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私は今日お父様に大事な話をしないといけない。
コンコン
「お父様、アイリスです」
「入りなさい」
私は部屋に入り、
「お父様、大事な話があります。時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「構わないよ」
「あの、驚かないでほしいのですが…。お父様に会って頂きたい方がいます」
「そうか。アイリスもそういう歳になったか」
「お父様には感謝してます。婚約者が今迄いなかったのは私を思っての事だと思ってます」
「そうだな。無理に婚約者を見つけるつもりは無かった」
「はい、ありがとうございます」
「それでアイリスはその男性と婚姻するつもりなのか?」
「はい。お父様のお許しが頂けたら」
「そうか。 それなら相手側から打診がその内くるだろうからお受けする旨を伝えれば良いかな」
「それはありません」
「ない?」
「はい。相手は平民です」
「平民か。アイリスこの先苦労するんだぞ。今の気持ちだけで決めてはいけない、分かるな?」
「お父様、相手の方は私の番です」
「………」
「お父様?」
「あっ、悪い。番か………。分かった、一度会おう」
「はい、お父様の都合の良い時にお願いします」
「では、相手には申し訳ないが、明後日でも良いか?」
「早くないですか?」
「番と言うなら相手は獣人なのだろう?」
「……はい」
「獣人は番を側に置きたいのだろ?」
「そうみたいです」
「それなら早い方が良い」
「分かりました。ではお願いします」
私はお父様の部屋を出て、その足でガイの元へ行った。
騎士団の詰所前、何度も深呼吸をして扉を開ける。
「すみません」
「はい、何でしょう」
女性の獣人の方で良かったと胸をなで下ろした。
「あの、騎士のガイ様とお会いしたいのですが」
「約束はされました?」
「いえ、急用で、すみません」
「貴女はガイの番?」
「はい」
「貴女達人族はこちらに自由にこれても獣人は約束が無い方はお通しできないの」
「そう、ですか。あの、急用の場合どうしたら?」
「ガイに手紙を書くくらいかしら」
「それって今ここで書いたら渡して貰えますか?」
「そんなに急用なの?」
「はい」
「どうしようかしらね」
女性の獣人の方が悩みだし、
「どうした」
「隊長」
俯いてた私は気付かなかった。突然フワリと身体が浮き、
「キャー」
「アイリス俺だ」
「え?」
「顔を上げなさい」
私は顔を上げて、
「隊長さん」
「驚かせたか?」
「はい」
「すまんな」
「いえ」
「どうしてアイリスがここに居る?」
「ガイに急用があって…すみません」
「ん?」
「約束もしてないのにのこのこと来てしまって…」
「まあ確かに結婚すれば約束なくても会えるが、まだアイリス達は恋人だからな」
「はい」
「なら俺とガイを待とう」
「え?」
「ちょっと待っててくれな?」
「はい」
隊長さんはさっきの女性の獣人の方に頼んでいた。
「ガイは頼んだ。それまで俺と一緒に居よう」
「はい」
「アイリス」
「はい」
「アイリス」
「はい」
「良いな」
「隊長さん?」
「隊長さんじゃないだろ?」
「お、お兄様?」
「そうだ。できればレオンお兄様と呼んでほしいな」
「レオンお兄様?」
「もう一人兄が出来たと思ってほしい」
「はい、レオンお兄様」
「クロードはいつもこんな気持ちだったのだな」
「え?」
「アイリスが可愛い可愛いって言っていたのが凄く分かるよ」
「そうですか?」
隊長さんに抱っこされながら先へ進み、隊長さんの部屋に付いた。
私はレオンお兄様の膝の上に座らされ、今は私の頭を撫でている。その表情がとても優しくて私もされるがままになっている。それにお兄様が亡くなってからこうやって頭を撫でて貰える事も少なくなった。私の面倒を一番多くみてくれていたのはお兄様だった。家に居る時は必ず膝の上に座らせ頭を撫でながら話をする、それがお兄様といつもしていた事だった。
「ふふっ」
「どうした?」
「懐かしくてつい」
「ん?」
「お兄様もいつもこうやって私を膝に座らせ頭を撫でてくれました」
「そうか」
「はい」
「俺は兄しかいないから弟と妹がいるクロードが羨ましくてな、弟は同じ男だからか可愛がるとむくれると言っていた。その分妹は良いと自慢ばかりされたよ。どれだけ可愛がっても足りないとな」
「お兄様とは年も離れていたのでとても可愛がって貰いました」
「クロードにとってアイリスは目に入れても痛くない可愛い妹だからな」
「私もお兄様が大好きでしたから、お兄様が家にいる時はずっと側にいました」
「クロードも言っていたよ。常に一緒にいる事は出来ないから家にいる時は側にいたいとな」
「それなら良かったです」
「ん?」
「お兄様に恋人が出来ないのは私のせいだと思っていましたから」
「それはない」
「そうでしょうか」
「クロードは恋人を作るくらいなら鍛錬をすると言っていた。可愛がるのはアイリスだけで充分だとな」
「そうですか、それなら良かったです」
コンコン
「お父様、アイリスです」
「入りなさい」
私は部屋に入り、
「お父様、大事な話があります。時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「構わないよ」
「あの、驚かないでほしいのですが…。お父様に会って頂きたい方がいます」
「そうか。アイリスもそういう歳になったか」
「お父様には感謝してます。婚約者が今迄いなかったのは私を思っての事だと思ってます」
「そうだな。無理に婚約者を見つけるつもりは無かった」
「はい、ありがとうございます」
「それでアイリスはその男性と婚姻するつもりなのか?」
「はい。お父様のお許しが頂けたら」
「そうか。 それなら相手側から打診がその内くるだろうからお受けする旨を伝えれば良いかな」
「それはありません」
「ない?」
「はい。相手は平民です」
「平民か。アイリスこの先苦労するんだぞ。今の気持ちだけで決めてはいけない、分かるな?」
「お父様、相手の方は私の番です」
「………」
「お父様?」
「あっ、悪い。番か………。分かった、一度会おう」
「はい、お父様の都合の良い時にお願いします」
「では、相手には申し訳ないが、明後日でも良いか?」
「早くないですか?」
「番と言うなら相手は獣人なのだろう?」
「……はい」
「獣人は番を側に置きたいのだろ?」
「そうみたいです」
「それなら早い方が良い」
「分かりました。ではお願いします」
私はお父様の部屋を出て、その足でガイの元へ行った。
騎士団の詰所前、何度も深呼吸をして扉を開ける。
「すみません」
「はい、何でしょう」
女性の獣人の方で良かったと胸をなで下ろした。
「あの、騎士のガイ様とお会いしたいのですが」
「約束はされました?」
「いえ、急用で、すみません」
「貴女はガイの番?」
「はい」
「貴女達人族はこちらに自由にこれても獣人は約束が無い方はお通しできないの」
「そう、ですか。あの、急用の場合どうしたら?」
「ガイに手紙を書くくらいかしら」
「それって今ここで書いたら渡して貰えますか?」
「そんなに急用なの?」
「はい」
「どうしようかしらね」
女性の獣人の方が悩みだし、
「どうした」
「隊長」
俯いてた私は気付かなかった。突然フワリと身体が浮き、
「キャー」
「アイリス俺だ」
「え?」
「顔を上げなさい」
私は顔を上げて、
「隊長さん」
「驚かせたか?」
「はい」
「すまんな」
「いえ」
「どうしてアイリスがここに居る?」
「ガイに急用があって…すみません」
「ん?」
「約束もしてないのにのこのこと来てしまって…」
「まあ確かに結婚すれば約束なくても会えるが、まだアイリス達は恋人だからな」
「はい」
「なら俺とガイを待とう」
「え?」
「ちょっと待っててくれな?」
「はい」
隊長さんはさっきの女性の獣人の方に頼んでいた。
「ガイは頼んだ。それまで俺と一緒に居よう」
「はい」
「アイリス」
「はい」
「アイリス」
「はい」
「良いな」
「隊長さん?」
「隊長さんじゃないだろ?」
「お、お兄様?」
「そうだ。できればレオンお兄様と呼んでほしいな」
「レオンお兄様?」
「もう一人兄が出来たと思ってほしい」
「はい、レオンお兄様」
「クロードはいつもこんな気持ちだったのだな」
「え?」
「アイリスが可愛い可愛いって言っていたのが凄く分かるよ」
「そうですか?」
隊長さんに抱っこされながら先へ進み、隊長さんの部屋に付いた。
私はレオンお兄様の膝の上に座らされ、今は私の頭を撫でている。その表情がとても優しくて私もされるがままになっている。それにお兄様が亡くなってからこうやって頭を撫でて貰える事も少なくなった。私の面倒を一番多くみてくれていたのはお兄様だった。家に居る時は必ず膝の上に座らせ頭を撫でながら話をする、それがお兄様といつもしていた事だった。
「ふふっ」
「どうした?」
「懐かしくてつい」
「ん?」
「お兄様もいつもこうやって私を膝に座らせ頭を撫でてくれました」
「そうか」
「はい」
「俺は兄しかいないから弟と妹がいるクロードが羨ましくてな、弟は同じ男だからか可愛がるとむくれると言っていた。その分妹は良いと自慢ばかりされたよ。どれだけ可愛がっても足りないとな」
「お兄様とは年も離れていたのでとても可愛がって貰いました」
「クロードにとってアイリスは目に入れても痛くない可愛い妹だからな」
「私もお兄様が大好きでしたから、お兄様が家にいる時はずっと側にいました」
「クロードも言っていたよ。常に一緒にいる事は出来ないから家にいる時は側にいたいとな」
「それなら良かったです」
「ん?」
「お兄様に恋人が出来ないのは私のせいだと思っていましたから」
「それはない」
「そうでしょうか」
「クロードは恋人を作るくらいなら鍛錬をすると言っていた。可愛がるのはアイリスだけで充分だとな」
「そうですか、それなら良かったです」
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