上 下
19 / 20

番外編 イザベラ視点

しおりを挟む

エリザとエリザの父親が来て私はこっそり見守っていた。部屋の扉の前にいたお義母様がだんだんと鬼の形相になっていくのが分かった。執事はお義母様に問い詰められていて…。

お義母様が部屋の中に入り私は部屋の前に来た。


「イザベラ様部屋へお戻り下さい」


執事に言われたけど、私はとぼけたふりをした。

扉の前で話を聞いていたら、

お義父様はお母様が好きなの?
え?

私がお母様の代わり?
嫌よ、気持ち悪い。

お義母様は離縁して出て行くと言った。

私と婚姻?
止めてよ!あんなおやじ嫌よ。ノアに似ているレオならまだ若いし良いけど、黒子があるだけでお義父様をノアだと思う訳ないじゃない!おじさんよ?おじさん。嫌に決まっているじゃない。


私は慌てて私室まで戻り今後どうするか考えた。


記憶の無いふりをしたのがいけなかったわ。実家に帰れないから居場所を求めたけど、そうよ、普通に考えて追い出される訳がないのよ。お腹にはノアの子がいるんだもの。お義母様が言うように3人で育てれば良かったのよ。

今更記憶が戻りましたって言ってもお義母様が離縁して出て行ったら、この家にお義父様と二人?一緒に子を育てたら本当に夫婦に見えるじゃない!

どうしよう



お義母様とレオが出て行き、私は部屋に閉じこもった。もしお義父様が部屋に来たら?お母様と思って私を……考えたくないわ!

メイドには

「ノアは私達を捨てて恋人を取ったのね。少し一人にしてくれない?」

と言った。部屋に閉じこもっていても傷心していると思ってくれる。子を産むまでは傷心の妻を演じないと!


陣痛が来て痛みで叫ぶ。


「ノア、ノア」


どれだけ呼んでもノアは来ない。

お義父様と育てるのだけは嫌よ。なら一人でどう育てるの?お義父様は金策に回っていてこの家にお金が無いのは知ってるわ。この子を産んでこの家も没落したらどうやってお金を稼ぐの?

お父様に頭を下げる?お父様は絶対に私を許さないわ。


「ノア、ノアーー」

「オギャー」

「可愛い女の子ですよ」


どうやって…育てるの……。

ノア、ノア、


私はそれからノアを探し回った。邸の中を昼夜問わず探し回った。それでもノアはどこにも居ない。

ノア、貴方は今どこにいるの?

どこかに、どこかに?


メイドに赤子を見せられても、イザベラ様の子ですよって言われても、何も覚えていないの。赤子なんて産んだ覚えもないし、そもそも赤子なんて宿ってないもの。

ノアと結婚式を挙げたばかりなのよ?

一年は新婚を楽しもうって子が出来ないようにしていたのよ?


邸から追い出された時、私はノアがいつ帰って来ても良いように邸から離れなかったわ。邸の外でずっとノアの帰りを待っていたの。


そんな時、一人の男性が声を掛けて来た。


「そんな所に居たら汚れるぞ。まあ既に汚れてるけどな」

「ノア?」

「ん?俺か?あ、そうそうノアだ」

「どこに行ってたの!ずっと待ってたのよ!」

「出稼ぎだ。お前と暮らす為にな」

「そうならそうって言ってよ。心配したんだから!」

「ごめんごめん」


私はノアに連れられ一軒の家に着いた。
そこで私は暮らしはじめ、買い物をしている時に思い出したの。目の前で慌てて馬に乗る人を見た時に…。

そうよ、ノアは死んだのよ。雨の中慌てて出て行って…。私はノアの子を産んだ、女の子。

お義母様もレオも出て行ってお義父様と二人残された。お義父様はお母様が好きで私はお母様の代わりにさせられそうになった。でも、お金の工面をしていてそれどころじゃなかった。

私は慌てて伯爵家へ向かった。伯爵家は既に違う人が住んでいて、邸の外装は全く別のものだった。

私はトボトボと歩いて戻り、


「ねぇ、貴方は誰?ノアじゃないわ。それに全て思い出したの」

「俺はワーク」

「ワーク、どうして私をここに連れて来たの?」

「おいおい良いのか?お前子も捨てたんだろ?帰る家はあるのか?お前を迎え入れてくれる人はいるのか?

俺ならお前に居場所を作ってやれる。俺ならお前を愛してるやれる。

お前を理解できるのも、お前が頼れるのも、お前を愛してやれるのも俺だけだよ」

「どうして私の事を知ってるの」

「そんなの調べたら直ぐに分かるだろ。な?お前は俺が最後まで面倒見てやるから」

「ここに、居てもいいの?」

「ああ、勿論だ。(逃げ出されたらこっちが困る)」


それから私はワークの家で一緒に暮らしている。


「ルナ愛してる。もう俺から逃げるなよ?」


私はワークの逃げた奥さんの代わりになった。

話すと声が違うと言われ、何かすればルナはそんな事はしないと叱られる。

ワークは嗜虐性癖があるらしく、愛してると言って鞭で打ったり死にそうになった事は一度や二度じゃない。逃げ出そうものなら鎖で繋がれ部屋から出れなくされる。

今日も、


「愛してる、ルナ、愛してる。俺にはルナだけだ。もう逃げないでくれ、今度逃げ出したら俺はお前を殺すかもしれない。

ルナ、ルナ、愛してる」


私はワークの家という檻の中で命が尽きるか、ワークに殺されるか、

言いたい事も言えず、仕草一つ行動一つルナのふりをさせられ、


ルナとして一生生きていくしかない………。



しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

【本編完結】独りよがりの初恋でした

須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。  それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。 アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。 #ほろ苦い初恋 #それぞれにハッピーエンド 特にざまぁなどはありません。 小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。

【完結】私が貴方の元を去ったわけ

なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」  国の英雄であるレイクス。  彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。  離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。  妻であった彼女が突然去っていった理由を……   レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。      ◇◇◇  プロローグ、エピローグを入れて全13話  完結まで執筆済みです。    久しぶりのショートショート。  懺悔をテーマに書いた作品です。  もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜

よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。  夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。  不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。  どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。  だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。  離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。  当然、慰謝料を払うつもりはない。  あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

処理中です...