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番外編 レオの父親視点

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妻と離縁が成立し子爵家からの援助が無くなり伯爵家は火の車だ。ほとんどを援助金で賄ってきたんだ、当たり前と言えば当たり前なんだが…。


幼い頃からノアとイザベラを見て、俺とマリベルの幼い頃のようだと思った。俺の初恋はマリベルだ。俺とマリベル、マリベルの夫ザイルは幼馴染みで幼い頃から遊ぶのはいつも一緒だった。マリベルがザイルを好きなのも、俺に何の感情も持っていないのも知っていた。

俺の片思い

成長しマリベルとザイルは婚約し俺は恋心を隠すのが上手くなった。

そんな時俺も子爵家の令嬢だった妻と婚約した。傾きかけた伯爵家の為に子爵家の財力と婚約し婚姻した。

そこに愛はない

それでも俺は妻を愛してるふりをした。夫婦仲が良く見えるように、伯爵家の跡継ぎを産む為に、

心で誰を思おうが妻に隠し通せば分からない。

俺の夢はマリベルと婚姻し、マリベルに似た子を産み幸せに暮らす。

妻を抱きながらマリベルを思い浮かべる。そして出来た子がノアだ。俺と同じ場所に黒子を持つ可愛い我が子だ。俺は子はノアだけで良いと思っていたが、俺も若い、欲は溜まる。そして出来た子がレオだ。レオも我が子だがレオは俺と同じ場所に黒子が無かった。ノアとは双子かと思う程似ているが…。

俺は幼いノアとイザベラを俺とマリベルの子だと思い成長を見てきた。


幼いノアとイザベラはお互いに恋をした。本来なら俺とマリベルが恋をするはずだった。

ザイルは俺の恋心を知っていた。だが妻と婚姻してから仲の良い夫婦を見せていたからかまた交流が始まった。夫婦同士で食事をしたり子が産まれればお互いの子を遊ばせた。

そんな時、酒の席で二人を結婚させようと話になった。その時、俺はまた違う夢を見つけた。この二人を結婚させ俺とマリベルとの結婚生活をこの二人に実演してもらい俺はそれを側で見つめる。

それに親戚とはいえマリベルは身内になった。

マリベルと身内になれたそれだけで俺は天にも昇る心地だ。

俺は幼いノアとイザベラに何度も言い聞かせた。「お前達は婚約者だ。婚約者を大事にし愛し合いお前達は婚姻するんだ」幼いノアとイザベラは俺の言葉を素直に受け取りそれからお互いを婚約者と疑わず愛し合った。ノアに「イザベラと結婚したい」と言われた時は嬉しかった。

俺の夢が現実になる

婚約者だと思ってる二人は愛し合い結婚した。仲睦まじい二人を見て、愛し合う二人を見て、俺はマリベルを思い、マリベルも俺を思い、俺達は愛し合う。

最高だ


これから子もという時、ノアが死んだ。


ノアはイザベラを愛しているが、レオが愛しているのはエリザだ。

これでは俺の夢は潰えてしまう

俺は考えた。妻は倒れ離れで療養していて本邸には来ない。口煩いメイド長は妻に付きっきりだ。今本邸にいる使用人は執事はじめ全員俺の指示を聞く。俺は執事に「レオをノアと呼ぶように」と指示を出した。有り難い事にイザベラが記憶の混濁でレオをノアだと思っているし、イザベラの腹にノアの子がいる。医師も不安を与えないようにと言っているしこの際レオで我慢するしかない。

レオは幼い頃から俺の顔色を伺う。俺に嫌われないようにしているのは知っている。自我が芽生え始めた頃はよく一人で家を抜け出していたがそれも直に落ちついた。あのレオが婚約者の名前を聞いた時だけは俺を急かし返事を早くしてほしいとせがんだ。

レオがエリザを愛しているのは知っている。それでもノアが死んだ今、もうお前しかいないんだ。


子が親の犠牲になるのは当たり前だ

俺も妻を愛してるふりをずっとしたきたんだ

今度はお前の番だ、レオ



エリザと婚約を解消したくなるように、もしくはエリザから婚約を解消されるように俺は指示を出した。

執事は手紙を全て捨て、レオからの言付けもエリザには伝えなかった。イザベラに付いてるメイドもレオに頼まれてもエリザには伝えなかった。そしてエリザが待ってる喫茶店にイザベラを導きレオとイザベラの姿をエリザに見せつけた。

俺はレオを精神的に追いやる。エリザと結婚したいならと、レオを言い聞かせるにはエリザの名前を出すのが一番だ。


レオが勘当してくれと言いだした。いずれ言うだろうとは思っていた。イザベラからお茶会の様子も聞いた。ノアが他の女性を抱きしめていたと。レオがエリザを抱きしめていたのだと知ってこれはまずいと、俺は執事に指示を出した。

勘当してくれと言ったレオが部屋に入ったと同時に俺はレオを監禁した。何度も何度も鞭で打ち「イザベラと結婚し子を育てろ」と、レオの心が壊れるまでやり続けるつもりだった。

あと少しで

あと少しでレオは心を病むはずだった

それをエリザの父親が!

心を病んだレオなら俺の言う事を聞く。俺の操り人形にもう少しでなっていたんだ。

レオの価値などそのくらいだ

ノアの替え

それだけだ!




妻から離縁通知が来た。離縁の理由が子への虐待、貴族には直ぐに伝わった。

子爵家の援助を打ち切られ、妻からはレオへの虐待の慰謝料、エリザの父親からはエリザへの精神的苦痛の慰謝料を請求された。

俺は親戚筋から仲の良かった友人にお金の工面をお願いしたが誰一人として会ってはくれなかった。友人達からは抗議文が届いた。

「本来なら目に入れても痛くない愛しい我が子を虐待するような人と友人と思われるのも嫌悪する。今後一切友人とは呼んでほしくない。もしまた連絡を取ろうとするのならこちらにも考えがある」

お金の工面をするために夜会に出かけても遠巻きに白い目で見られ誰も寄って来なければ誰も話すらしてくれない。俺が歩けば道が出来るように皆が避けていく。当然お金の工面など出来る訳がない。

イザベラはノアを探して邸の中を徘徊する。子が産まれても子には興味も示さずノアをただ探し求める。

明日、滞った支払いが払えなければこの邸は売却される。何代も続いた伯爵家を俺の代で潰すとは……。

没落はもう免れない……

最後まで残ってくれた執事ももう辞めて数ヶ月、没落しこの邸を出たら…。




俺は浮浪者になり最期を迎える。その時ザイルの言葉が俺の耳から離れない…。それにザイルの最後の言葉が胸に突き刺さる…。


ノアの子をザイルが引き取りに来た。

「イザベラは勘当した子だ、引き取るつもりはない。だが赤子には罪はない。それと金輪際私達は無関係の人間だ。

最後に良いか?

お前はレオを虐待してまで得たかったものは得られたのか?」


レオを虐待してまで得たものは…

何もない………………





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