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21 対面

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ガラン様はあれからも私の元に通ってくれる。


「ハンナ」


娼館に入って来たガラン様は私の手を引き部屋に入る。

いつものように優しく私を抱くガラン様。行為が終われば湯殿で汗を流し私が用意したお水を飲む。

躊躇わず水を飲み干す姿を見て私は嬉しくなった。ガラン様にとって私は信じられる人と認めてもらえたと思えたから。

それに私が作る軽食も食べてくれる。


「ふふっ」

「なんだ?」

「いえ、嬉しくて」

「ん?お前が作ったものは何でも美味いぞ?」

「それなら良かったです」


でもこれだと錯覚してしまう。私を優しく抱くのもまるで恋人のように思えてしまう。この部屋に流れる空気も私を見つめるガラン様の瞳も、まるで恋人同士のよう。


「なぁ、休みはあるのか?」

「休みは貰えていましたが休みでも何もする事がないので下を手伝わせてもらっていました。ぼうっとするより動いていた方が性に合いますし」

「なら今度の休みは休め」

「それは構いませんが」

「俺と出かけるぞ」

「ガラン様とですか?」

「俺とは嫌なのか?」

「私よりガラン様の方です。将軍様が娼婦を連れて歩くのは外聞が宜しくないかと」

「元々俺自身がよく思われてないんだから気にするな」


それはここでだけ。討伐から帰ってくるとその足でここに来る。そして乱暴に抱く。だからここではガラン様は「あの男」呼ばわり。

でもお客さん達は将軍様に感謝している。賊がこの街に流れてこないのはガラン様や他の騎士達が食い止めているからだって。

それに平民が将軍になった事で努力は報われるとガラン様は皆の希望の星。

そんな人と私が歩いていたら…


「俺と出かけるのはもう決定だ」


ガラン様は私の返事を待たずに決めてしまった。


今日は私の休みの日。私はガラン様に休みの日を伝えなかった。

なのに、


「ガラン様?」


私はいつものように食事処の手伝いをしようと下に下りてきた。そしたらもうすでにガラン様が椅子に座って待っていた。


「遅かったな、行くぞ」


私の手を引いて行こうとするガラン様。


「ま、待って下さい。どうして?」

「マダムに聞いた」


マダムを見るとにこにこと笑っている。


「分かりました。では着替えてきますので少しお待ち下さい」

「このままでもいいぞ」


食事処を手伝う為に動きやすさで選んだ服。こんな格好でガラン様の隣は歩けない。ガラン様の将軍の立場に傷がつく。

私は急いで部屋に戻り私が持っている服の中で一番娼婦らしくない服を着た。それでも胸元が開いている服。


「ハンナこの服を着な。お客さんに貰ったんだけどね、こんな清楚な服私には似合わないよ。だからあんたにあげる」

「リズ姉さん」


リズ姉さんは突然部屋に入ってきた。


「あの男も出かけるなら服の一枚や二枚贈れってもんだよ。図体ばかり大きくて気がきかない男だよ、まったく…。

ほらさっさと着替えな」

「ありがとうございます」


リズ姉さんのお客さんがリズ姉さんの好みではない服を贈るとは思えない。

ありがとうリズ姉さん…

リズ姉さんは髪も結ってくれた。


「さあ楽しんでおいで」


リズ姉さんは優しい笑顔で送り出してくれた。


「行ってきます」


階段を下りるとガラン様が待っていた。


「行くか」

「はい」


店の外に出ようと扉を開けて店の奥でマダムと話しているガラン様を待っていた。


「ハンナ?」


私を呼ぶ声に振り返った。

お母様…

お母様は大きな袋を持ってここに入ろうとしていた。

私は扉を閉め外に出た。


「どうして?どうしてハンナが?それに今ここから出て来たわよね?ここが何処だか知ってるの?娼館よ?男性に体を売る所よ?分かってるの?」

「知っていますが」

「貴女…もしかして…体を……売ってるの?」

「私はここの娼婦ですが、なにか?」

「どうして娼婦なんかになってるのよ。恥ずかしくないの?男性に媚を売って体を売ってお金を貰うのよ?平気なの?

ハンナ貴女どうかしてるわ。

娼婦になった事は恥ずべき事よ?分かってるの?下賎になったのよ?

お兄様は?お兄様は何をしているのよ。姪を下賎に落としてお兄様は何て事をしてくれたのよ。お兄様は私が何のために貴女を置いてきたとおもってるのかしら。私と一緒に来ると不幸になるかもしれないから置いてきたのよ?それなのに…」

「置いてきたですか…」

「ハンナのためなのよ?ハンナのために私はお兄様に預けたの」

「伯父様はとてもよくしてくれました」

「ならどうして娼婦なんかになってるのよ。

もしかして、お兄様が貴女を捨てたの?姪の貴女を捨てたの?

お兄様はなんて人でなしなの」

「伯父様を悪く言うのは止めてください」

「でも実際そうでしょ。貴女は娼婦なのよ?体を売って稼ぐ娼婦なのよ?」

「だからなんです?それに私が娼婦になったのと伯父様は関係ありません。

それに私を捨てたのは伯父様ではなく貴女」

「私は捨ててないわ。私はハンナを守ったの。私に付いて来たら生活だってできたか分からないからよ?ハンナを犠牲にするくらいなら領地に残した方が、その方が良かれと思ったの、だからよ」


商人として生計をたててたリクルさんに生活ができないほど財力がなかったとは思えない。私の国では貴族相手にも商売をしていたのよ?それにクラリス商会はそこそこ大きい商会なのに生活ができない?それは嘘。

結局お母様は私のためと言って自分は悪くないと思いたいだけ。そして悪いのは伯父様だと思いたいだけ。

伯父様のせいにして自分は関係ないと思いたいだけ。



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