すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
8 / 20

しおりを挟む

お父様にレオとの婚約を解消するか、伝えるのを迷っている。

それでも一度レオと話がしたい。

婚約を解消するにしても一度話がしたい。

レオに手紙を送っても返事はこない。返事がこないのがレオの気持ちなのかもしれない。それでもレオなら、私の知ってるレオなら手紙を無視する事はしない。

でも、今のレオは私の知ってるレオなのかしら。私はレオを本当に知ってるの?



侯爵家からお茶会のお誘いがありお茶会へ行った。

その時、イザベラお姉様のエスコートをしていたレオがいた。

そうよね、

レオはイザベラお姉様を愛しているものね。

その時レオと目が合った。


「俺を助けてくれ」


そう言われた気がした。

一瞬、ほんの一瞬、レオの顔がレオの瞳がそう私に訴えてきた。

今のレオはまたにこやかにイザベラお姉様と話している。


助けてくれ?


私はレオを遠くから観察した。

よく観察すれば、何か違和感がある。レオがレオらしくない。

何が違うの?

そうよ!ノアお兄様のように振る舞っているからよ。ノアお兄様は社交的でいつもにこやかにしていた。色々な人と話す姿をよく見かけた。私にも気さくに話しかけてくれた。

それに、イザベラお姉様を大事そうに包み込むように腰を抱いて、

今のレオはまるでノアお兄様のよう…

ノアお兄様がそこにいるみたい…

でも、どこかぎこちなく無理をしているみたい。同じクラスの女生徒と話す時みたいに、にこやかにしているけど、そう、握り拳を作って…。

前に聞いた事があった。どうして握り拳を作ってるの?って。そしたら紳士として女性にはいつもにこやかに接しろ、女性の話しには相槌をうてってノアお兄様に言われた、だけどにこやかに接するのが苦手だ、女性と話すのが苦手だ、だから気を抜かない為に体に力が入りいつの間にか握り拳になっているって言っていた。

特に苦手な女生徒と話す時は目が据わるのよね。顔はにこやかにしていても目が笑ってないの。

私の前だけはその力が抜けるって。私の前で握り拳を作った事も目が据わる事もない。レオはいつも優しい笑顔で私をみていた。手は私の頭を撫でたり、手を繋いだり、優しい温もりのある手だった。


どうしてイザベラお姉様と話してるのに握り拳を作り目が据わってるの?

前の夜会、あの時はどうだった?

あの時私はレオがイザベラお姉様を愛してると思ってたから、初恋のお姉様をエスコートして嬉しそうって、

今思えば、あの時のレオはまるでノアお兄様のようだった。ノアお兄様がイザベラお姉様を見るように、笑いかけるように、大事に包み込むように…。

今思えばレオがレオらしく笑っていなかった。レオは笑う時少し目を細めるの。でも今もあの夜会の時も目が笑っていない。

レオ、どうしたの?

私に何を助けてほしいの?


レオが一人でどこかへ行ったから私は後を追った。


「レオ」

「エリザ…」


私を見たレオはどこか安心したような、苦しいような、そして今にも泣きそうな顔をした。


「レオどうしたの?」

「エリザ、エリザ、エリザ……」


レオは私を抱きしめ、何とも言えない声を絞り出すかのように私の名前を呼び続けた。

その声が私を締めつける。

助けてくれと何度も言われてるみたいに…。

ごめんと何度も言われてるみたいに…。



レオは今迄私に弱みを見せた事がない。

前に渡したクッキーも固くて苦いはずなのに美味しい美味しいって食べていた。それに自分はずぶ濡れなのに気にするなって、その時言っていたわ、好きな子の前では格好つけたいって。

弱みは格好悪い、情けないだろ?そんな男が婚約者だと嫌だろ?って。


そんなレオが初めて私に弱みを見せたの。助けてくれとごめんと何度も訴えているの。


「レオ、どうしたの?どんなレオでも私なら大丈夫よ?どんなレオでも嫌いになんてならないわ。だから話して?」

「エリザ、俺は…」

「旦那様~」


遠くでイザベラお姉様の声が聞こえた。近付いてくる声にレオはビクッとしていた。


「エリザ、明日あの公園で、待っていてほしい。必ず行く、その時、俺の話しを聞いてほしい、頼む」

「分かったわ。来るまで待ってる」



レオは私を離してお茶会へ戻って行った。



しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

【本編完結】独りよがりの初恋でした

須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。  それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。 アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。 #ほろ苦い初恋 #それぞれにハッピーエンド 特にざまぁなどはありません。 小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

この恋に終止符(ピリオド)を

キムラましゅろう
恋愛
好きだから終わりにする。 好きだからサヨナラだ。 彼の心に彼女がいるのを知っていても、どうしても側にいたくて見て見ぬふりをしてきた。 だけど……そろそろ潮時かな。 彼の大切なあの人がフリーになったのを知り、 わたしはこの恋に終止符(ピリオド)をうつ事を決めた。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

【完結】私が貴方の元を去ったわけ

なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」  国の英雄であるレイクス。  彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。  離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。  妻であった彼女が突然去っていった理由を……   レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。      ◇◇◇  プロローグ、エピローグを入れて全13話  完結まで執筆済みです。    久しぶりのショートショート。  懺悔をテーマに書いた作品です。  もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

クレアは婚約者が恋に落ちる瞬間を見た

ましろ
恋愛
──あ。 本当に恋とは一瞬で落ちるものなのですね。 その日、私は見てしまいました。 婚約者が私以外の女性に恋をする瞬間を見てしまったのです。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...