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番外編 イザベラ視点
しおりを挟むエリザとエリザの父親が来て私はこっそり見守っていた。部屋の扉の前にいたお義母様がだんだんと鬼の形相になっていくのが分かった。執事はお義母様に問い詰められていて…。
お義母様が部屋の中に入り私は部屋の前に来た。
「イザベラ様部屋へお戻り下さい」
執事に言われたけど、私はとぼけたふりをした。
扉の前で話を聞いていたら、
お義父様はお母様が好きなの?
え?
私がお母様の代わり?
嫌よ、気持ち悪い。
お義母様は離縁して出て行くと言った。
私と婚姻?
止めてよ!あんなおやじ嫌よ。ノアに似ているレオならまだ若いし良いけど、黒子があるだけでお義父様をノアだと思う訳ないじゃない!おじさんよ?おじさん。嫌に決まっているじゃない。
私は慌てて私室まで戻り今後どうするか考えた。
記憶の無いふりをしたのがいけなかったわ。実家に帰れないから居場所を求めたけど、そうよ、普通に考えて追い出される訳がないのよ。お腹にはノアの子がいるんだもの。お義母様が言うように3人で育てれば良かったのよ。
今更記憶が戻りましたって言ってもお義母様が離縁して出て行ったら、この家にお義父様と二人?一緒に子を育てたら本当に夫婦に見えるじゃない!
どうしよう
お義母様とレオが出て行き、私は部屋に閉じこもった。もしお義父様が部屋に来たら?お母様と思って私を……考えたくないわ!
メイドには
「ノアは私達を捨てて恋人を取ったのね。少し一人にしてくれない?」
と言った。部屋に閉じこもっていても傷心していると思ってくれる。子を産むまでは傷心の妻を演じないと!
陣痛が来て痛みで叫ぶ。
「ノア、ノア」
どれだけ呼んでもノアは来ない。
お義父様と育てるのだけは嫌よ。なら一人でどう育てるの?お義父様は金策に回っていてこの家にお金が無いのは知ってるわ。この子を産んでこの家も没落したらどうやってお金を稼ぐの?
お父様に頭を下げる?お父様は絶対に私を許さないわ。
「ノア、ノアーー」
「オギャー」
「可愛い女の子ですよ」
どうやって…育てるの……。
ノア、ノア、
私はそれからノアを探し回った。邸の中を昼夜問わず探し回った。それでもノアはどこにも居ない。
ノア、貴方は今どこにいるの?
どこかに、どこかに?
メイドに赤子を見せられても、イザベラ様の子ですよって言われても、何も覚えていないの。赤子なんて産んだ覚えもないし、そもそも赤子なんて宿ってないもの。
ノアと結婚式を挙げたばかりなのよ?
一年は新婚を楽しもうって子が出来ないようにしていたのよ?
邸から追い出された時、私はノアがいつ帰って来ても良いように邸から離れなかったわ。邸の外でずっとノアの帰りを待っていたの。
そんな時、一人の男性が声を掛けて来た。
「そんな所に居たら汚れるぞ。まあ既に汚れてるけどな」
「ノア?」
「ん?俺か?あ、そうそうノアだ」
「どこに行ってたの!ずっと待ってたのよ!」
「出稼ぎだ。お前と暮らす為にな」
「そうならそうって言ってよ。心配したんだから!」
「ごめんごめん」
私はノアに連れられ一軒の家に着いた。
そこで私は暮らしはじめ、買い物をしている時に思い出したの。目の前で慌てて馬に乗る人を見た時に…。
そうよ、ノアは死んだのよ。雨の中慌てて出て行って…。私はノアの子を産んだ、女の子。
お義母様もレオも出て行ってお義父様と二人残された。お義父様はお母様が好きで私はお母様の代わりにさせられそうになった。でも、お金の工面をしていてそれどころじゃなかった。
私は慌てて伯爵家へ向かった。伯爵家は既に違う人が住んでいて、邸の外装は全く別のものだった。
私はトボトボと歩いて戻り、
「ねぇ、貴方は誰?ノアじゃないわ。それに全て思い出したの」
「俺はワーク」
「ワーク、どうして私をここに連れて来たの?」
「おいおい良いのか?お前子も捨てたんだろ?帰る家はあるのか?お前を迎え入れてくれる人はいるのか?
俺ならお前に居場所を作ってやれる。俺ならお前を愛してるやれる。
お前を理解できるのも、お前が頼れるのも、お前を愛してやれるのも俺だけだよ」
「どうして私の事を知ってるの」
「そんなの調べたら直ぐに分かるだろ。な?お前は俺が最後まで面倒見てやるから」
「ここに、居てもいいの?」
「ああ、勿論だ。(逃げ出されたらこっちが困る)」
それから私はワークの家で一緒に暮らしている。
「ルナ愛してる。もう俺から逃げるなよ?」
私はワークの逃げた奥さんの代わりになった。
話すと声が違うと言われ、何かすればルナはそんな事はしないと叱られる。
ワークは嗜虐性癖があるらしく、愛してると言って鞭で打ったり死にそうになった事は一度や二度じゃない。逃げ出そうものなら鎖で繋がれ部屋から出れなくされる。
今日も、
「愛してる、ルナ、愛してる。俺にはルナだけだ。もう逃げないでくれ、今度逃げ出したら俺はお前を殺すかもしれない。
ルナ、ルナ、愛してる」
私はワークの家という檻の中で命が尽きるか、ワークに殺されるか、
言いたい事も言えず、仕草一つ行動一つルナのふりをさせられ、
ルナとして一生生きていくしかない………。
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