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ガネット・フォルンは愛されたい

恋は盲目 貴方を愛した私の罪 2

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私は貴方に会いに騎士団の出入口で待ったの。

そして出て来た貴方に、


「騎士様、この前のお礼に食事でもどうですか?」

「いや、お礼をされる程ではない。これからは気をつけるように。では、失礼」

「ま、待って下さい」

「何だ?」

「一度だけ、私も助けて頂いたお礼をしないと申し訳がありませんので」

「それなら、少しだけ」

「はい。少しだけで構いません。それで私の気がすみます」


貴方は私の誘いに乗ってくれたわ。

私がどれだけ嬉しかったか、貴方は知らないでしょうね。

私は貴方にお酒を勧めたわ。お酒に酔って一時だけの愛を与えてくれるかもしれないでしょ?
だから私は度の高いお酒を勧めたの。


貴方はお酒に酔ってフラフラだったわ。だから連れ込み宿に一緒に入ってくれたの。

それから貴方は私を抱いてくれたわ。

私の名前を呼んでくれる事は無かったわ。貴方が呼んだ名前は貴方の左手の指輪の方の名前…。

貴方はいつも左手の指輪の方に贈り物を贈る時、メッセージカードを書いていたでしょ?

幸せそうに、愛おしそうに、名前を書いて「愛してる」って書いていたでしょ?


だから、

私はこの一時だけその方になるわ。

そしたら今だけ貴方の愛は私のもの。

私の名前を呼んで、愛してると呟いて、そして私を抱くの。


朝目覚めた時、貴方はとても困った顔をしていたわ。

だって、

私の破瓜の印のついたシーツを見ていたもの。

だから私は貴方が断れないように貴方に言ったの。


「責任なんて感じなくて良いのです。でももし責任を感じるなら、時々でいいのです。こうして会って頂けませんか?」


貴方は困った顔をしながらも、きっと責任感が強いのね、


「ッ、………ああ」


と言ってくれたわ。

それからも時々この連れ込み宿で待ちあわせをして一時の愛瀬をしたわ。

貴方が私の本当の名を呼ぶ時は素っ気なさを感じたわ。

だけど、

私の一時の名前を呼ぶ時は愛おしさを含んでいたの。


愛してると何度も言ってくれたわ。

愛おしそうに何度も背中に口付けをしてくれたわ。

愛しいと何度も一時の名前を呼んでくれたわ。


私にも貴方の愛を与えてくれたのね。

ベッドの中だけでいいの。

この箱の中だけでいいの。

これ以上は望まない。

だから、

この一時が長く長く続いてほしいの。




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