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5 相応しい者
しおりを挟む「おにいさまー、フレディにいさまー」
遠くで剣の稽古をしている二人に手を振った。
お兄様は直ぐに私の元まで走ってきて私を抱きしめる。
「グレースは勉強終わったの?」
「うん、おにいさまはまだ?まだあそべない?」
私はお兄様を見上げて話しかける。
「グレースは今日も可愛いね。俺の自慢の妹だ」
「おにいさまはわたしのじまんのおにいさまよ」
「大好きだよグレース」
「わたしもだいすきよおにいさま」
「直ぐに終わらせてくるからちょっとだけ待っててくれる?」
「うん、フランキーとまってる」
「フランキーか…、まあ仕方がないか」
お兄様は走って戻って行った。
それからフランキーと花壇の花を見て、メイド達がお茶の準備をしているのを見ていた。
「お待たせグレース」
「おにいさま」
「さあお茶にしようか」
椅子が4脚、フレディが座りお兄様が座った。
「グレースはぼくのとなりにすわろ」
私の手を引っ張るフランキー。
「フランキー、グレースはまだ一人で座るのは無理だ」
椅子に座ったら少し高い机の上にあるカップやお菓子を取りにくい。
「グレースおいで。俺の膝の上に座ろう」
「はーい」
私はお兄様の膝の上にちょこんと座った。目の前には美味しそうなお菓子が並んでいる。
「グレースはい、口を開けて」
私はお兄様に言われるまま口を開けた。口の中に広がるクッキーの甘い香り。
「おいしいねおにいさま」
「美味しいねグレース」
「ロニーはグレースに甘すぎじゃないか?」
「フレディもフランキーにしたらどうだ?フランキーはお前にとって可愛い弟だろ?」
フレディは呆れた顔をした。でもこれが私とお兄様の日常なのよね。
「フレディにいさまにもはいあげる」
私はフレディにクッキーを渡した。
「フランキーもはいどうぞ」
フランキーにもクッキーを渡す。
お腹もいっぱいになると今度は遊びたい。
「おにいさま、」
「遊ぶか?」
「うん」
「ぼくおいかけっこがしたい」
「フランキーそれは駄目だ」
「どうして?」
「追いかけっこをしてグレースが転んだらどうする。転んだら怪我をするかもしれないだろ」
「おにいさま、わたしはだいじょうぶよ?わたしもおいかけっこしたいわ」
「なら俺と手を繋いでならいいよ」
「ぼくがグレースとてをつなぐから」
「フランキーもまだ幼いだろ」
「ぼくもう6歳だよ」
そうなの。お兄様とフランキーでいつもどっちが私と手を繋ぐかで揉めるの。
だから私はいつも『フレディにいさまとてをつなぐ』って言っていた。
でもそれを見ていた大人達からは私とフレディは仲が良い、そう思われていた。お互い相思相愛だと。
でも私は一番害のない方法を取っただけ。
フレディもそれが一番丸く収まると思っただけ。
いとこ4人仲がいいの。いつも一緒に居て遊んで、王宮に来る機会が多いし年も近い、だから兄妹みたいに育ってきた。
でもここでフレディの手は取れない。
なら、お兄様?お兄様と手を繋ぐとフランキーが拗ねる。フランキーの手を繋ぐと今度はフランキーと婚約婚姻になる?
やっぱりここはお兄様よね。お兄様とは婚約婚姻にはならないもの。
「おにいさま、はやくあそびましょ」
遊びに誘うようにお兄様の手を取った。
「ぼく…」
「フランキー、はやくにげて。わたしがつかまえるから、ね?」
フランキーはコクリと頷いて逃げて行った。その後をお兄様と追う。
遊び疲れると今度は眠たくなる。木にもたれウトウトとしだし、誰かの肩にもたれかかった。
「グレース、ぼくね、すきなこがいるんだ」
フランキーの好きな子?私はその子を知りたいの。だってフランキーにも幸せになってほしい。女癖が悪くてもフランキーはフランキーだもの。
だからフランキーも好きな子と婚約して婚姻してほしい。
その子がロザンヌ様じゃないともっと良いけど…。兄弟で一人の女性を取り合うのは、やっぱり悲しい。前の時みたいに対立はしてほしくない。
足の引っ張り合い
仲が良かった兄弟なのに私が覚えているのはいがみ合う二人の姿。王太子の座を守るフレディ、王太子の座を狙うフランキー、兄弟の対立が第一王子派第二王子派と分かれそれもこの国の婚約婚姻に歪みが生じた原因。
愛し合った男女を別れさせ同じ派閥の者と婚約婚姻し、より繋がりを強固にした。
そして中立の立場だったお兄様。
私が第一王子の妃だとしても中立を貫いた。
『どちらが相応しいか、どちらも相応しくない』
お兄様と最後に交わした会話。
この国に派閥は必要ない。派閥があるから争いが起こる。小さな諍いがやがて争いの種になる。
国王王妃は国の象徴、それは民の心の敬うという気持ちから成るもの。
第一王子が王に、それが順当。
問題を起こした時は別だけど。
そういう意味ではフレディは弟の嫁と不倫していた。本気の愛とも言うかもしれないけど妻の私がいるんだから不倫は不倫よね。不倫する人が王に相応しいとは思えない。
フランキーは女癖が悪かった。本命は別にいたのかもしれないけれど、メイドにまで手を出していたから、フランキーも王には相応しくない。
そうするとお兄様?
お兄様は王位に興味もないはず。お義姉様と幸せに暮らしていたもの。
それに、この国を終わらせた張本人…
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