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しおりを挟む「エリザここに居たのか」
「レオ」
私は今庭のベンチに座りお茶をしていた。
レオは私を抱きしめ膝の上に座らせる。
「あ~、落ち着く」
「疲れた?」
「それは問題ない。色々教えてもらえて勉強になるよ」
「無理はしないでね?」
「無理はするだろ?伯爵家を俺の代で衰退させる訳にはいかない」
「そうだけど」
「エリザ愛してる」
「私もレオを愛してるわ」
レオは私にキスをした。今は私の髪を愛おしそうに見つめて撫でている。
「背中の傷、もう痛くない?」
「もうすっかり治った。傷跡は残るけどな。エリザも見て気持ちのいいものじゃないだろ?ごめんな」
「傷跡なんて気にならないわよ?」
「そうか、良かった」
レオの背中の傷跡…
あの日あれからレオもレオのお母様も子爵様も一緒に伯爵家へ戻って来て皆で今後の話し合いをしていた時、レオがカップを取ろうと手を伸ばした。その時一瞬少し顔を顰めた。その顔を見逃さなかったお父様がレオの服をめくった。
レオの体は、
一週間部屋に監禁されていた時にお義父様に鞭で打たれていた。抵抗したレオを数人の騎士達が取り押さえ、レオの手首にはその跡が生々しく残っていた。腕にも鞭の跡が無数に残っていてレオが必死で抵抗した跡…。
手首や腕の痣は直に消えた。それでも何度も打たれた背中は今後も傷跡が残る。
私は傷跡なんて気にしないけど、レオ自身はどうだろう。実の父親に監禁され自由を奪われ、イザベラお姉様と結婚し子を育てろと何度も言われ、嫌だと言うと鞭で打たれる。最後まで抵抗したレオだけど、これが1ヶ月続いていたら…、レオは心を失くしていたかもしれない。
レオは一生消える事のない背中の傷跡を背負いこれからも生きていく。
レオの少し目を細めて笑う癖、それを見れて私は凄く嬉しい。
「エリザ、いつも作ってくれるクッキー、また作ってくれないか?」
私は何度クッキーを焼いても上達せず、固いクッキーのまま…。それでもそれを美味しい美味しいと嬉しそうに食べるレオを見るのが好きなの。
「また固くなるわよ?」
「今じゃ固いクッキーしかクッキーとは思えないくらいだ。それに俺の為に必死で作ってくれるエリザを見て幸せになる。エリザの手作りってだけで美味しいんだ。俺には世界一美味しいクッキーだ」
レオはあれから格好つけづ私に接してくれる。態度も話し方も。顔を見れば直ぐに抱きしめ、側にいる時は常に膝の上。邸の外でも絶対に私のどこかに触れる、手だったり腰だったり、でもそれは私も一緒。レオが私に触れる手に安心するもの。私もレオもお互いに甘えたりするの。レオのそんな姿も愛しいと思う。
話し方も学生の時は私に嫌われないように考えて話していたけど、本来のレオはよく話す。どんな話し方でもレオを嫌うことなんてないのに。
それでもそれは私限定。お茶会や夜会に行っても挨拶だけで終わる。私が話してる姿をずっと愛おしそうに見つめている。貴族として紳士に振る舞うけど、他の女性に振る舞うのは止めたって。無理して話すくらいなら話したくないって言っていたわ。
学生の時みたいに私に対しても他に対しても紳士に振る舞うレオも嫌いじゃない。それでも今のレオの方が私は好き。私だけにしか見せない姿や顔を私だけが知っている、そんな幸せな事はないわ。
私もレオだけにしか見せない姿や顔があるもの。
「ついに明日は結婚式か」
「そうね」
「ようやく俺の念願が叶う。俺の初恋の女の子で愛する女性」
「ふふっ、私もよ?初恋の男の子で愛する男性」
「一緒に幸せになろうな」
「ええ。私ね、レオのそのキラキラと宝石のように輝く瞳好きなの。だからね、レオによく似た子を産みたいわ」
「俺はエリザによく似た子が良い。エリザのふわふわした栗色の髪の毛も薄紫の瞳も俺は大好きだ。
エリザ、これからは死ぬまでずっと一緒だ、もう離さない。これからもよろしくな」
「私も、死ぬまでずっと一緒にいたいわ。こちらこそよろしくね」
「エリザ、愛してる。
あ~、明日まで待てない。早く一緒に暮らしたい。同じ敷地にいて一緒に暮らせないなんて、辛い…辛すぎる…」
「明日には一緒に暮らせるわよ?」
「その明日が待ち遠しいんだろ?何年エリザを好きだと思って来たか、どれだけエリザとの結婚を心待ちにしてきたか」
「私も本当は明日が待ち遠しいの。私だって何年レオを好きだと思ってるの?私だってレオとの結婚を心待ちにしてきたのよ?」
「エリザ、可愛い、愛しい、笑った顔が可愛い、照れた顔が可愛い、怒った顔も泣いた顔も可愛い、エリザがそこにいるだけで愛しい、エリザが生きてるだけで愛しい、好きだ、大好きだ、愛してる」
「ふふっ、私もレオを愛してるわ」
今日も明日も明後日も、この先死ぬまでずっと、
愛しい人の膝の上で、愛しい人を見つめながら、愛しい人の温もりを感じて、
お互いにしか見せない姿や顔、本音を言える夫婦に、
これからもずっと幸せに暮らしていく。
完
❈ 番外編が3話あります。明日から引き続き投稿します。こちらも読んで頂けると幸いです。
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