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扉から入って来たのはレオのお母様とお母様のお兄様、子爵家ご当主様。


「全て聞かせてもらいました。レオは今をもってお兄様の養子になりました」

「母上?」

「レオ、ごめんなさいね。貴方にだけ辛い思いをさせて」

「母上、お体は大丈夫ですか?」

「ええ、心配かけたわね。私が床に伏せってたばかりに…」

「お前…」

「旦那様、自分が叶えられなかったからと子供の、レオの幸せを奪う権利は貴方にはありません。レオがどれだけエリザを好きで愛しているか貴方も知っていたでしょう。

それをノアの代わりにさせ、イザベラと結婚させようなど、私が認めません!

レオはお兄様が養子として迎え入れてくれます」

「何を勝手な」

「あら、さっき言ったではありませんか、レオを勘当したと。レオはもう勘当された子です。

そして私も貴方と離縁してここを出て行きます。エリザと婚姻する為にお兄様の養子にはさせますが、レオは私の子なので一緒に連れて実家に帰ります」

「ま、待て、」

「ふふっ、良かったですね?貴方の念願が叶いますよ?」

「母上?」

「この人はね、イザベラのお母様、マリベル様がずっと好きだったの。あちらには相手にもされてないんだけどね、完全にこの人の片思いよ?

ほら、イザベラってマリベル様にそっくりでしょ?」

「はい」

「幼馴染みとして貴方達は育ち、まだ幼いノアとイザベラがお互い好きになったじゃない?仲睦まじい二人の姿を見て、口約束と言うよりもお酒の席の冗談でノアとイザベラを結婚させようって話になったの。あちらも私もお酒の席の冗談だと思っていたわ。その証拠に婚約の打診は無かったもの。

それをこの人は本気にしてね。まだ幼いノアとイザベラに二人は婚約者だと言って、二人も婚約者だと思っていたの。あちらから何の苦情も無かったから、お互い愛しているのならと結婚した時も私は何も言わなかったわ。

貴方はレオをノアの代わりにしてまでマリベル様と親戚関係を続けたかったの?

それでも、レオの幸せを奪ってまで叶える願いではないでしょ!」

「ッ…」

「この人はね、ノアが産まれた時、自分と同じ所に泣きぼくろがあるからってとても可愛がっていたの。そのノアがイザベラを好きになり、イザベラもノアを好きになった事でこの人は馬鹿な夢を見たのよ、きっと。

ノアとイザベラを見て、自分とマリベル様だと思っていたんじゃない?

本当に馬鹿な人よね。

私が離縁しますから、どうぞ可愛いイザベラと再婚なさったら?そしてイザベラのお腹の子を自分の子として育てたら良いではありませんか?貴方とマリベル様の子ですよ?良かったですね、これで貴方の念願も叶うのではないですか?」

「ま、待て、それは、」

「ふふっ、今度はイザベラが代わりになりますけど、あの子記憶が混濁でした?しているなら貴方をノアだと思いますよ。だってノアと同じ泣きぼくろが貴方にはあるじゃないですか。貴方がノアのように振る舞えばイザベラも貴方がノアだと思ってくれますよ。貴方はイザベラを愛しいマリベル様だと思えばちょうど良いのではないですか?

レオにさせていたのですもの、勿論貴方も出来ますよね?

これでマリベル様は貴方のものよ?

あ、それと離縁の理由は子への虐待です。貴方のサインが無くてもこれだけ証人がいるので離縁は出来ます。わざわざサインを頂かなくても結構です」

「待ってくれ」

「後はお兄様とお話し合いを。お兄様が貴方を許すかどうかは分かりませんが」

「それは、困る!」

「ふふっ、離縁した後の事は私は知りません」

「頼む!離縁だけは」

「嫌です。本来なら親が子を護るべきなのに、子を護らず自分の念願の為に貴方は我が子を犠牲にしました。

レオは、この子は本当にエリザと結婚したかったの、だから我慢して貴方に従ってきたの。

それにノアを不慮の事故で亡くしたとしても私はイザベラを娘だと思っていたわ。ノアの子供がお腹にいるなら3人で育てていけば良かったでしょ?

それをどうしてレオだけに背負わせようとしたの!

それにこの邸の使用人にも「ノア」と呼ばせていたのでしょ?

どこまでレオを追い詰めたの!

さっき執事から全部聞いて驚いたわ!エリザと結婚したいならとレオを自分の息子を貴方は脅したのよ!

貴方の息子だからと貴方の思うようにはならないの。どれだけ押さえつけようとしてもレオにだって心があるの!

レオのエリザへの手紙も、エリザからレオへの手紙も全て捨てさせて、そこまでして貴方は自分の息子ではなくイザベラを護ってきたのでしょ?それならこれからも心置きなくイザベラを貴方が護って下さい。

貴方が大事なのはマリベル様との縁だけでしょ?これでまた縁が繋げましたね。

さぁ、レオ行くわよ。こんな人でなし、夫でも父親でも無いわ。

本日は皆様にもご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


子爵家のご当主様を部屋に残し私達は部屋を出た。



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