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 ◆◇ レオン視点 ◆◇



 クロードの墓へ行こうとアイリスに手を引かれ俺はクロードの墓の前に来た。

 ガイがクロードにアイリスを預けてほしいと言っている。


 なあクロード、ガイにお前の言葉を伝えて良いか?お前が良く言っていたアイリスの夫になる奴には一言言わないとと言っていた言葉だ。後は剣の勝負だったか?お前より強い奴なんていないのに、俺より強い奴じゃないと認めないなんて、お前、アイリスを嫁に出す気なんて更々無かったんじゃないのか? 剣の方は俺に任せてくれ、鍛えて鍛えて鍛え抜いてやる。


 頭を下げ続けるガイを心配したアイリスが俺に「助けて」と目で訴えてきた。

 俺はクロードの言葉をガイへ伝えた。ガイなら大丈夫だ。番だけでなく狼獣人のガイなら一生アイリス一筋だしな。


 俺はクロードの墓の前に立った。

 何から言えばいい。

 何から伝えればいい。

 何も言葉が出てこない。

 お前を前にして、あれ程会いたかったお前を前にして、どんな言葉なら俺は納得できる。どんな言葉でも俺は納得できない。そうだろ?

 お前の死を未だに認めたくなく、お前を死に追いやった奴を未だに赦せず憎み、お前の死を罵倒し侮辱した奴等を未だに恨み憎み、お前を騎士として見送るのではなく荷馬車で見つからない様に闇に隠れてここに連れて帰れなかった俺の不甲斐なさを恥…。

 なあクロード、お前は立派な騎士だ。剣の腕はこの国一番、名を挙げた騎士だ。他国から恐れられた騎士だ。そんなお前の死になぜこの国の奴等はお前を蔑む!侮辱する!何故だ!

 俺は許せない!俺は憎む!俺は恨む!

 そうだろ?あんなのは死者への冒涜だ!



 アイリスとガイの気配が遠く離れていく。俺とお前の二人きりにしてくれた様だ。本当に良くできた妹だよな?俺達の愛しく大事な妹は…。

 なあクロード、俺にはこれしか出てこない…。


「何故死んだ…」


 頬を伝う涙…。


「なあクロード、何故死んだ…」


 俺はクロードの墓を左手で撫でる…。


「なあクロード、何故俺を残して死んだ…」

「答えてくれクロード、何故俺を残して先に死んだ!」

「なあクロード、答えてくれ!!」

「クロード!クローーードーーーーー!!」


 俺はクロードの墓を抱きしめ声を出して泣いた。


「クローーードーーーーー!! クローーードーーーーーー!! クローーードーーーーー!!」

「ガオォォォォゥー ガオォォォォゥー ガオォォォォゥー」


 俺はクロードを墓を抱きしめ、離す事が出来ない。


 暫くして、俺は墓から離れクロードの剣を腰から抜き、墓の前に置いた。


「クロードお前の剣だ」

「お前の命だ」

「なあクロード、アイリスがな、お前の剣を俺に預けてくれるらしい。俺がお前の命、貰って良いか?俺の側にずっと一緒に居てくれるか?」


 俺は右手でクロードの剣を握り、左手を墓に触れる。


「俺とお前、大切な物は一緒だ」

「なあクロード、俺の左手は今もお前を探し彷徨ってる」

「なあクロード、お前が最後に言いたかった言葉は何だ?俺はお前を、お前は何を言いたかった。友か?同士か?」


 俺は右手に剣を持ち、左手は墓を触れ、額を墓に付けた。

 いくら耳の良いガイでも聞こえないだろう。なあクロード俺の本当の心の内を聞いてくれ。


「クロード、俺はお前を愛してる。お前は俺の魂の番だった。俺はお前に心から惹かれ人として惹かれ、愛する番として護り側にいたかった。 クロード、お前を愛してる。今でも愛しているんだ…。


お前を抱きしめたかった。お前を見つめていたかった。お前を離したくなかった…。


なあクロード、俺が死ぬまでそこで待っててくれるか? 来世ではお前と恋人になりたい。


なあクロード、俺が死んだら俺もお前とこの墓に入りたい。お前を抱きしめて一緒に眠りたい…。

クロード愛してる。俺の愛しい番…」


 俺はクロードにだけ聞こえる囁き声で話した。最後に墓に口付けし、墓から離れ、墓の前に座った。

 ここから動くつもりはない。離れるつもりはない。もう離されるのも離すのも嫌だ。

 俺は墓を見つめ座り続けた…。






 ◆◇ アイリス父、母目線



 レオン君がクロードの墓の前に座り墓を見つめている。誰にも止める事など出来ない。誰にも声をかける事など出来ない、そんな雰囲気だ。


「旦那様…」


 私はカーラの肩を抱きしめる手に力が入る。


「カーラ…」


 カーラは涙を流し私にもたれ掛かっている。一人では立っていられない様だ。私はカーラの腰を抱き、抱き寄せる。

 何も言わずともカーラにも分かっているのだろう。自分と同じ様に、嫌、自分以上にクロードの死を嘆き悲しみ、今でも心に憎しみを飼ってる目の前にいる獣人…。

 私はレオン君から奪う様にクロードを取り上げた。

 先程、レオン君の慟哭の叫び、唸る雄叫び、それは愛する者を亡くした者の叫びだった。 まだ10年、そうまだ10年なんだ。彼にとっても…。嫌、彼に取ってみればまだ昨日の様だ…。


「なあカーラ、彼やガイ君を信じられないか?」

「……信じ、られるかは分かりませんが、彼の悲しみは分かりました」

「そうだな」

「はい……。それに…」

「何だ?」

「クロードに誓ってくれた、アイリスちゃんの…」

「ガイ君か?」

「はい」

「ガイ君がどうした」

「その言葉も本物でした…」

「そうだな、私もそう思う」


 ガイ君がクロードに誓った言葉。クロードを兄上と慕っていた。会った事もないはずなのに…。それでも自分の兄の様に慕い、クロードの代わりに自分がアイリスを護るんだと、自分がクロード以上に愛すんだとこちらに伝わってきた。


「さあ二人きりにさせてやろう」

「はい」


 私はカーラを抱き寄せ邸の中に入った。





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