今日も幼馴染みの幸せを願う

アズやっこ

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前編

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今日は私の幼馴染みの話をしよう。


僕はフレドリック、僕の幼馴染みのキャロラインとは家が隣同士。それに僕の母様とキャロルの父親はいとこなんだ。

だから小さい頃から毎日一緒に遊んだ。キャロルはよく笑う元気な女の子なんだ。一緒に走り回りお菓子だってたくさん食べるし疲れたら一緒に昼寝もする。


僕は今日も今か今かとキャロルを庭で待ってる。だって一人で遊んだって楽しくないんだ。5歳年上の兄様は『もう庭で遊ぶ年じゃない』って遊んでくれないし、母様は僕が遊んでいるのをただ眺めているだけ。父様はお仕事に行っちゃう。

同じ年のキャロルは僕と一緒に遊んでくれる。それに兄様とかけっこしても負けるけどキャロルとなら僕が勝てる。

『女の子は泣き虫だから男の子が守ってあげないといけないのよ』

母様はいつも僕に言うけど、5歳の僕にはまだ分からない。遊ぶ時はいつも全力で、それに負けたくない。僕は一番が良いんだ。


庭でキャロルを待ってるとおじさんの怒鳴り声が聞こえた。それからキャロルの泣き声。

おじさんは時々怒鳴り散らす。そうすると決まってキャロルの泣き声付きだ。『あ~今日は遊べないや』って寂しい気持ちになる。


「すみません、今日はお嬢様の体調が思わしくないのでお部屋でお眠りになられるそうです」


ほらね。キャロルの家のメイドが伝えに来た。

一人で庭で遊んでも楽しくない。でも兄様のように勉強も嫌だ。だから僕は母様に内緒でキャロルの家に行くんだ。おじさんは怒鳴り散らすと部屋に籠もる。その日は部屋から出てこない。


「キャロル」

「フレッド…」


目を真っ赤にしてベッドの上でうつ伏せになってるキャロル。僕は家からお菓子をたくさん持ってきて一緒に食べるんだ。

こんな日は僕はお調子者になってキャロルを笑わかせる。リスの真似をしたり口いっぱいにお菓子を入れて詰まらせたり、『もう』って呆れながらも笑ってくれるキャロルの姿を見て安心する。

キャロルは笑顔の似合う女の子なんだ。だからいつも笑っていてほしい。泣き顔なんて見たくない。

キャロルをいつも泣かすおじさんが僕は大嫌いだ。



そんなキャロルが段々笑わなくなった。キャロルから笑顔が消えた。僕の大好きな笑顔が消えた。僕が何をしても笑わなくなった。

僕だって8歳になればおじさんの怒鳴り散らす言葉の意味はもう分かった。

『お前がどうしてのうのうと生きてる。お前がキャシーの代わりに死ねば良かったんだ。キャサリンを返せ、今すぐ俺にキャシーを返せ!』

『ごめんなさいお父様、ごめんなさい、ごめんなさい…』

自分の娘に言う言葉じゃない。

キャロルの母親はキャロルを産んで死んだ。

『ジムとキャシーはお互いが大好きだったの。キャシーのご両親はジムとの結婚を認めなかったわ。家柄の違いもあった。ジムは家と一緒で子爵家、キャシーは侯爵家だったしね。それにキャシーは寝込む程の病弱ではなかったけど強くもなかった。キャシーのご両親はキャシーを誰にも嫁がせず侯爵家で一生暮らさせるつもりだったの。

でもジムと離されたキャシーは段々体調が悪くなった。キャシーはジムと一緒にいるから元気だったの。ジムの愛がキャシーの体と心の元気の源だったのよ。

ご両親だってキャシーに元気でいてほしい。誰も子の幸せを奪いたい訳じゃないわ。ただ心配だっただけ。格下の子爵家に嫁がせる事が心配だっただけなの。だからジムに『子爵で一番の財力になってから出直せ』と言ったらしいわ。

ジムはそれから我武者羅に、キャシーと結婚する為に努力した。寝る間を惜しんでね。領地の見直し、特産物の開発、自国だけではなく他国にも目を向けた。商会を経営し子爵だけでなく伯爵の財力も上回った。

結婚して1年、キャシーに子が宿ったの。だけど残念な事に流れてしまった。塞ぎ込むキャシーを救ったのはジムの愛だったわ。本当に二人は仲の良すぎる夫婦だった。ジムは愛妻家、それが似合う人よ。

妻を愛しすぎる故にキャシーの死を未だに受け止められないの。だからってキャロルに当たり散らしていい訳じゃないわ。キャシーとの愛の結晶を、キャシーが命懸けで産んだキャロルを、ジムが愛せない訳がないもの…』

母様がジェームスおじさんに何度も話してるのは知ってた。だから母様はキャロルを僕と一緒に育てた。僕とキャロルは母様の乳を飲み育った。

赤子の頃はこの家で一緒に。

『私も悪かったの。キャロルが産まれたばかりの時はジムに余裕がなかった。キャシーが亡くなりジムは抜け殻のようになっていたから。このままではキャシーが命懸けで残したキャロルが死んでしまうと思って私がジムから取り上げたの…』

でも母様が乳を飲ませなかったら、赤子の世話をしなかったら、キャロルは死んでいた。

1歳になり少しづつキャロルをおじさんと会わせた。昼間だけ一緒に過ごすようになった。勿論手伝いのメイドもいる。どうしても乳が必要な時だけ母様が隣に行きキャロルに乳を飲ます。

そうやって僕の幼馴染みのキャロルは育った。



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