断れるのか?」

「それは、断われ、ないけど…。でもグレースが作った物は俺が全部食べたいんだ」

「なら俺を睨む前にグレースにそう言えばいいだろ。『グレースが好きだからグレースの作った物を俺以外に食べさせないでほしい』って」

「それが言えたら兄上に怒ってない」

「それもそうか。それよりもお前ロニーに『グレースと婚約したい』って言ったのか?グレースと婚約したいなら叔父上よりもロニーを口説け」

「言ったら鼻で笑われた」

「何度でも伝えろ。断られても断られても何度でも伝えるしかないぞ」

「分かってるよ」

「グレースが好きなんだろ?」

「好きだ」

「諦められないんだろ?」

「誰が諦めるか。父上がどれだけ俺を説得しようが叔父上が反対しようがロニー兄上が認めなくても、俺はグレースを諦めない」

「ロニーは手強いぞ」

「知ってるよ」

「まあ頑張れ。俺も父上と叔父上は説得してやる。だがロニーは別だ」

「分かってる。ロニー兄上だけは俺が説得しないといけない、そう思ってる」

「なら大丈夫だな」


フレディはフランキーの頭を撫でる。


「やめろよ、兄上」

「お前も可愛い弟だ。それは俺にとってもロニーにとってもだ」

「…知ってるよ」




ロザンヌ様と話しながら庭園を周り、今は仲良く手を繋ぎ歩くフレディとロザンヌ様二人の後ろ姿を見送っている。


「羨ましいのか?」

「羨ましいというよりも安心したかな?」

「安心?」

「でもやっぱり羨ましいわね。そうでしょ?あんなに仲が良くて幸せな二人を見てたら誰だって羨ましいと思うわ。

ねぇフランキー、あの二人なら立派な王と王妃になると思わない?」

「そうだな」

「この国も平和な国が続くわね」


フレディとロザンヌ様、お互いを愛しお互いを支え、唯一無二の存在になる。

国王と王妃、二人の頭に冠が見えた気がした。

その二人を側で支えるフランキーとお兄様。

少しずつ未来は変わり良い方へ進んでいる。


幸せそうな顔をするフレディの姿を見れて良かった。ロザンヌ様に愛しいと向ける瞳も、大切だと包むように抱き寄せる腕も、何があっても離さないと繋ぐ手も、幸せそうに笑う笑顔も、見ている私にも伝わる愛。


貴方の幸せを誰よりも願っているのは前の時を知ってる今の私。

幸せになって…

今度こそ幸せになってフレディ…


フレディは立ち止まり後ろを振り返った。そして私達に手を振った。

幸せそうに笑っているフレディの笑顔、

曇のない笑顔、

偽りのない笑顔、

私の好きな兄様の笑顔、

私はずっとその笑顔が見たかった…。

兄様の本当の笑顔をずっと見たかった…。


愛はあったの。その愛は家族愛と呼べるものだったけど、私は兄様の優しく笑うその笑顔が好きだった。

偽りの愛も偽りの笑顔もやっぱり兄様には似合わないわ。

だから今度こそ幸せな姿を私に見せて。


兄様の笑顔を見ていたら、私の中の重い枷のような物が外された気分だった。


そして私は兄様に手を振り返した。


目頭が熱くなり、頬を伝う雫…

フランキーは私の手を握った。


「兄上を取られた気分か?」

「そうね、でもこれは悲しい涙じゃないわ、嬉し涙よ」

「そうか、ならいい」

「うん、ありがとうフランキー」


フランキーの握る手にこれまで何度安心し何度助けられたか分からない。

『俺がいる、大丈夫だ』

そうフランキーの気持ちが伝わってくる。


フレディとロザンヌ様の姿が見えなくなるまで見送った。

その時ふと思ったの。

フレディの未来は変わった。フレディの未来が変われば派閥もなくなりこの国の令息令嬢の婚約婚姻も変わる。

全ては私とフレディの婚約、そこから始まったと思うから。

でもそれはこの国だけの未来。

お兄様の裏切りもあったけど隣国の伯父様はこの国を攻めようとしていた。

その未来も、変わるの?

それとも、変わらないの?



しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】巻き戻したのだから何がなんでも幸せになる! 姉弟、母のために頑張ります!

金峯蓮華
恋愛
 愛する人と引き離され、政略結婚で好きでもない人と結婚した。  夫になった男に人としての尊厳を踏みじにられても愛する子供達の為に頑張った。  なのに私は夫に殺された。  神様、こんど生まれ変わったら愛するあの人と結婚させて下さい。  子供達もあの人との子供として生まれてきてほしい。  あの人と結婚できず、幸せになれないのならもう生まれ変わらなくていいわ。  またこんな人生なら生きる意味がないものね。  時間が巻き戻ったブランシュのやり直しの物語。 ブランシュが幸せになるように導くのは娘と息子。  この物語は息子の視点とブランシュの視点が交差します。  おかしなところがあるかもしれませんが、独自の世界の物語なのでおおらかに見守っていただけるとうれしいです。  ご都合主義の緩いお話です。  よろしくお願いします。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

処理中です...