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しおりを挟む私はお茶会の庭園へ戻り、レオとイザベラお姉様を見ていた。
さっきイザベラお姉様は「旦那様」って呼んでいた。レオとまだ婚約を解消していないから婚姻は結べないはず。それに旦那様って言ったら夫、ノアお兄様の事よね?
でも、イザベラお姉様はいつも「ノア」って呼んでいた。
それに、この前の喫茶店、話の内容でレオの事を言っていると思っていた。レオも口数少なかったし。
でももし違ったら?
もしレオをノアお兄様と思っていたら?
でもそしたらおかしいわ。「口下手」なんて言葉は出ない。ノアお兄様は「口上手、饒舌」そんな言葉になるもの。「いつもは饒舌なのに今日は静かね」きっとこう。間違ってもノアお兄様に「口下手」なんて言わないわ。
反対にレオになら分かるけど。
レオは口数少ないけど話す言葉を選んで話すからだわ。だから口数少ない中に愛しさをレオの思いを感じたの。さっきみたいに選んで話さない時は切羽詰まっている時だけ…。
ノアお兄様が亡くなってからレオに会った時、あの時も切羽詰まっていたから?慌ててて言葉を選んでいられなかったから?
レオは代わったと思っていたけど、本当は違った?もしかしてあの時から苦しんでいたの?
イザベラお姉様が旦那様と呼ぶのと何か関係があるの?
私はお茶会から帰りお父様の帰宅を待った。
「お父様少しお話があります」
「俺もお前に聞きたい事がある」
「はい」
「レオ君の事だが、少し小耳に挟んでな。前の夜会の時、義理姉をエスコートするのは別に変ではないと俺も思っていたんだ。あちらはお兄さんが亡くなったしな。お兄さんの代わりにエスコートしてもさほど問題はない、王宮の夜会とは違うからな。貴族の夜会だ、誘われるか誘われないかは各家の繋がりで異なる。だからそれに関しては俺も気にしていなかった。だが、今日のお茶会でレオ君の事を旦那様と言っていたと聞いた。それにまるで夫婦のようだったと、どういう事だ」
「私もその事でお父様にお話があります」
「婚約を解消するか」
「それはちょっと待ってください」
「レオ君はお前という婚約者がいながらいくら義理姉といえど夫婦のように傍から見えるなら不貞を疑われても仕方ない」
「レオが変なんです。私だから分かる事ですが今日も夜会の時もレオはまるでノアお兄様のようでした」
「どういう意味だ」
「ノアお兄様がそこにいるみたいにレオは無理して振る舞っていました。それにレオの目が助けてくれっと、そう訴えていました。レオの声が助けてくれ、ごめんとそう聞こえました。それに旦那様も普通ならノアお兄様の事ですよね?結婚もしてないのにレオを旦那様って呼ぶのはおかしいと思います」
「確かにな」
「もし私と婚約を解消してイザベラお姉様と結婚するとしてもまだ旦那様と呼ぶには早いと思います。恋人に旦那様なんて言いません」
「普通は名前で呼ぶな」
「はい。婚約者の間柄でも旦那様なんて呼んでいる人はいません。それにイザベラお姉様は結婚してからもノアお兄様を名前で呼んでいました。確かに貴族が集まる場所では旦那様と呼んでいたのかもしれませんけど」
「それでもレオ君を旦那様と呼ぶのはおかしい」
「そうなんです。明日レオと待ち合わせをしていてその時話してくれるみたいですが、万が一の時はお父様の手をお借りしたくて。レオを助けてください」
「分かった。明日の話次第だな」
「はい」
次の日、レオは公園に来なかった。
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