妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
185 / 187

184

しおりを挟む
 月日が流れ、今私はチャーリーと領地へ向かっている。私達の後ろの馬車には陛下とアーサー父様が…。


「本当に付いてきたんだね」

「ふふっ」

「エディーナ嬢も久しぶりでしょ?」

「はい、お父様に会うのは久しぶりです」

「幼い時に別れたきり?」

「いえ、エミリー様が許して下さり何度か」

「私の許しなんていらないんだから会えばいいのに」

「ですが、商会もありますし」

「確かにね。でもチャーリーもいるしこれからはちょくちょく会いにこればいいわよ」

「はい。ギルも会いたいと言ってましたので」

「ついに?」

「はい。ですが、エミリー様が結婚してからになりますが」

「それなら早く結婚しないとね、エリー」

「そうね」


 先にサフェム様との対面を果たし、突然現れた陛下に驚かれていたみたいだけど、ディーナを置いて私とチャーリーは領地の邸に着いた。

 ダンとベンに出迎えられ、


「ダン、いつもありがとう」

「お嬢様、遠い所までありがとうございました。お疲れでしょう、今日はゆっくりなさって下さい」

「そうね。なら話を聞きながらお茶にしましょ」

「承知致しました」


 邸の中に入り、お茶を用意され、


「マーク達はどう?」

「はい。領民とも仲良くしております。今はまだ見習いですが、頑張っておりますよ」

「そう、良かったわ。ステラお祖母様とはどう?」

「仲良く暮らしております。ステラさんも孫が出来たと喜んでおります」

「なら良かったわ。これからも少し気にかけてあげて貰える?」

「承知致しました」

「後はスティール公爵家の方は?」

「そちらは全て整っております」

「そう、ありがとう。なら任せるわね」

「承知致しました」


 ベンに連れられチャーリーが来て、


「エリーお待たせ」

「チャーリー、紹介するわ。領地を任せてるダンよ。ダン、こちらは婚約者のチャーリー、よろしくね」

「ダンさん、チャーリーです。よろしくお願いします」

「チャーリー殿、こちらこそよろしくお願い致します。兄から話は聞いてますが、チャーリー殿は宰相になられるとか」

「まだまだです。夢のまた夢ですので」

「ご謙遜を」

「俺はエリーの補佐として頑張っていきますから領地に来た時は歓迎して貰えると嬉しいです」

「はい、よろしくお願い致します」


 その日は和やかな夕食になり、夜遅くまで皆で領地の話を聞いたり、領民の様子を聞いたりしていた。


 陛下達も一週間ゆっくり過ごし、始めはぎこちないサフェム様だったみたいだけど、そこは長年の友なのだろう、いつの間にか学友時代の様に三人で馬で出掛けたり、勉強を教えたり、毎晩お酒を飲んで騒いでいたみたい…。護衛の騎士の方々の苦労が目に取るよう。


 スティール公爵家も領地を見て、こちらの領民の土壌の調査員数名と指導者数名を連れて帰って行った。


 私とチャーリーとディーナは帰る前に領地を馬車で回った。ベンも一緒に王都へ帰るみたいで一緒の馬車に乗っている。


「ベンはもう少しこっちにいていいのよ?」

「いえ、親と話す話もないですし、十分親子の時間は取れました」

「そう?」

「はい」


 馬車の窓からは領民達の笑顔。周りにいる子供達は元気に走り回っていた。私達の馬車に気が付くと手を振ってくれる。

 とても豊かな領地を見て周り、私が今迄してきた事が報われた気持ちになった。

 あの時、お父様の代わりに領地の経営をしていなければこの豊かな小麦畑も領民の笑顔も全て失っていただろう。この地は誰かが所有していたかもしれないし荒れ地になっていたかもしれない。

 領民達は餓死に苦しみ、生き残った領民も痩せ細り生きてるか死んでるか分からない生活を送っていたかもしれない。

 確かに犠牲だった。私はこの地を護る為の犠牲だった。心を失くし、ただお金を稼ぐ為の人形に過ぎなかった。

 失った物は沢山ある。

 無邪気にはしゃぐ子供時代。

 友達も作れなかった学生時代。

 婚約者の人生も狂わしてしまった。

 家族も居なくなった。


 それでも、この地、領民、それだけは護れて良かったと今では思う。

 涙が流れる。

 隣に座る愛しい婚約者は私を抱き寄せる。

 新たに得た物をこれからも大事に大切にしよう。


 チャーリー、私、とっても幸せよ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】妹に婚約者を奪われたので実家の事は全て任せます。あぁ、崩壊しても一切責任は取りませんからね?

早乙女らいか
恋愛
当主であり伯爵令嬢のカチュアはいつも妹のネメスにいじめられていた。 物も、立場も、そして婚約者も……全てネメスに奪われてしまう。 度重なる災難に心が崩壊したカチュアは、妹のネメアに言い放つ。 「実家の事はすべて任せます。ただし、責任は一切取りません」 そして彼女は自らの命を絶とうとする。もう生きる気力もない。 全てを終わらせようと覚悟を決めた時、カチュアに優しくしてくれた王子が現れて……

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

【完結】「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする〜二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」

まほりろ
恋愛
【完結しました】 アリシア・フォスターは第一王子の婚約者だった。 だが卒業パーティで第一王子とその仲間たちに冤罪をかけられ、弁解することも許されず、その場で斬り殺されてしまう。 気がつけば、アリシアは十歳の誕生日までタイムリープしていた。 「二度目の人生は|殺《や》られる前に|殺《や》ってやりますわ!」 アリシアはやり直す前の人生で、自分を殺した者たちへの復讐を誓う。 敵は第一王子のスタン、男爵令嬢のゲレ、義弟(いとこ)のルーウィー、騎士団長の息子のジェイ、宰相の息子のカスパーの五人。 アリシアは父親と信頼のおけるメイドを仲間につけ、一人づつ確実に報復していく。 前回の人生では出会うことのなかった隣国の第三皇子に好意を持たれ……。 ☆ ※ざまぁ有り(死ネタ有り) ※虫を潰すように、さくさく敵を抹殺していきます。 ※ヒロインのパパは味方です。 ※他サイトにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※本編1〜14話。タイムリープしたヒロインが、タイムリープする前の人生で自分を殺した相手を、ぷちぷちと潰していく話です。 ※番外編15〜26話。タイムリープする前の時間軸で、娘を殺された公爵が、娘を殺した相手を捻り潰していく話です。 2022年3月8日HOTランキング7位! ありがとうございます!

処理中です...