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3 もう一度やり直そう

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どこの国も大人の事情で子供の婚約は決まる。

全ては国の為

私とフレディもそう。この国を盤石にする為。国王の伯父様も公爵令嬢だった伯母様と婚約し婚姻した。王弟のお父様は隣国の第二王女だったお母様と婚約し婚姻した。

お兄様が手を組んだのはお母様の祖国だったの…。


本来ならフレディかフランキーどちらかが他国の王女を娶るはずだった。それでもどちらもこの国の令嬢と婚約し婚姻した。

私の場合は隣国の王女の娘として隣国との架け橋にはなる。隣国に住むお祖父様やお祖母様、お母様の兄妹の伯父様、伯母様、叔父様とも付き合いはある。

それに隣国の王太子の伯父様には男児しかいない。叔父様は独身。伯母様には女児が二人産まれたけど二人共同じ国の令息と婚姻した。


婚約や婚姻、一生を共にするなら誰だって好きな人としたい。それでも愛だけが全てではないのも分かっているし、愛だけでは国は守れない。

もしフレディやフランキーが子爵令嬢や男爵令嬢、平民を愛したとしても王子妃に必要な教養やマナー、それに家柄を持っていない。教養やマナーは学べばいい。でも家柄はどうにもならない。後ろ盾という家柄はどうしても必要だから。

フレディやフランキーが皆を黙らせるだけの力があればいいけど、でも実際どれだけ力を持っていても皆を黙らせる事は不可能に近い。

他国を相手する王族にとって妃は大事な役目を担う。だからこそ家柄で選ばれる。

フレディは第一王子として後に国王になる。国王の後ろ盾としてこの国の大公と隣国の王族を親族に持つ私は必要不可欠。だから私がフレディの婚約者に選ばれた。

幼馴染み、それも大きかった。

でも…、やっぱり愛は必要だと思う。経験したからこそそう思う。

ボタンの掛け違いで起こった歪みは対立や裏切り、この国を破滅に追い込んだ。

そこで犠牲になるのは民

雲の上のような存在の王族の歪みは国家を揺るがす。だから掛け違いを正しくしないと。

『もう一度貴女自身で未来を作り変えなさい。今度こそ平和な国へ導けるように、貴女なら大丈夫よ』

あの女性が誰だか分からないけど、こうして私はまたお父様とお母様の子供として産まれた。

0歳児に戻った事には意味があると思う。

もう一度、今度こそ平和な国へ。

それにはやっぱり愛が必要だわ。フレディの婚約者に私がならなくてもお兄様も隣国との繋がりは私と同じ。前の時だってお兄様は途中まで右腕として参謀役としてフレディを支えていた。

だからお兄様がフレディの側にいれば私は必要ない。

私とフレディの婚約は何としても阻止しないと。

うん、やる事は何となく分かってきた。でもまだ私は0歳児、今は乳を飲んで寝てゆっくり過ごせばいいわね。


「おぎゃーおぎゃー」

「グレースどうしたの?」


お母様が私を抱き上げ、お母様の腕の中で私は眠りにつく。


「グレースねちゃった?」

「寝ちゃったわ。また起きたら遊んであげてね、ロニー」

「うん、ぼくがグレースをまもるんだ」

「頼もしいお兄様だわ」


お母様とお兄様の心地よい声が私を深い眠りに誘う。


「本当によく寝る子だな」

「寝るのが赤ん坊の仕事だもの」


そうそう、今は力を溜めてるの。これから私は戦わないといけないから。

女性は慎ましくあるべきを覆す為に

口出しを良しとしないこの国の風習に抗う為に

今はお父様とお母様、それにお兄様の愛情をいっぱい貰ってそれを力に変えないといけないの。


お父様とお母様も国と国を強固にする為に婚約し婚姻した。手紙のやり取りはしていても婚姻式まで会ったのは婚約式をした1回だけ。ほとんど顔も知らない人と婚姻した。それでもこうして愛を育みおしどり夫婦と呼ばれている。私とお兄様に愛情を注いで幸せな家庭で私は育った。

国王の伯父様も幼い頃に決められた婚約者。少しずつ歩み寄り国王と王妃、唯一無二の存在になりこの国の象徴として国と民を守っている。

ならどうして私達がそれを出来なかったか…。

お互い仲の良い両親の元で育ち成長した。王子として王子妃として教育も受けた。お互い家族愛としての情はある。

私はフレディを支えたいと思ったし、フレディも私を守らないとと思っていた。

大事で大切な存在なのは変わらないの。

ただ、あまりに近すぎただけ。

相手の幸せを願い相手を好きだとしても、お互い家族の域を越えなかった。

それでも課せられる王太子と妃の立場。

そんな私達だから綻び見えない溝ができた。そして形だけの夫婦になった…。

だから今度はフレディの幸せを妻としてではなく妹として願うわ。愛を得たフレディは本来の力が出せる。お兄様も裏切らないしフランキーだって対立しない。

正しいか正しくないかはやってみないと分からないもの。

それでもまたこの国が終わっても…、悔いは残らない。ううん、悔いが残らないようにすればいいのよ。そうよ、そうするしかないのよ。

私は神じゃない。全てを導く事はできない。それでもボタンの掛け違いを正しくするように話はできる。ボタンがずれてるよって教える事もできる。

勝負は子供のうちね。子供なら許される戯言。そこに事実を混ぜればいい。


それに、もう、いがみ合う皆を見たくないの…。

もう一度やり直せたのなら、

それが息絶える前の私が最後に願った一番の願いだったんだから…



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