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しおりを挟むお姉様方の話を聞き、楽しく過ごしている。
「もう、ラウルさんさっきからセレナが心配なのかチラチラとこっちを見てるわ。私達が意地悪すると思っているのかしら」
少し離れた所でご友人達と話すラウル様。
きっと私が不安そうな顔をしていたから、ラウル様は気にかけてくれている。「心配しなくてももう大丈夫です」とわざわざ言いにいくのもどうかと思っていたけど、言いに行った方がいいかしら。ラウル様もご友人達と楽しく過ごせないだろうし。
でもご友人達と話をしている所に水を差すようで。
「私、伝えてきます。ここに来る時に私が不安そうな顔をしていたので、気にかけてくれているんだと思います」
「いいのいいの。ラウルさんはセレナが心配で心配でたまらないだけよ」
「ですが、意地悪なんてされていませんし、私はお姉様方と過ごせて楽しいです」
「セレナの顔を見れば分かるわ。でも分かっていても心配なのは心配なの。それだけセレナが大切ってことよ?だから心配だけど見守ってるの。もしセレナが少しでも不安そうな顔をすればすぐに助けに来るわ。だから放っておきましょ」
「はい」
なら私は楽しいと笑っていればいい。本当にお姉様方と過ごせて楽しいのだから。
お姉様方と話していたら突然肩を叩かれ見上げる。
「ジョーイお兄様」
私の肩を叩いたのはエマのお兄様。私は立ち上がった。
「ジェフ君こんにちは」
ジェフ君はエマのお兄様の息子。お兄様に抱っこされお兄様の胸に顔を隠している。
「覚えてないかな?エマお姉さんのお友達よ?」
ジェフ君はチラッと私を見てまた顔を隠した。
「ローラが居なくて少し寂しくなったみたいだ」
ジョシュ君が産まれたばかりだからお兄様の奥様、ローラお姉様は今日は来ていない。
「さっきまで遊んでいたんだけどな」
ラウル様のご友人の子供達は皆同年代。仲良く遊んでいる。
「今ちょっといいか?」
「はい」
お兄様はジェフ君をお友達が遊んでいる所まで送っていき、私もお兄様に付いて行った。
抱っこから下ろされたジェフ君はまた皆の所に走って行った。それを私達は見ている。
「エマに聞いた」
「はい」
だからエマはこの前家に来たのね。
「セレナはエマの友人だが、妹のように思ってる。だから俺は反対だ。仮初の婚約者なんかやめろと言いたい。ラウルの気持ちは聞いたが、仮初の婚約者は好きな人が見つかるまでなんだろ?」
私は頷いた。
「好きな人ができた時この婚約を後悔するかもしれないんだぞ。白紙に戻したからと言って傷がつかないわけじゃない。今さらこんなことを言っても遅いのは分かってる。だが今ならまだ内々で戻すことができる。なんだったら間に入ってもいい。
すまない、余計なお世話かもしれないが…」
私は顔を横に振った。
お兄様がどこまで知っているのかは分からないけど、私を心配してくれているのは伝わる。
「好きな人は見つかりました」
「そうなのか?」
「はい」
「……もしかして、ラウルか?」
「……はい」
「ラウルなのか!?」
「はい」
私は頷いた。ここでお兄様に嘘をついても仕方がない。
「そうか…」
「セレナ」
突然私の腰を抱き寄せたラウル様。
「ジョーイ、セレナに何を言った」
「お前なんかやめとけと言った」
ラウル様とジョーイお兄様はお互い真剣な顔で見つめ合っている。
「あの、お兄様は私を心配してくださっただけです」
私はラウル様を見上げて答えた。
「セレナの心配は俺がする」
ラウル様はジョーイお兄様を少し睨むように見ている。
「お前しっかりしろよな」
ジョーイお兄様は去り際ラウル様の背中を思いきり叩いた。ラウル様はお兄様の後ろ姿を見つめている。
「何か嫌なことを言われたか?」
「いいえ」
私を見つめるラウルに私は顔を横に振った。
「どうだ?仲良くなれそうか?」
「はい、皆様とても優しい方々ばかりなので、とても楽しく過ごせています」
「そうか、なら良かった」
ラウル様は安心したのかホっとした顔をした。
「ラウルさん、早くセレナを返してくれない?」
お姉様の声に私達が見つめると、にこにこと笑うお姉様方。
「返してくれって、俺がセレナを早く返してほしい」
ラウル様は少し拗ねたように言った。
「戻りましょう」
「もう戻るのか?」
残念そうな顔をしたラウル様。
「ですが」
ラウル様のご友人達もお姉様達も私達を暖かい視線で見つめている。
「もう少しいいだろ?」
ラウル様は私の腰をぎゅっと抱き寄せた。
「可愛いな」
私達の目の前では子供達が元気に遊んでいる。
「可愛いですね」
「ん?」
「子供達、可愛いですよね」
ラウル様に聞こえなかったのかともう一度言った。
「まぁそうだな」
ラウル様はさらに私の腰を抱き寄せた。
「可愛いだろうな」
つぶやくように言ったラウル様。
ラウル様は子供が好きなのかもしれない。以前聞いた話では元奥様は積極的ではなかったと言っていた。でもラウル様は子供が欲しかった。
自分の血を分けた子供が。
今もご友人達の子供達を優しい顔で見つめている。
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