すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
17 / 20

17

しおりを挟む

「エリザここに居たのか」

「レオ」


私は今庭のベンチに座りお茶をしていた。

レオは私を抱きしめ膝の上に座らせる。


「あ~、落ち着く」

「疲れた?」

「それは問題ない。色々教えてもらえて勉強になるよ」

「無理はしないでね?」

「無理はするだろ?伯爵家を俺の代で衰退させる訳にはいかない」

「そうだけど」

「エリザ愛してる」

「私もレオを愛してるわ」


レオは私にキスをした。今は私の髪を愛おしそうに見つめて撫でている。


「背中の傷、もう痛くない?」

「もうすっかり治った。傷跡は残るけどな。エリザも見て気持ちのいいものじゃないだろ?ごめんな」

「傷跡なんて気にならないわよ?」

「そうか、良かった」



レオの背中の傷跡…

あの日あれからレオもレオのお母様も子爵様も一緒に伯爵家へ戻って来て皆で今後の話し合いをしていた時、レオがカップを取ろうと手を伸ばした。その時一瞬少し顔を顰めた。その顔を見逃さなかったお父様がレオの服をめくった。

レオの体は、

一週間部屋に監禁されていた時にお義父様に鞭で打たれていた。抵抗したレオを数人の騎士達が取り押さえ、レオの手首にはその跡が生々しく残っていた。腕にも鞭の跡が無数に残っていてレオが必死で抵抗した跡…。

手首や腕の痣は直に消えた。それでも何度も打たれた背中は今後も傷跡が残る。

私は傷跡なんて気にしないけど、レオ自身はどうだろう。実の父親に監禁され自由を奪われ、イザベラお姉様と結婚し子を育てろと何度も言われ、嫌だと言うと鞭で打たれる。最後まで抵抗したレオだけど、これが1ヶ月続いていたら…、レオは心を失くしていたかもしれない。

レオは一生消える事のない背中の傷跡を背負いこれからも生きていく。




レオの少し目を細めて笑う癖、それを見れて私は凄く嬉しい。


「エリザ、いつも作ってくれるクッキー、また作ってくれないか?」


私は何度クッキーを焼いても上達せず、固いクッキーのまま…。それでもそれを美味しい美味しいと嬉しそうに食べるレオを見るのが好きなの。


「また固くなるわよ?」

「今じゃ固いクッキーしかクッキーとは思えないくらいだ。それに俺の為に必死で作ってくれるエリザを見て幸せになる。エリザの手作りってだけで美味しいんだ。俺には世界一美味しいクッキーだ」


レオはあれから格好つけづ私に接してくれる。態度も話し方も。顔を見れば直ぐに抱きしめ、側にいる時は常に膝の上。邸の外でも絶対に私のどこかに触れる、手だったり腰だったり、でもそれは私も一緒。レオが私に触れる手に安心するもの。私もレオもお互いに甘えたりするの。レオのそんな姿も愛しいと思う。

話し方も学生の時は私に嫌われないように考えて話していたけど、本来のレオはよく話す。どんな話し方でもレオを嫌うことなんてないのに。

それでもそれは私限定。お茶会や夜会に行っても挨拶だけで終わる。私が話してる姿をずっと愛おしそうに見つめている。貴族として紳士に振る舞うけど、他の女性に振る舞うのは止めたって。無理して話すくらいなら話したくないって言っていたわ。

学生の時みたいに私に対しても他に対しても紳士に振る舞うレオも嫌いじゃない。それでも今のレオの方が私は好き。私だけにしか見せない姿や顔を私だけが知っている、そんな幸せな事はないわ。

私もレオだけにしか見せない姿や顔があるもの。


「ついに明日は結婚式か」

「そうね」

「ようやく俺の念願が叶う。俺の初恋の女の子で愛する女性」

「ふふっ、私もよ?初恋の男の子で愛する男性」

「一緒に幸せになろうな」

「ええ。私ね、レオのそのキラキラと宝石のように輝く瞳好きなの。だからね、レオによく似た子を産みたいわ」

「俺はエリザによく似た子が良い。エリザのふわふわした栗色の髪の毛も薄紫の瞳も俺は大好きだ。

エリザ、これからは死ぬまでずっと一緒だ、もう離さない。これからもよろしくな」

「私も、死ぬまでずっと一緒にいたいわ。こちらこそよろしくね」

「エリザ、愛してる。

あ~、明日まで待てない。早く一緒に暮らしたい。同じ敷地にいて一緒に暮らせないなんて、辛い…辛すぎる…」

「明日には一緒に暮らせるわよ?」

「その明日が待ち遠しいんだろ?何年エリザを好きだと思って来たか、どれだけエリザとの結婚を心待ちにしてきたか」

「私も本当は明日が待ち遠しいの。私だって何年レオを好きだと思ってるの?私だってレオとの結婚を心待ちにしてきたのよ?」

「エリザ、可愛い、愛しい、笑った顔が可愛い、照れた顔が可愛い、怒った顔も泣いた顔も可愛い、エリザがそこにいるだけで愛しい、エリザが生きてるだけで愛しい、好きだ、大好きだ、愛してる」

「ふふっ、私もレオを愛してるわ」



今日も明日も明後日も、この先死ぬまでずっと、

愛しい人の膝の上で、愛しい人を見つめながら、愛しい人の温もりを感じて、

お互いにしか見せない姿や顔、本音を言える夫婦に、

これからもずっと幸せに暮らしていく。




            完



 


 ❈ 番外編が3話あります。明日から引き続き投稿します。こちらも読んで頂けると幸いです。

しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

【本編完結】独りよがりの初恋でした

須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。  それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。 アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。 #ほろ苦い初恋 #それぞれにハッピーエンド 特にざまぁなどはありません。 小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。

クレアは婚約者が恋に落ちる瞬間を見た

ましろ
恋愛
──あ。 本当に恋とは一瞬で落ちるものなのですね。 その日、私は見てしまいました。 婚約者が私以外の女性に恋をする瞬間を見てしまったのです。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

【完結】私が貴方の元を去ったわけ

なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」  国の英雄であるレイクス。  彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。  離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。  妻であった彼女が突然去っていった理由を……   レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。      ◇◇◇  プロローグ、エピローグを入れて全13話  完結まで執筆済みです。    久しぶりのショートショート。  懺悔をテーマに書いた作品です。  もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

この恋に終止符(ピリオド)を

キムラましゅろう
恋愛
好きだから終わりにする。 好きだからサヨナラだ。 彼の心に彼女がいるのを知っていても、どうしても側にいたくて見て見ぬふりをしてきた。 だけど……そろそろ潮時かな。 彼の大切なあの人がフリーになったのを知り、 わたしはこの恋に終止符(ピリオド)をうつ事を決めた。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

処理中です...