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13 8歳になりました

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運命の8歳になった。

一つの未来は変わった。

フレディとロザンヌ様の婚約が伝えられた。

ロザンヌ様は王子妃教育を受ける為に毎日王宮へ来ている。フレディはロザンヌ様を支え、毎日部屋まで迎えに行き二人でお茶をする。

涙を流す日もある。フレディがロザンヌ様を抱きしめている場面は何度も目にした。


お兄様は本格的にお父様の跡を継ぐ為に他国へ外交に行くお父様に同行するようになった。

フレディも王太子教育が始まった。数年の王太子教育が終われば王太子になる。


「お兄様も兄様も頑張ってるのを知ってるけど、でもやっぱり少しだけ寂しいわ…」


4人でゆっくりお茶を…、その時間が無くなった。私達は子供だけど子供ではいられない。


「フランキーは好きな子いないの?」

「どうして?」

「フランキーも早く婚約しないと。フランキーは第二王子なのよ?婚約者は王子妃教育を受けないといけないのよ?早く始めれるなら早く始めた方がいいじゃない」

「グレースは?」

「私?私はまだ8歳だもの。それにお兄様が許さないわ。お兄様『俺が認めない男とは婚約させない』ってこの前お父様に言っていたのよ?お父様なんて『やっぱりそうなったか』って苦笑してたわ。お母様は呆れていたけどね」

「叔父上じゃなくてロニー兄上がグレースの婚約者を決めるのか?」

「そうみたい」

「ロニー兄上相手じゃ手強そうだな」

「ね?本当よね」


最近はフランキーと二人だけでお茶の時間よ。


「それでフランキーの好きな子よ。いないの?」

「今はまだ言えない」

「私にも言えない子なの?家柄が低いとかないとかそういう子?」

「それより早く食べよう」

「そうね。美味しくなくても文句は聞かないから」

「文句なんて言わないだろ」

「言ったじゃない。この前固いって」

「でも美味しいって全部食べただろ」

「そうだけど…」


ご褒美の日はいつもお菓子作りをする事にしたの。ケーキ作りより簡単なクッキー作りから始めたのに、なぜか固くなってあのサクサクなクッキーじゃなかったの。

でも今回は自信作よ。

フランキーはクッキーを一枚食べた。


「どう?美味しい?」

「サクサクしてる」

「でしょ?これならロザンヌお姉様にも渡せるわよね?」

「どうしてロザンヌ姉上に渡すんだよ」

「その為に沢山作ったんだもの」

「ロザンヌ姉上に渡したら兄上も食べるだろ」

「別にいいじゃない」

「俺が全部食べる」

「もう、フランキーは本当に甘い物が好きよね」

「ああ、そうだな」


最近フランキーはたまに呆れた顔をするの。お母様に聞いたら『ふふっ』って笑うだけで何も教えてくれない。だからロザンヌ様に聞こうと思っていたの。


「ほらグレースお前も食べろよ」


私は癖で口を開けた。

目の前で固まっているフランキー。


「ごめんなさい、いつもの癖で…。ほ、ほらお兄様と間違えただけよ…」

「いいよ、ほら、口開けろよ」


私はフランキーを見た。フランキーは『早くしろ』そんな目で私を見ていた。

私は口を開けた。

フランキーは私の口にクッキーを入れた。

それからじっと私を見つめている。


「なに?」

「別に」


なんとも言えない空気が流れている。

クッキーの甘い匂い。

嬉しそうに笑うフランキー。

なに?この甘い空気。


「なあ、散歩しないか?」

「散歩?いいわよ」


フランキーが立ち上がった。


「グレース?」


私を呼ぶ声に振り向いた。


「ロザンヌお姉様」


ロザンヌ様は私の方へ、私はロザンヌ様の方へ歩いていった。


「お姉様もう勉強は終わったの?」

「ええ、今からフレディ様とお茶をする所なの」

「あっ、お姉様、こっちへ来て」


私はロザンヌ様の手を握り私達が座っていた所まで戻った。


「お姉様座って」


私が座っていた椅子にロザンヌ様を案内した。

フランキーは私の腕を掴みフランキーが座っていた椅子に私を座らせた。


「座れよ」

「ありがとうフランキー」


フレディはロザンヌ様の横に立ち、フランキーは私の後ろに立った。


「お姉様食べてみて」

「グレースの手作り?」

「そうよ」


ロザンヌ様とは手紙のやり取りをしている。その時にお菓子作りをしている事も書いた。

ロザンヌ様が一枚クッキーを食べた。


「グレースとても美味しいわ。上手ね。グレースは何でも器用にこなすのね…」

「私は器用じゃないわ。何度も失敗したのよ?何度も失敗してようやく上手に焼けたの。

フランキーなんて何度固いクッキーを食べたか分からないくらいよ。ね?フランキー」


私は振り返ってフランキーを見た。


「まあ、な」


ロザンヌ様に向き直した。


「ね?」

「ふふっ。

そうよね、誰だって失敗して上手くなるのよね」

「そうよ。失敗した分だけ成功するとものすごく嬉しいの」


ロザンヌ様が微笑んだ。


「そうだ、フレディ兄様も食べて」

「俺は遠慮するよ」

「どうして?今回は自信作なのよ?サクサクして美味しいわよ?

ほら」


私は一枚クッキーを渡した。

フレディは受け取り…、受け取り固まっている。

ん?なんで?


「フレディ様とても美味しいですよ?フランシス殿下もそう思いますよね?」

「ああ」

「あっ、兄様毒見が必要?なら大丈夫よ。私もフランキーも食べたもの。何ともないわ。それにお姉様も何ともないでしょ?

それに私はそんなの入れないわ」

「当たり前だ、そんな事思ってもいない。ただな…」

「ほら食べて感想を聞かせて、ね?兄様」

「そうか、そうだな」


フレディはクッキーを食べた。


「うん、グレース美味しい」

「でしょ」


私は嬉しくて笑顔になった。


「フッ」

「ふふっ」


目の前のフレディとロザンヌ様はお互い顔を見合わせ苦笑気味に笑った。



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