14 / 20
14
しおりを挟む扉から入って来たのはレオのお母様とお母様のお兄様、子爵家ご当主様。
「全て聞かせてもらいました。レオは今をもってお兄様の養子になりました」
「母上?」
「レオ、ごめんなさいね。貴方にだけ辛い思いをさせて」
「母上、お体は大丈夫ですか?」
「ええ、心配かけたわね。私が床に伏せってたばかりに…」
「お前…」
「旦那様、自分が叶えられなかったからと子供の、レオの幸せを奪う権利は貴方にはありません。レオがどれだけエリザを好きで愛しているか貴方も知っていたでしょう。
それをノアの代わりにさせ、イザベラと結婚させようなど、私が認めません!
レオはお兄様が養子として迎え入れてくれます」
「何を勝手な」
「あら、さっき言ったではありませんか、レオを勘当したと。レオはもう勘当された子です。
そして私も貴方と離縁してここを出て行きます。エリザと婚姻する為にお兄様の養子にはさせますが、レオは私の子なので一緒に連れて実家に帰ります」
「ま、待て、」
「ふふっ、良かったですね?貴方の念願が叶いますよ?」
「母上?」
「この人はね、イザベラのお母様、マリベル様がずっと好きだったの。あちらには相手にもされてないんだけどね、完全にこの人の片思いよ?
ほら、イザベラってマリベル様にそっくりでしょ?」
「はい」
「幼馴染みとして貴方達は育ち、まだ幼いノアとイザベラがお互い好きになったじゃない?仲睦まじい二人の姿を見て、口約束と言うよりもお酒の席の冗談でノアとイザベラを結婚させようって話になったの。あちらも私もお酒の席の冗談だと思っていたわ。その証拠に婚約の打診は無かったもの。
それをこの人は本気にしてね。まだ幼いノアとイザベラに二人は婚約者だと言って、二人も婚約者だと思っていたの。あちらから何の苦情も無かったから、お互い愛しているのならと結婚した時も私は何も言わなかったわ。
貴方はレオをノアの代わりにしてまでマリベル様と親戚関係を続けたかったの?
それでも、レオの幸せを奪ってまで叶える願いではないでしょ!」
「ッ…」
「この人はね、ノアが産まれた時、自分と同じ所に泣きぼくろがあるからってとても可愛がっていたの。そのノアがイザベラを好きになり、イザベラもノアを好きになった事でこの人は馬鹿な夢を見たのよ、きっと。
ノアとイザベラを見て、自分とマリベル様だと思っていたんじゃない?
本当に馬鹿な人よね。
私が離縁しますから、どうぞ可愛いイザベラと再婚なさったら?そしてイザベラのお腹の子を自分の子として育てたら良いではありませんか?貴方とマリベル様の子ですよ?良かったですね、これで貴方の念願も叶うのではないですか?」
「ま、待て、それは、」
「ふふっ、今度はイザベラが代わりになりますけど、あの子記憶が混濁でした?しているなら貴方をノアだと思いますよ。だってノアと同じ泣きぼくろが貴方にはあるじゃないですか。貴方がノアのように振る舞えばイザベラも貴方がノアだと思ってくれますよ。貴方はイザベラを愛しいマリベル様だと思えばちょうど良いのではないですか?
レオにさせていたのですもの、勿論貴方も出来ますよね?
これでマリベル様は貴方のものよ?
あ、それと離縁の理由は子への虐待です。貴方のサインが無くてもこれだけ証人がいるので離縁は出来ます。わざわざサインを頂かなくても結構です」
「待ってくれ」
「後はお兄様とお話し合いを。お兄様が貴方を許すかどうかは分かりませんが」
「それは、困る!」
「ふふっ、離縁した後の事は私は知りません」
「頼む!離縁だけは」
「嫌です。本来なら親が子を護るべきなのに、子を護らず自分の念願の為に貴方は我が子を犠牲にしました。
レオは、この子は本当にエリザと結婚したかったの、だから我慢して貴方に従ってきたの。
それにノアを不慮の事故で亡くしたとしても私はイザベラを娘だと思っていたわ。ノアの子供がお腹にいるなら3人で育てていけば良かったでしょ?
それをどうしてレオだけに背負わせようとしたの!
それにこの邸の使用人にも「ノア」と呼ばせていたのでしょ?
どこまでレオを追い詰めたの!
さっき執事から全部聞いて驚いたわ!エリザと結婚したいならとレオを自分の息子を貴方は脅したのよ!
貴方の息子だからと貴方の思うようにはならないの。どれだけ押さえつけようとしてもレオにだって心があるの!
レオのエリザへの手紙も、エリザからレオへの手紙も全て捨てさせて、そこまでして貴方は自分の息子ではなくイザベラを護ってきたのでしょ?それならこれからも心置きなくイザベラを貴方が護って下さい。
貴方が大事なのはマリベル様との縁だけでしょ?これでまた縁が繋げましたね。
さぁ、レオ行くわよ。こんな人でなし、夫でも父親でも無いわ。
本日は皆様にもご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
子爵家のご当主様を部屋に残し私達は部屋を出た。
276
お気に入りに追加
1,698
あなたにおすすめの小説
【本編完結】独りよがりの初恋でした
須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。
それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。
アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。
#ほろ苦い初恋
#それぞれにハッピーエンド
特にざまぁなどはありません。
小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
【完結】私が貴方の元を去ったわけ
なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」
国の英雄であるレイクス。
彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。
離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。
妻であった彼女が突然去っていった理由を……
レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。
◇◇◇
プロローグ、エピローグを入れて全13話
完結まで執筆済みです。
久しぶりのショートショート。
懺悔をテーマに書いた作品です。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
日々埋没。
恋愛
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる