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28 真実 ③

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「どうしてお前の伯父が俺と会ったのかと聞いたが、お前の国の王太子の口利きだ。

俺は王都に行って国王に使者として隣国の国王に会いたいと頼んだ。まぁこれでも王族の血は流れてる。それに将軍だからな。

お前の国の国王に自由に動く許可を貰った。その時に王太子が力を貸してくれたんだ。まぁ恩は売れる時に売った方が良いと思ったんだろうな。直ぐに見つかり家に行った。王太子の印の付いた書簡を持ってな」


王太子殿下の印付きなら伯父様も安心して招き入れるわよね。というよりも王太子殿下の印が付いてるだけで拒否する事は出来ないわ。


「で、今に至る」

「それは分かりましたが、」


伯父様は隣国の国王陛下の使者が嘘をつくとは思えないと思った。それに王太子殿下の印付きの書簡を持参している。それは王太子殿下もガラン様を隣国の使者として認めているという事。でも自分の目で確かめるまではと思ってここまでガラン様に付いて来た。


「王族の血を使った俺が言えないが、俺は平民だ。それは今後も変わらない」

「ですが、」

「父親の名は罪人の名だ。将軍が罪人の子では示しがつかない」

「そうですが」

「俺の名は爺さんが名付けた。ガラン。

ランシャード、それが俺の本名だ。父親と母親が付けた俺の名らしい。ガシャード、それが父親の名。爺さんは父親の一文字を付けて俺の名にした。

でも俺はガランだ、それはこの先も変わらない。俺は爺さんが拾い育てた子、俺の家族は爺さんだけ。まぁ今は父親と母親の事も家族だと思っているが公にはできない。

後は国王も家族みたいなものだな。お前の事を相談するような仲だ」

「え?」

「街へ行った時に知り合いに聞いたと言っただろ?その知り合いが国王だ」

「はぁ……」

「国王と国王付きの将軍、それが俺達の関係だ。まぁ国王は側に置いて俺を守るつもりだったらしいが、父親の事が知られても今は力も付けた。剣の腕もだが味方もいる。

今の辺境伯は父親の友人で爺さんとは幼馴染みだ。辺境伯の娘と結婚し次期辺境伯としてここに来たのが父親と母親が結婚した年。元々北の辺境の次男だった辺境伯は子供の頃から王都で暮らしていて父親の側近になる予定で父親の友人になった。父親が10歳年下の公爵令嬢だった母親と婚約し幼馴染みの爺さんを母親の護衛騎士として呼んだ。爺さんは騎士として強かったらしい。俺には何も教えてくれなかったけどな。逃げる方法や逃げ出す方法、体術は教わったが」


お爺さんは生き延びる方法を教えたのね。剣を扱えれば戦おうとする。相手が大人だろうと、強いか弱いかは関係なく向かっていく。それよりも戦うより逃げる方が生存率は上がる。

それに国王陛下は『出生ではなくその腕に授ける』と将軍の位をガラン様に授けたとマダムが言っていた。

出生、王弟殿下の死産になった実子。卑賤、罪人の子、ガラン様の出生には影の部分がある。

それよりも単に剣の腕を称した国王。

そして常に側に置いた。守るもう一人の弟、従兄弟を…。

それならガラン様の身分を明かせば良かったのに。

それをしないが為に卑賤のガラン様が将軍になった事を許さない周りの者達。身分を明かしても前国王が死んでる今、王弟殿下の実子と分かってもガラン様が殺される事はない。暴君だった前国王に不信を抱く人は残っている。

王弟殿下に育てられ教えを乞うた国王がこの国を立て直した。

今まで殺戮された国は恨みを晴らす為に戦を仕掛ける。その度に国王の右腕として将軍として剣を振った。

それは国王に勝利を届ける為に、

そうするとまた面白くない人達が現れる。

身分を明かさない理由は?

王弟殿下が罪人だと思ってる人達からしたらガラン様は生きていてはいけない人だから?

産まれてまもなく殺さなければいけなかった子だから?

もしかしたら本人にその気が無くても新たな火種を生まない為に?

現国王が立派な君主だとしても必ず反発する者達は存在する。

現国王は父親と母親を殺した息子…

謀反はこの国の民の願い…

王弟殿下が謀反を起こした発起人だとしても暴君に政は出来ない。人がただ死ぬだけ。無意味な死は人々の反感を買う。

兄は力で征した。弟は民に寄り添った。王族として国の象徴としてどちらが王に相応しいか…。

それにガラン様のお爺さんの口癖『強くなれ。そして誰よりも力をつけろ』その意味はとても深い。

ガラン様には隠された出生の秘密やお父様の謀反の失敗。産まれながらに背負った物の重さ。

そして捨て子を拾ったと自分とは無関係の子だとお爺さんは皆の心に植え付けた。もしお爺さんを追って来た者達が見つけても周りが『この子は捨て子だ』と言う。一人や二人ではなく大勢が。お爺さんはガラン様を生かす為に根回しもしていた。

そして最期はたまたま若い騎士達の腕試しかもしれないけどガラン様を隠した。見つからないように。それにお爺さんも騎士ならやり返せるのにやり返さなかった。

ううん、違うわ。やり返せなかったのよ。

騎士だと知られてはいけないから…。騎士だと知られれば一緒にいたガラン様に皆の目がいく。捨て子だと言っていてももしかしたらと感の良い人ならガラン様の出生の秘密に辿りつくかもしれない。

だから自分の身を盾にしてでもガラン様を守ったの。

託された子を…

お爺さんは最期まで騎士として立派に忠誠を捧げたの。

ガラン様のお父様とお母様に…


そして幼馴染みの現辺境伯に託した。

ガラン様と剣を…


なんて悲しい話なの…


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