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しおりを挟む「はぁ……」
「はぁ……」
大きなため息をついた私と同時に、同じようにため息をついた男性。
今日私は独身の男女が集まる交友会に参加している。会場では仲良く談笑する大人の男女の姿。場違いの私は早々に会場外のバルコニーに出てきた。
会場外から会場内を見ても分かる。大人の時間の雰囲気に、15歳の私は浮いてしまっている。お酒も飲めず、大人の会話にもついていけず、男女の駆け引きも、大人の女性達のような妖艶な色香もない。
体つきもまだ成熟していないし、男性に話しかけられただけでオドオドしている私とは正反対。
私はバルコニーの塀にもたれ、思わずため息をついた。
ため息だって出るわよ。
ようやくお父様を説得してお友達の家にお泊りを許してもらって、お友達にも協力を頼んで、ようやくようやくよ?この交友会に参加出来たのに…。
誰が言ったの?年頃の男女の出会いの場だって。明らかに私よりもずいぶん年上の人達ばかり。ダンディーなおじさまもいたわ。熟女のおばさまもよ?
場違いすぎていたたまれなくなって、早々にバルコニーへ逃げてきたわ。
ため息をつきたくなくても勝手に出ちゃうわよ。
「はぁ……」
「はぁ……」
少し離れた場所にいる男性とまた同時にため息をついた。
男性と目が合い、男性はものすごく驚いた顔をした。
「こんな事を言うのは失礼だとは思うが、まだ若いのに君も大変なんだな」
私は今切羽詰まっている。
「君も相手を探しに?」
「はい。そちらも?」
「俺は、両親や友人に薦められて仕方なく。気が進まないのにこういった場に来るものじゃないな。君も無理矢理連れてこられたのか?」
「私は進んで来ました」
「進んでか、君は若いのにすごいな。男性不信にはならなかったのか?」
「男性不信ですか?なりませんでしたよ。気後れしましたが…」
この会場の男性に相手にされなかっただけで、男性不信になんてならないわ。ただちょっと私には年上の男性すぎただけだもの。
「貴方は女性不信に?」
「なったな…。女性という生き物は怖い生き物だ」
「はあ…?」
「見てみろ」
私がいまいち何を言っているのか分からないという顔をしていたのだろう。男性は顎をクイっと会場内に向けた。
「あのハイエナのような目。それに品定めをするかのような鋭い目。扇子で顔を隠していても笑っていないあの目。何を考えているのかさっぱり分からない。言いたい事があるなら言えばいい、聞きたい事があれば聞けばいい、どうしてああも女性は回りくどい言い方をしたがる。
金はいくら持っているか、死ぬまで遊んで暮らせるか、散財しても怒らないか、多少の遊びは目を瞑ってくれるか、そう聞きたいならはっきりそう聞けばいいだろ」
私は男性をじっと見つめた。いや、見つめるしか出来なかった。男性の剣幕に口を挟めなかったから。
「そりゃあ俺だって今は独り身の男だ。後妻を娶るなら多少目は瞑るし、好きにさせるさ。
君もやっぱり気になるのは財力か?」
「財力はあって困らないかと」
「こんな若くても女なんだな。まだ若い君には愛を夢見てほしいと思うんだがな」
「ですが愛ではお腹はいっぱいにはなりませんし、愛だけで暮らしていけるほど甘くはありません。やはりそこそこの財力は必要かと思います」
「年若い少女なら愛だけでいいと言うだろうが、やはり君は人妻だったからか、そこは現実重視なんだな」
男性は大きなため息をついた。
(ん?今聞き慣れない言葉が聞こえたような…。人妻?人妻って誰が?ここには私と男性しかいない。と、なると…?私?私に言ったの?
えー!私まだ15歳よ?あと数ヶ月で16歳にはなるけど、それでもまだ15歳。どこからどう見たら私が人妻に見えるの?私、そんなに老けて見えるのかしら。確かに今日は少し落ちついたドレスを着ているけど、こう言っては悪いけど、妖艶なお姉様方のような下品な胸元の開いたドレスなんて着てないわ。そもそもあそこまで主張出来るほど胸もまだ育ってないもの。
体つきだって年相応の成熟する前の体つきよ?もしかして、私から色香が滲み出ているのかしら。)
私は自分の体を確かめた。
(どう見ても年相応。お姉様方のような色香は全くもって出ていないわ。お姉様方を綺麗と言うなら、私は可愛らしい、そう可愛らしい女の子、その言葉がまだ似合う、はず…)
「あの…、何か誤解をしているようですが、私は人妻ではありませんよ?」
「それは分かっている。だから人妻だったと言っただろう」
「その、人妻にはまだ一度もなった事がありません」
「なんだ、籍も入れてくれないような男と結婚したのか?だから見切りをつけたのか?それとも捨てられたのか?まあどっちにしてもまだ若いのにな…」
憐れむような目で私を見ている男性。
「あの…、そもそも結婚した事がないというか、男性とこう、大人の関係?になった事がないと言うか…」
「なんだまだ生娘なのか?肉体関係もまだだったのか」
「当たり前です!」
私は真っ赤な顔をして、思わず大きな声を出してしまった。
「そ、そういうのは旦那様に捧げるものです…」
恥ずかしくなって顔を俯けた。
「その旦那様がお前にも居たんだろ?」
「え?」と私がポカンとしていたからか、男性は呆れたような顔をした。
「ならお前の言う大人の関係とはなんだ」
私は照れながら答えた。
「恋をしたり?どこかへ出かけたり、手を繋いだり…、……口づけ、したり……」
自分で自分が言ってる言葉に恥ずかしさを覚え、みるみるうちに顔に熱が集まってきた。
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