妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ

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お兄様はあれから信用の出来る友達や学友に声を掛けた。アーロン様の一つ年下のお兄様の学友がアーロン様と繋がっている可能性もある。だからお兄様が信用している人だけ。

その中にはこれからは他国へ手を広げたいと思う人もいる。それでも当主のお父様はこの国だけでと頑なな人。

当主が代われば時代が変わる

次期当主の人達の方が考え方が柔軟。この国だけで、も重要。それでも他国へ手を広げ家の繁栄に希望を持つのも事実。
今までは侯爵家のように船を持ち経路を持つ家に頼らないといけなかった。後は商会。商会でも船を持たない、船と契約をしていない商会なら意味はない。

船に荷物を載せるだけでも料金は高い。他国に手を広げても商売が出来なければ失敗に終わる。他国での商売の経路を持つマティス様は欠かせない存在。

だからアーロン様はマティス様に腰が低かった。船を持っていても他国の経路があってこそだもの。

お兄様は商会を起ち上げた。お父様とは別にワインを独自で商売する為に。お父様は『どうせ失敗するだろうがやりたいなら勝手にやれ』と言ったそう。お父様はお兄様とマティス様が繋がっている事は知らない。

お兄様の友達、学友の中にも親世代は侯爵家と繋がっている家もある。だから子世代だけで内密に進めた。
どうして高い料金を取られてまで侯爵家と繋がるのか、その理由が愛人達の接待だと知り嫌悪した。

その行為が駄目なんじゃない。それも一つの商売のやり方だと。ただ、それに縛られてより良い条件の所を探さないのが駄目なんだと。

お兄様の商会には親世代とは別に経路を持ちたい子息が集まった。
侯爵家と経路は同じ。それでも船に掛かる料金以外は各々の儲けになる。

商会はただの建前。独自にマティス様と繋がると侯爵家に目を付けられる。その為の隠れ蓑。アーロン様に知られる事もなくお兄様達は着実に功績を残している。

それにアーロン様が気付く訳がない。侯爵家へ上がる報告書は全て私が処理をしている。私が見てみぬふりをすれば良いだけ。

だって私はアーロン様から見てみぬふりをしろと言われたもの。愛人達は貴方の仕事に無くてはならない存在。なら愛人達が関わる仕事も私は見てみぬふりをしないといけない。そうでしょ?

それに何も言うな、何も聞くなと言ったのは貴方。だから私は何も言わない。何も聞かない。侯爵家の仕事をただしているだけ。報告書を見てそれに基づいて作成し王宮へ提出する。

貴方が自分で目を通し自分でやっていれば業績の低下は把握できる。それを全て私に任せた貴方の責任だわ。


同じ物を他国で売る場合、親世代は侯爵家に支払う高額なお金も上乗せする。そうしないと利益がないもの、当たり前よね。
でも子世代は船に掛かる最低限の料金は支払うものの商品は安く設定できる。

同じ物を高い値段の方を買うか安い値段の方を買うか、子供でも分かるわ。
親世代の商売は低下する。他国への商売を引き上げる家も多い。

アーロン様、侯爵家は今、少しの荷で船を出しているのよ。今までは割り振られた船に掛かるお金も侯爵家が負担するしかない。

当主が代われば時代は変わる

当主が代われば時代は動く

貴方は本命の彼女しか見ていない。だから親世代から子世代へ時代が動いたのも知らない。


馬鹿な人。


お兄様に当主が変わった伯爵家からアーロン様宛に届いた。


『大事な妹は返して貰う。侯爵家とは今後一切縁を切らせて貰う』


アーロン様は怒鳴って言った。


「お前とは離縁だ!さっさと出ていけ!」

「ふふっ、もう私の役目は終わりましたよね?ではご機嫌よう」


アーロン様の苦虫を噛み潰したような顔を最後に見れて良かった。

結婚してもうすぐ3年。私は侯爵家から解放された。



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